遺産隠しは罪になる!隠された遺産の調査法や時効も解説

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相続した遺産や相続前の財産を隠すことは許されない行為です。
親族間でそのようなことがあれば、縁が薄くなるだけでなく大きなトラブルも引き込むことに繋がるでしょう。

また、収めるべき相続税を逃れるための遺産隠しなら、刑事罰にも相当し逮捕される可能性もあります。

今回のテーマは遺産隠しです。
遺産隠しが如何に愚かな行為であるかも詳細に解説いたします。

 

遺産は隠してはならないし隠されてもならない

遺産は隠してはならないし隠されてもならない

遺産隠しは悪いことだとほとんどの人が認識しています。
しかし、遺産隠しはなくなりません。それは、不当ではありますがそれぞれに理由があるからです。その、理由は以下のようなものです。
 被相続人が特定の相続人へ遺産の殆どを相続させたいため。
 主たる相続人が、他の相続人に遺産を分けたくないため
 相続人が相続税を逃れるため
 税務署への申告を少なくするため

などの理由ですが、家族を裏切ったり相続税を逃れたりなど、どれも正当なものではないことは明白です。

それでも遺産隠しをする者は後をたちません。正当に受け取ることができる遺産は、隠してもならないし隠されてもなりません。

また、遺産隠しは最低の行為と言われることが多いです。家族を裏切るだけでなく巻き添えにするからです。

遺産隠しをした相続人がいることを知らないで、遺産分割をした場合に事件は起こります。自分は正当に申告して相続税を払っている。しかし、遺産隠しが税務署によって露見した場合、過少申告や脱税と判断される可能性があるからです。要するに、遺産隠しの巻き添えを食らうのです。

故に、少しでも怪しいと感じたら、遺産隠しが行われていないか調査してから遺産分割協議を行うことが自分を守ることにつながります。転ばぬ先の杖は先に打たないといけません。

 

個人ができる遺産隠しの調査法

個人ができる遺産隠しの調査法

被相続人や主たる相続人・遺贈を受ける者などが遺産を隠している場合は、自身で遺産を特定する必要があります。

仮に、遺産分割調停や訴訟を起こしている場合であっても。裁判所や調停委員が隠された遺産を積極的に調査してくれる訳ではありません。

見つからない場合は、無かったものとして調停を進められる場合もあります。故に、自力で調査を進める方法を知っておく必要があります。

 

本人を問い詰める

遺産を隠すような人間を問い詰めても素直に白状する可能性は低いです。
しかし、親族であれば、隠している遺産の種類や隠し場所のヒントを得られる可能性もあります。

相手が悪いことをしているという認識があれば、徹底的に追求したり、泣き落としをかけたりすると揺らぐこともあります。遺贈を受けるもの以外は、元々家族なのだから根気よく問い詰めるのも無駄ではありません。

 

貸し金庫や預貯金を調査する

被相続人名義の預貯金や貸し金庫は相続人であれば調査することが可能です。
戸籍全部事項証明書などで相続人であることを証明すれば、金融機関は残高証明や取引明細等・貸し金庫の契約状況などを情報開示してくれます。

特に、取引明細は重要です。大きな出費や振り込みを調べるだけでも隠された遺産を見つけ出すことができるかもしれません。

 

株式などの有価証券を調査

株式や投資信託などの有価証券を調査する場合は、個別に証券会社を当たるしか方法がありません。現在では、ネット証券も数多くあるので骨が折れる作業となりますが、遺産隠しを発見できた成果は想像以上に大きなものになる可能性があります。

 

不動産を調べる

不動産を調べる場合は、不動産がある市区町村の役所に行って固定資産課税台帳を開示してもらうしかありません。当該市区町村内に被相続人が所有している不動産については開示されますが、被相続人が別の市区町村に所有している不動産を知ることはできません。
このような場合は、固定資産税の納付書などを家から探すか、目ぼしい市区町村に出向いて調べるしか方法はありません。

 

弁護士ができる遺産隠しの調査

弁護士ができる遺産隠しの調査

遺産隠しの調査は弁護士に依頼することも可能です。

調査方法は、相続人が行うものと変わりはありませんが、面倒な書類集めや手続きなど全てを弁護士が行うので相続人の手を煩わせることがありません。

また、プロならではの視点で調査を進めるので、相続人が調査するよりも正確に隠された遺産を暴くことも可能です。

 

隠された預貯金をあぶり出す

弁護士であっても全国の金融機関を一斉に調べる事は不可能です。弁護士法23条の照会をかけて金融機関に対して個別に開示を求め続けることになります。

ただし、開示された資料をまとめ情報を整理するので、怪しい金の流れを見逃す可能性はほとんどありません。
素人である相続人達が見ても気づかない使い込みや、遺産隠しをあぶり出す可能性は明らかに高くなります。

 

