遺産相続の渦中の人や遺産相続に興味がある人は、時間があればインターネットで検索し様々な記事を読んでいることでしょう。
しかし、法律用語や専門用語が入った記事を読み進めても理解できない場合があります。
そこで、今回は、遺産金額をベースに税金や控除についてどなたでもわかるように解説しています。
少しでも遺産相続について理解を深めていただければ幸いです。
相続税は基礎控除を超えなければ税金0円
結論から述べると、相続税の基礎控除額内の遺産総額であれば申告も納税も不要です。
相続税の基礎控除の計算式
基礎控除=3000万円+600万円×法定相続人数
例えば、法定相続人が4人の場合は3000万円に2400万円が加算されるので54万円が基礎控除となります。
この基礎控除を超えた遺産に対して相続税が掛かる仕組みとなっています。超えていなければ申告や納税の義務は生じません。
しかし、不動産などを相続した場合は、不動産取得税や登録免許税などが課税されます。このように相続した遺産の種類によって、相続税や贈与税と別に手続きが必要となり、課税されるものがあることも留めておいてください。
(国税庁:財産を相続したとき
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/05_4.htm)
遺産合計100万円の場合
遺産を確認し遺産分割した結果、遺産総額や相続額が100万円だったということもあり得ることです。
終活で財産を慈善団体やNPO法人などへ寄付したり、基金などへ寄贈したりする人は年々増えています。生活に必要なお金以外は残さないようにしている人も多くいらっしゃいます。
では、遺産総額が100万円の場合の税や控除を解説していきます。
100万円の遺産相続は税金ゼロ
遺産総額が100万円なら相続人が1人であっても基礎控除内なので、相続税は課税されません。故に申告の必要や納税の対象ではありません。
(国税庁:財産を相続したとき
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/05_4.htm)
100万円の生前贈与は税金ゼロ
生前贈与という言葉は法律では定められていません。
しかし、生前贈与という言葉は一般的に使われています。税制では贈与税に該当し、相続開始3年以内の贈与なら相続税に該当します。
贈与税の暦年課税の控除は、1年間に110万円以内です。100万円の贈与であれば贈与税は課税されません。
(国税庁:No.4402 贈与税がかかる場合
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4402.htm)
遺産合計200万円の場合
相続を受けた人の中で、その相続額が100万円から200万円未満であった人は、全体の11%程度とされています。
つまり、10人に1人程度は相続額が200万円までということです。そこで、200万円を相続した場合の税金や控除はどうなるのであろうかを解説していきます。
(三菱UFJ信託銀行株式会社:プレスリリース
200万円の遺産相続は税金ゼロ
200万円を相続しても相続税は0円です。理由は基礎控除の最低額を上回っていないからです。基礎控除の最低額は、法定相続人1人の場合、金額は3600万円です。
(国税庁:財産を相続したとき
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/05_4.htm)
200万円の生前贈与は税金あり
贈与税における暦年課税の基礎控除は1年間の贈与で110万円です。200万円の生前贈与を受けた場合は、90万円に対して贈与税が課税されます。
課税額90万円の場合は、税率が10%なので贈与税は9万円となります。また、課税額に対する控除はないので9万円を納めることになります。
ただし、贈与税申告時に相続時精算課税制度を選択した場合は、相続時に相続税を納めることになります。
(国税庁:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4408.htm)
遺産合計500万円の場合
遺産相続した人の中で、相続額が500万円以上で1000万未満だったという人は、約19%と最も多くいらっしゃいます。この相続額は特に女性のウェイトが多く約23%を占めています。
男性は約15%ですが、平均額は約2900万円です。男女に違いがあるのは、家の相続や事業の承継が考えられます。では、500万円を相続した場合の税金や控除はどうなるかを解説します。
(三菱UFJ信託銀行株式会社:プレスリリース
500万円の遺産相続は税金ゼロ
500万円を相続しても基礎控除の枠内なので相続税は0円で申告の必要はありません。ただし、この500万円の中から、子に200万円を贈与すると贈与税の対象になるので贈与は慎重に考えてから行ったほうが良いでしょう。
500万円の生前贈与は税金あり
500万円の生前贈与で暦年課税の場合、基礎控除を除く390万円が課税対象となります。税率は15%なので贈与税は58万5000円です。ただし、控除額が10万円あるので48万5000円が納税額です。
もちろん、相続時精算課税制度を選択した場合は2500万円まで非課税となるので贈与税はかかりません。
また、500万円の贈与が5年以上に渡っていて、連年贈与とみなされていなければ暦年課税の非課税枠に収まっているので無税です。
要するに生前贈与は計画的に行わなければ課税されます。ちなみに贈与は契約であるので、贈与毎に契約書を作成し保管することをお奨めします。
(国税庁:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4408.htm)
