分譲マンションを相続する機会は増えています。
以前は一戸建住宅の相続が一般的でしたが建設が進んでいき、今ではマンションの数も多くなっています。
相続後に自分が住むだけではなく、賃貸に出せることも分譲マンションを相続するメリットです。
しかし不労所得の入る資産になり得るため、複数でもらい受ける際は慎重に遺産分割をしなければなりません。
そもそも遺産を分割するやり取りをする前に、何をすれば良いのか見当がつかないという方も多いことでしょう。
今回はマンションを相続するときにするべき手続きや書類、状況によって変わる分割方法、相続したマンションの取り扱いも含めてわかりやすく書いていきます。
マンションも含めた不動産を相続する流れ
多くの人は相続を何度も経験しません。
そのうえ相続する際には、法律や税の知識も要るため、非常に煩雑に感じるはずです。
葬式の手配や親族との連絡など何かとやることが多いなか、相続について頭を悩ますのは大変でしょう。
そこで、相続が発生した際に何をするのか明確にするために、不動産の相続の流れについて見ていきましょう。
遺言書の有無を確認する
初めにすべきことは、亡くなった人が遺言書を残しているかの確認です。
遺言書で、誰が・何を・どれくらいの割合で相続するのかが明記されていれば、それに従わなければなりません。
遺産分割協議(誰が・何を・どれくらいの割合で受け取るのかを相続人全員で話し合う)をした後に、遺言書が見つかっては時間と労力の無駄です。
亡くなった人に生前確かめられればよいですが、いきなりの別れも考えられます。
初めにやるべきは遺言書を探すことです。
法定相続人と相続分の確認する
遺言書が見つからなかった際は、遺産分割協議を相続人全員で行います。
しかし現実問題として、なかなかトラブルなく話し合いを終えるのは簡単ではありません。
ここで求められるのは、法定相続人の存在と法定相続分の確認です。
法定相続人とは、法律で決められた遺産を受け取る権利のある人を指します。
配偶者や子ども、それに亡くなった人の兄弟姉妹だけなら簡単ですが、なかには愛人の子どもが相続人として浮かび上がるケースもあります。
遺産分割協議は相続人全員で行わなければならず、後から相続人が見つかれば、せっかく決めた取り決めは無効となります。
珍しい事例と言えますが、戸籍謄本を集めていくうちに亡くなった人に愛人がいて、愛人との間に子どもがいたことが発覚することもあります。
そこで亡くなった人の戸籍謄本を全て、つまり生まれてから亡くなるまでのものを集めて、法廷相続人の存在を明らかにしなければなりません。
次に相続分についてです。
法定相続分とは、各相続人が受け取る割合を法律で取り決めたものです。
法律で取り決めたものとはいえ、必ずその基準に従わなければならない訳ではありません。
ただし遺産分割協議で相続人の合意が形成されない際は、調停や審判で決められますが、その際には法定相続分が基準となります。
法定相続分の前に、相続人には受け取る「順位」があります。
最上位は亡くなった人の配偶者、次に亡くなった人の子(子が亡くなっている際は孫)、次に亡くなった人の父母、その次が亡くなった人の兄弟です。
この順位、更に相続人が存命かで法定相続分は異なってきます。
相続するのが亡くなった人の配偶者のみの際は財産の全て、亡くなった人の子どもがいる際は財産の1/2などです。
このように法定相続分は変わってきますが、あくまで法定相続分は基準であるため、協議の際に意識しておくことが良いでしょう。
相続する財産の評価
次にするべきは相続する財産の評価です。
遺産とはそもそも被相続人が所有していた有形・無形の財産を指します。
有形のものであれば家や車、現金や土地など、無形のものは借地権や特許権などです。
現金や預貯金、車などは比較的相続しやすいものと言えます。
しかし、不動産やマンションは遺産相続が難しいです。
なぜなら名義や評価額、それに誰がどのように相続するかという問題が発生するからです。
しかし有形・無形に関わらず遺産全ての評価を行わないと公平に等分することは難しく、後にトラブルとなります。
土地や不動産など評価が難しく、かつ価値の高いものは専門家に依頼することが重要です。
土地評価方法は「路線価方式」と「倍率方式」の2種類があり、かなり専門的な知識が必要になります。
土地や不動産を相続する際は相続税の支払いも必要になるので、土地の評価は司法書士や税理士などに依頼するのが得策です。
遺産分割協議書を作成する
遺産の総額を調べたのちにするのは、遺産分割協議書の作成です。
相続人全員が遺産をどれくらいの割合で受け取るのかという配分を書類で正式に残さないといけません。
話がまとまり合意に達したときに初めて、遺産分割協議書を作ります。
遺産分割協議書について非常に大切であるため、次の章で詳しく解説します。
名義変更をする
土地や不動産を相続する際の名義変更のことを相続登記とも言います。
名義変更については期限がないからと後回しにする人も少なくありません。