個人間の遺産隠しには罰則はない

法は家庭に入らずという原則があります。
相続人の1人が遺産隠しや遺産を勝手に使い込んだ場合でも親族間では罪に問うことは難しいです。警察に通報しても介入することは殆どないといえます。

後で述べますが、税務署に対して遺産隠しした場合は罪になりますが、親族相盗例では罪に問えないのが現状です。

親族相盗例とは、親族間における窃盗などの罪は刑が免除されると刑法で規定されているものです。
この親族相盗例によって、遺産が隠されていても罪に問えないのです。

 

場合によっては調停や訴訟も

本来受け取れるはずの遺産を隠されても刑法で罪に問えないのであれば、せめて民法による権利を行使するしかありません。

被害にあった相続人は、不当利得返還請求や損害賠償請求を遺産隠しの当事者に請求することができるのです。

しかし、遺産を隠したり、使い込んだりする者が簡単に請求に応じる可能性は低いです。そこで、諸々の煩雑な手続きから、訴訟に至るまでの全てを引き受けてくれる弁護士に依頼するという選択肢が出てきます。

特に、遺産や相続に強い弁護士に依頼すると安心して任せられますし、予後の心配事も解消されるでしょう。

 

持ち逃げされた遺産を取り返す手段

持ち逃げされた遺産を取り返す手段

遺産の多くがすでに現金や金に替えられており、主たる相続人が持ち逃げする場合があります。

また、相続人でもない者が、勝手に被相続人の預金を引き出して持ち逃げしているケースもあります。現実は小説より奇なりということが起こるのが遺産相続です。

時間がかかれば遺産が使われてしまったり、高飛びされたりする危惧がありますので、早急な対応が必要です。時間の経過と比例して、持ち逃げした者を探すことは難しくなります。

 

警察に連絡

遺産を持ち逃げされたら、直ちに警察に連絡するべきです。
被害届を出して、告訴することが肝要です。被害届だけなら警察は動きませんが、告訴となると警察に捜査義務が生じます。

親族であっても悪質な持ち逃げの場合は、前途の親族相盗例が適用されないケースもありますので、警察に粘り強く事情を話し、持ち逃げの証拠も提出して告訴を受理させるように務めるとよいでしょう。

もし、持ち逃げ犯が法定相続人でなければ、窃盗罪が適用される可能性が高いので被害届から告訴まで進めることができるかもしれない。

 

銀行に連絡

現金を持ち逃げされても、銀行に預金が残っている場合があります。理由は、多額の現金を引き出す場合、ATMでは限度額がありますし、窓口でも日数を要すると言われ断られることが多いからです。

戸籍全部事項証明書などで正当な相続人であることを証明すれば、情報は開示されて持ち逃げの証拠にもなり得ます。

後の遺産分割の件で、再協議したり裁判したりすることになっても有利に進めることが可能です。

 

持ち逃げした人間を探し出す

もし、警察が告訴を受理したとしても、持ち逃げした者を探し出す可能性は低いでしょう。
そうなると自力で探し出すしかありません。心当たりの場所や人に訪ね歩くことになります。途方もない労力ですが、見つけ出すしか現金化された遺産は取り戻せません。

 

探偵に依頼する

自分で探すことに限界を感じる前に探偵に依頼するという手段があります。お金はかかりますが警察や自分で探すよりも早くて確実性が上がります。

偵は人を探すプロですので、人探しのノウハウは素人の想像の域を超えています。遺産を持ち逃げした者を探し出せる可能性も高いでしょう。

 

遺産相続には時効がある

遺産相続には時効がある

遺産を持ち逃げされたら、さぞ悔しいです。しかし、法律は時に被害者に冷たい場合があると感じることも多々あります。その1つが遺産相続に関することです。

遺産を持ち逃げされて相続権を侵害されても時効があるのです。仮に、遺産を持ち逃げした者を見つけて、遺産分割協議を再開している最中であっても時効によって全てが無効となります。

また、遺産隠しが発覚し、遺産分割協議のやり直し中であっても、時効がくれば遺産を取り戻すことは不可能となります。

では、なぜこのような時効があるのかということですが、それは相続税を納めないといけないからです。当然のことですが、遺産を相続したら相続税申告を行い納税する義務があります。税務署は、いつまでも申告と納税を待つことはできないのです。ここでは、遺産に関する2つの時効を解説いたします。

 

騙されたと知ったら5年以内に

遺産分割協議が終わってから遺産隠しが発覚した場合は、詐欺にもとづく遺産分割協議の取消権を行使できます。
その場合は、遺産隠しを知ったり、騙されていたと判ったりしてから5年が時効となります。5年を過ぎると取消権は行使できないので、遺産隠しなどを知れば早めに手を打つほうが良いでしょう。

 