1000万円の遺産相続の場合
女性が受け取る平均相続額は1300万円程度とされています。相続額全体をみても1000万円程度が最もボリュームが多い傾向です。
この相続額は、被相続人の遺産総額ではなく、個々の相続額の平均であることを念の為お伝えしておきます。
では、1000万円の遺産を相続した場合の税や控除について説明します。
(三菱UFJ信託銀行株式会社:プレスリリース
1000万円の遺産相続は税金ゼロ
1000万円の相続額であっても基礎控除内なので税金は0円です。再度になりますが、相続税は遺産総額が最低3600万円を超えないと課税対象とはなりません。
ちなみに相続について被相続人に相談した人は40%程度で、相談しなかった人は60%程度となっています。また、相続について子供と話さない親も60%程度です。子に財産を全く明らかにしない親も52.5%とされています。
この数字を読み解くと、子が財産を当てにすることは好ましくないこと。そして、相続税がかかる財産でないことを親が理解していると推測されます。
(三菱UFJ信託銀行株式会社:プレスリリース
1000万円の生前贈与は制度適応の必要あり
1000万円の贈与税を暦年課税で計算すると890万円が課税対象であり、税率は30%で控除が90万円です。故に、贈与税は177万円となります。
1000万円を超えるような贈与となれば、家を買うとか子や孫が進学するなどが考えられます。何もないのに1000万円もの大金を贈与することは珍しいでしょう。
贈与税には特別控除があって、子や孫が家を新築したり結婚したりしたなどの場合、それぞれに非課税枠が設けられています。大金を贈与する際には、あらゆる控除制度を把握してからのほうが良いでしょう。
(国税庁:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4408.htm)
2000万円の遺産相続の場合
遺産相続における相続額の平均は約2100万円とされています。これが、遺産総額だと相続税はかかりませんが、基礎控除を超えた遺産総額を分割した結果の場合は、課税率が15%で控除が50万円です。
遺産相続においては、遺産総額と相続額が混同されることが多いので注意が必要です。
(国税庁:財産を相続したとき
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/05_4.htm)(三菱UFJ信託銀行株式会社:プレスリリース
2000万の遺産相続は税金ゼロ
遺産総額が2000万円であれば相続税は非課税です。非課税財産の中には、墓や仏壇なども含まれます。また、被相続人が国や地方公共団体、特定の公益法人に寄付した財産も非課税です。
仮に、遺産総額が5000万円の場合、法定相続人が1人であれば基礎控除は3600万円です。故に1400万円に対して相続税が課税されます。
しかし、事前に遺言書などで公益法人などに1400万円以上の遺贈を認めておくと相続税は非課税となります。税に対して不信感がある人は、遺贈も考慮すると良いかも知れません。
(国税庁:財産を相続したとき
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/05_4.htm)
2000万の生前贈与は相続時精算課税制度を採用
1年間で2000万円の生前贈与であれば、110万円の非課税分を差し引いて1890万円に対して贈与税が課税されます。課税率は45%で控除が175万円なので、贈与税学は675万5000円となります。
相続時精算課税制度を採用している場合は、2500万円まで非課税なので贈与税としては0円です。しかし、相続時の採算で相続税が課税される可能性はありますので、納税対策として現金を残しておくほうが良いでしょう。相続税は、現金一括払いが原則です。
(国税庁:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4408.htm)
3000万円の遺産相続の場合
男性が受け取る平均の相続金額は約2900万円で、女性に比べて倍以上の金額となっています。相続において男性が優遇されていることが顕著に現れています。
男女平等が謳われていますが、男性の方が、家や土地を相続したり、事業継承したりすることが多いことがこの金額差をみても判ります。ここでは、遺産総額が3000万円の場合の税や控除を解説します。
(三菱UFJ信託銀行株式会社:プレスリリース
3000万円の遺産相続は税金ゼロ
遺産総額が3000万円であれば基礎控除内なので相続税は0円です。
ただし、相続税には課税対象財産があります。単純に現預金や不動産だけを計上していると痛い目に合う可能性もあります。
家具や骨董品も相続税の対象ですし、被相続人が個人事業者なら売掛金や在庫商品・原材料も課税対象です。
基礎控除を超えれば申告し納税しなければなりません。後日、税務署から調査などが入らないように慎重に遺産総額を計算する必要があります。
(国税庁:財産を相続したとき
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/05_4.htm)
3000万円の生前贈与は課税される
3000万円の生前贈与の場合は、相続時精算課税制度を選択しても課税対象となります。相続時精算課税制度の特別控除額は2500万円までなので500万円は贈与税の対象です。税率は一律20%と定められているので贈与税は100万円です。
納めた贈与税は、相続時の精算において控除されます。控除しきれない贈与税額がある場合は、相続税の申告をすることで還付を受けることができます。