確かにお葬式を含めて被相続人の死後はやることが多く、なかには期限有りのものがある為、名義変更を後回しにする気持ちもわかります。
しかし名義変更をしないデメリットはいくつかあるため、相続の手続きと並行してやっておくべきです。
名義変更も後の章で詳しく解説していきます。
登録免許税と相続税を支払う
最後に登録免許税と相続税の支払いをします。
登録免許税は自身で計算して納付を行わなければなりませんが、不足した場合などは税務署から不足分を徴収されます。
計算式はシンプルで、不動産の値段(固定資産評価額)×0.4%(税率)です。
次に相続税ですが、相続税は被相続人が亡くなってから10ヶ月以内に支払わなければなりません。
相続税は基礎控除の金額が大きいため、遺産が3600万円以下の場合は基本的に払わなくても良いです。
基礎控除額は以下の計算式で求めることが出来ます。
基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人の人数
相続税の計算もまた専門家に依頼した方が良いでしょう。
なぜなら金額が大きくなる分、不足して納税した場合などは追加徴税を受けかねないからです。
遺産分割協議書の書き方や注意点
相続の際に、多くの人が頭を悩ませるのが遺産分割協議です。
そこでやるべきことの順番や気を付けるべきポイントを紹介していきます。
分割方法は主に4つ
遺産は現金や預貯金など、単純に分割できるものばかりではありません。
そこで分割の方法をあらかじめ知っておく必要があります。
分割方法は主に以下の4つです。
- 現物分割
- 換価分割
- 代償分割
- 共有
現物分割の場合は、マンションは長男、それ以外の遺産は次男のように遺産をそのまま相続させる方法です。
分譲マンションの場合など遺産をそのまま残せるため、後に住むことや賃貸もできます。
しかし分譲マンションと釣り合うだけの現金などがあれば公平な相続もできますが、実際は相続分が偏ることも多いです。
換価分割はマンションなどの不動産を売却して、売却金額を分ける方法です。
遺産に分譲マンションなどがあれば、資産として残すことはできません。
しかし、もとからマンションなどを売ろうと考えていた場合は、この分割方法が最も揉め事が少ないです。
代償分割は現物分割のように相続を行うが、不足した分を多く受け取った相続人が現金として他の相続人に支給します。
例えば2000万円分の分譲マンションを相続した兄と、1000万円分の現金を受け取った次男がいるとします。
この場合は兄が次男に500万円を支払わなければなりません。
この方法は公平な分割という大きなメリットもありますが、多く遺産を受け取った人が資産を持っていないと成立しません。
最後の分割方法は、不動産を相続人全員の共有物とする方法です。
手間はありませんが、放置しておくと後々トラブルが発生しやすいのでおすすめ出来る方法とは言えません。
例えば、相続人の一人が借金などを背負った場合に勝手に差し押さえられることもあります。
また時間が経つにつれ、名義変更の書類も集めにくくなり、相続登記の手続きはより一層難しくなるのです。
遺産分割協議書の書き方
遺産分割協議書には、正式な文書がありません。
そのため雛形をインターネットでダウンロードするのが一番手間なく作れます。
どのような雛形でも、共通して記入する項目はあり、その項目は以下のものです。
- 被相続人・相続人の名前
- 各相続人が何を、どれくらいの割合で受け取ったのか
- 協議を行った日付
- 相続人全員の署名と捺印
書類は手書きでもワードでも問題ありませんが、保管しておくべきものであるためパソコンで作成してデータを残しておくのが無難です。
遺産分割協議書を作成する際の注意点
せっかく相続人が時間を作って皆集まって取り決めても、後から新たな相続人が発覚したり、遺言書が見つかったりなどしては、協議は意味をなしません。
そこで亡くなった人の戸籍謄本をしっかりと集めて、誰が相続人かを明らかにしておきましょう。
また遺言書の有無にも気を配るのが大切です。
分譲マンションの名義変更の手続きと必要な書類
次は分譲マンションの名義変更の手続きと必要な書類についてまとめました。
名義変更は期限があったり、必ずしなければならない手続きであったりではありません。
しかし名義変更を行わなければ、いくつかデメリットがあります。
一つ目は、売却ができないことです。
二つ目は、相続人が死亡した場合に新たな相続人が現れると、遺産分割協議で決定したことを決め直さなければならないことです。
いずれにせよ、名義変更の手続きは遺産相続と並行して行うことがおすすめです。
名義変更の手続き
名義変更をするためには、まず遺産分割協議書を作成して、誰が土地や不動産を相続するのかを決めなければなりません。
遺産分割協議書を作成していれば、後は書類を作成して法務局に提出します。
提出方法は、直接窓口で提出する、書類を郵送する、オンラインで申請する、の3つです。