不当利得返還請求は10年以内

遺産を隠されたり、持ち逃げされたりした場合は不当利得返還請求権を行使できます。しかし、その不当利得返還請求権も10年で時効となります。10年を過ぎるとたとえ遺産分割協議の継続中でも事項となります。遺産隠しが発覚したらいち早く主張し、早急に遺産分割協議のやり直しを行うべきです。

 

税務署への相続した遺産隠しは罪になる

税務署への相続した遺産隠しは罪になる

親から譲り受けた財産ですので相続税を払うのは嫌だ。などと考えている人も少なくありません。相続税は、富の再配分の意味もあり制定されている税法です。基礎控除を超える多額の財産を受け継ぐのですから正直に申告し素直に納税することを強く推奨します。

しかし、それでも行き過ぎた節税や遺産隠しが後を絶たないのも現実です。多額の遺産隠しは、ネットのローカルニュースでも取り上げられて罪に問われるだけでなく、恥ずかしい思いをすることになります。

しかも、追徴課税がかかってきますので、たくさんの税金を余計に払うことにもなります。ここでは税務署の調査や遺産隠しが見つかった場合の罪について説明します。

 

税務署の権限は強力

隠しても必ず暴かれると言われる相続税の脱税行為。日本の税務署の調査能力や権限は非常に強力です。

税務署は、個人の預金口座を自由に調査できる権限を持ち、少しでもおかしな点があれば徹底的に調査します。

特に、基礎控除を上回るような財産を所持している被相続人などは、日頃から相当のチェックが入っていると考えられます。
では、実際にどのように調査されるかを説明します。

1. 相続税の税務調査は被相続人の自宅で行われる
タンスや床下・金庫などに申告漏れの財産がないか確認、また、絵画や美術品も申告されているかを細かくチェックされます。
2. ヒヤリングによる調査も行う
相続人だけでなく利害関係のある者などにヒヤリングが行われます。被相続人がどのように財産を築き上げたかや暮らしぶり、趣味など相続に関係ないと思われることまで尋問されます。その中から、申告されていない財産を炙り出します。
3. 反面調査は必須事項
銀行などの金融機関や保険会社に対して、被相続人の預金の有無や流れを確認します。場合によっては被相続人と懇意にしていた個人に対して調査することもあります。税務署は、強制調査できる強力な権限を与えられていますので、情報開示を求められた金融機関などは拒否できません。

税務調査のプロが乗り出した限り、手ぶらで帰ることはありえません。ある程度下調べして乗り込んできますので、空振りで終わることもありません。虚偽の申告は自滅を招くだけでなく親族にも多大な影響を与えます。

 

遺産隠しが露見した場合

税務調査で遺産隠しが露見した場合、すぐに脱税と判断される訳ではありません。だからと言って脱税はいけないことを前提に説明します。

税務署は、事情や状況をヒヤリングしていますので遺産隠し=脱税とならない場合もあります。様々な事項で考慮されます。

申告漏れや過少申告と判断された場合は、過少申告加算税と延滞税が課されます。過少申告加算税の場合は、本来納める相続税にプラスして15%の追加課税を収めなければなりません。また、延滞税は本来納める相続税に年利3%加算されることになります。

 

遺産隠しで逮捕もあり得る

悪質な遺産隠しで脱税とみなされた場合は、重加算税が課されます。重加算税は、本来納めるべき相続税に35%~40%を上乗せした金額となります。重いペナルティを支払わなくてはなりません。

さらに、刑事訴追の可能性もあり、相続税法違反の罪に問われると逮捕され禁固刑もあり得ます。

 

遺産隠しは許されない行為

遺産隠しは許されない行為

ここまでの解説で遺産隠しに許されない行為で、重い罰を受けるだけでなく親族との関係を失うことになると理解いただけたと思います。

家族や親族をも巻き添えにするような愚かな行為は、自身を滅ぼすことにもなります。
しかし、法に則った正当な節税であれば遺産隠しにならず、税務署から調査を受けることもありません。

被相続人が残してくれた財産を守りたいと考えるなら、この相続対策のすゝめを参考にしてください。

【記事監修】高野友樹

株式会社アーキバンク取締役COO/不動産コンサルティングマスター/宅地建物取引士

不動産会社にて2,000件以上の賃貸売買仲介に関わり、6,000戸の収益物件の管理業務を経験した後、年間で36.9万平米を超える賃貸契約面積を獲得している国内有数の不動産ファンドであるGLR(ジーエルアールインベストメント株式会社)にてAM事業部のマネージャーとして従事。

大規模物件の売買仲介を中心に、投資家へのコンサルティング業務を行い、100億円規模の物件の取引に携わる。2019年より株式会社アーキバンクに参画し、不動産事業部統括責任者として取締役に就任。

不動産投資家の所有物件の買い替えによる資産整理や遺産相続など、その経験と知識を生かしたコンサルティング業務を行っている。

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