(国税庁:No.4103 相続時精算課税の選択
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4103.htm)
遺産相続4000万円の場合
相続税は、遺産総額に対して課税されるかどうか決まります。この4000万円程度の遺産総額は非常に微妙な金額です。
相続開始前に被相続人の財産を完全に把握していた人は約10%とされています。残りの90%は全く把握してなかったり、ある程度把握していたりの方達です。
相続税の申告は、非常に難解で精神的にも体力的にも負担がかかることが多いです。ましてや遺産に不動産や株式などがあれば、思った以上の評価額になる場合もあります。
被相続人には、話しづらい事かもしれませんが、遺産の総額や分割などについては腹を割って話し合っておくことをお奨めします。
(三菱UFJ信託銀行株式会社:プレスリリース
法定相続人の数によっては相続税がかかる
法定相続人が1人だと基礎控除は3600万円で、2人だと4200万円です。遺産総額が4000万円なら法定相続人が2人以上だと非課税となります。
法定相続人が1人の場合は400万円に対して課税されるので税率は10%となり、相続税額は40万円となります。
被相続人と話し合って事前に相続税対策を講じていたならば、非課税になり得る可能性もありますので、遺産に関しての話し合いは積極的に交わすほうが良いでしょう。
(国税庁:財産を相続したとき
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/05_4.htm)
生前贈与や生命保険を利用して節税
4000万円の遺産総額は、相続税が課税されるかどうか微妙な金額です。ただし、事前に対策を講じておくことで相続税を回避できる金額でもあります。
一時払い終身保険(生命保険)を利用すれば非課税枠が500万円×法定相続人の人数分です。
また、数年前から生前贈与を利用する方法もあります。暦年課税の基礎控除枠内(毎年110万円)の贈与を数年繰り返せば遺産額を減らすことが可能です。
いずれにしても、事前の準備で合法的に高額な税金を回避できるのであれば使わない手はないでしょう。
(国税庁:財産を相続したとき
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/05_4.htm)(国税庁:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4408.htm)
遺産が5000万円を超えている場合
5000万円と聞けば大金です。そのような遺産を受け取れる人は少ないだろうと思われるかも知れませんが、5000万円から1億円の遺産を受け取る人は、遺産を受け取る人全体の6.5%程度いらっしゃいます。
つまり、遺産相続経験者100人に6から7人は5000万円以上の遺産を相続しています。ちなみに1億以上の遺産相続人は4%程度です。
高額な遺産となれば、税金がつきまとってくるのは致し方ありません。ここでは、5000万円の遺産総額に対する相続税を解説します。
(三菱UFJ信託銀行株式会社:プレスリリース
5000万円の遺産相続は基本的に相続税対象
相続税の基礎控除は3000万円+600万円×法定相続人数です。5000万円遺産総額であっても基礎控除以下なら相続税は0円です。
5000万円の場合だと法定相続人数が4人いれば相続税は非課税となります。法定相続人4人の場合の基礎控除は5400万円だからです。
ただし、相続税の課税対象は幅広いので入念に相続財産目録を作成し、計算することをお奨めします。
(国税庁:財産を相続したとき
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/05_4.htm)
相続人が3人のケースで説明
5000万円の遺産総額で法定相続人が3人ならば、相続税の申告や納税が必要です。法定相続人が配偶者と子2人として解説します。
法定相続人が3人の場合の基礎控除は4800万円です。法定相続人に沿って相続したものとします。
- 配偶者の相続分は1/2なので2500万円
- 子の相続分は1/2を2人で分けるのでそれぞれが1250万円
相続税の計算では遺産総額から基礎控除を引いた分に課税されます。
5000万円-4800万円=200万円(課税対象)
200万円の場合の税率は10%なので相続税は20万円です。それを法定通りに按分すると
- 配偶者は10万円が相続税となるが、配偶者控除によって0円
- 子はそれぞれが税額は5万円となる
結果として5000万円の相続で法定相続人が3人であれば相続税は10万円ということになります。
遺産1億円なら相続税がかかる
遺産総額ですが1億円を超えるようであれば、ほとんどの場合相続税の対象となるでしょう。しかし、1つだけ確実に非課税になる方法があります。それは、配偶者控除です。
配偶者控除は、遺産相続額が1億6000万円までか、法定相続分までであれば非課税となります。法定相続分が非課税ということは、仮に3億円の遺産を配偶者1人で相続した場合であっても非課税となるということです。
配偶者控除は諸刃の剣のようなものですが、遺産分割において上手に利用すれば大きな節税対策になり、遺産を次の世代へと引き継がせる可能性を高める効果があります。
しかし、税制は毎年のように更新され、財産を残す舵取りが難しい時代でもあります。
そこで、遺産をできるだけ多く相続させるために、当サイトの相続対策のすゝめでご相談ください。相続対策のすゝめは相続に関するプロ集団です。
この記事へのコメントはありません。