名義変更に必要な書類
遺産分割協議書が作成されているとき、名義変更に必要な書類は以下の5点です。
- 登記簿謄本(被相続人が土地や不動産を持っていたことを証明する)
- 不動産を相続する相続人の住民票
- 固定資産評価証明書
- 被相続人の住民票の除票
- 登記申請書(法務局HPからダウンロード可能)
登記簿謄本は法務局の窓口、または法務局のHPから取得できます。
固定資産評価証明書は、不動産の所在地の市役所で受け取れます。
このとき注意が必要なのは、よく被相続人の戸籍謄本のある市役所に行く人が多いですが、
固定資産評価証明書は「不動産のある」住所の市役所で入手できます。
分譲マンションを相続後にどうするのか
では分譲マンションを相続した場合は、どうするのか。
分譲マンションには「賃貸に出す」という、自宅を相続したときなどと違う選択肢があるため難しく考えられがちです。
しかし基本的に分譲マンションをどうするかは3つの方法しかありません。
各方法を解説していきます。
一つの方法は「自分で住むこと」です。
他の方法と違い、デメリットは少なく、面倒な手続きも他の方法と比べると少ないと言えます。
売却をする
2つ目の方法は、分譲マンションを売却する方法です。
売却すれば現金化できて、相続人が複数いる場合もより公平な相続がしやすくなります。
また不動産を所有していると、どうしても手間や、維持・管理費などのお金が必要になります。
公平な相続のしやすさや、相続後の手間やコストといった面では売却は一つの方法と言えるでしょう。
一方売却した場合は、資産として残すことはできません。
資産として残しておけば、相続人の誰かが住み続けることや、その子どもが住むことも可能です。
また売却時には、譲渡所得税や住民税も別途必要となります。
マンションを売却したときに発生した利益には、売却時にかかった経費と減価償却を差し引いたうえで、譲渡所得税や住民税がかかってきます。
そのため新たに支払う税金が増えるのです。
しかし譲渡所得税や住民税には控除もあります。
分譲マンションを相続して売却する際はその不動産の価値をしっかりと見極めて、そしてできるだけ高値で売りたいことでしょう。
そのためにも専門的な知識を有する司法書士や不動産会社へ依頼することが賢明だと言えます。
賃貸に出す
最後の方法は分譲マンションに住まず、賃貸に出す方法です。
相続した分譲マンションの立地が良かったり、物件が新しかったりなどした場合は、比較的すぐに住みたい人が見つかるでしょう。
空き家状態にならずに、人が住み続ければ安定した家賃が入ってきます。
不労所得として重要な収入源になるでしょう。
また資産としても残せることはメリットと言えます。
被相続人の配偶者が分譲マンションを相続する時に多くあるケースとして、一軒家を子どもの家族に譲渡し、自身は分譲マンションに住むなどがあります。
広い一軒家に住むことなく、手入れなどが手軽なマンションに住めます。
このように将来的にマンションに住む予定ならば、定期借家契約を結ぶことをおすすめします。
定期借家契約とは、期限を決めておき、期限を迎えた場合は自動的に契約を終了する契約形態です。
もちろん相続した分譲マンションを賃貸として残すことにもデメリットはあります。
賃貸として所有しているだけで、諸経費や税金がかかります。
人に物件を貸すにはハウスクリーニングや、物件の修理が求められることも多いです。
また物件を借りたい人を探すには、不動産会社などに依頼しなければなりません。
もちろん貸したあとも積立金などの支払いがあり、そして家賃で得た収入にも税金がかかります。
住人が見つかった場合にお金がかかるのもデメリットと言えなくありませんが、最大のデメリットは空室のリスクがあることです。
住人がいて初めて家賃収入が発生しますが、住む人がいなければ維持・管理費がかさみ続けることになります。
空室期間が長ければ長いほど、出費だけが増えていきます。
賃貸に出すことを考慮に入れる場合は、その地域のマーケットなどを綿密に調べあげる必要があるでしょう。
また信頼できる不動産会社を見つけることも重要です。
専門家に相談することがおすすめ
ここまで基本的な遺産相続の流れ、遺産分割協議書の作成、名義変更の流れ、そして分譲マンションを相続した際の活用方法を解説してきました。
手順は必ずしも弁護士や司法書士でないとできないことはありません。
しかし分譲マンションなどの不動産相続の際は、不動産の価値を調べることや、賃貸に出すことなどを含めてかなり専門的な知識が必要とされます。
また不動産の価値を誤って査定し、相続税を支払った場合は追加徴税などの可能性も出てきます。
相続する財産の総額が少ない場合や相続人が限られている場合などは、相続中や相続後のトラブルが少ないですが、
不動産などが遺産に含まれる場合は、慎重に相続の手続きを進める必要があります。
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