“相続”は、自分の親族が亡くなれば、誰でも突然に訪れる可能性のある事実です。
もしも故人が立派な土地などの不動産を残して亡くなった場合、残された人たちは“土地を相続”することになります。
今まで考えてもいなかったことが突然発生してしまうのが“相続”の怖さです。「人は必ず最期の日を迎える。」そんなことは誰もが知っている事実。しかし、相続に対してしっかりと向き合っている人は少ないでしょう。
今回は、突然に発生する可能性がある土地相続に、落ち着いて対応ができるよう、土地相続の流れから費用まで詳しくお伝えいたします。
土地相続の手続きと流れ
土地相続の手続きと流れは下記のとおりです。
- 遺言書有無の確認
- 相続人・相続財産の調査
- 遺産分割協議
- 相続登記に必要な書類と費用の準備
- 相続登記の申請
それぞれ詳しくお伝えいたします。
遺言書有無の確認
相続事由発生後は、はじめに遺言書の有無を確認してください。
故人が突然の事故死などで亡くなった場合や自分の死を意識せずに死亡してしまった場合は、遺言書を残していない可能性もあります。しかし現在では、終活と呼ばれる活動を行う方も増えてきており、遺言書を残している方も多いです。
遺言書の効力は強く、「故人の意思」として尊重されるため、遺言書に逆らった相続は基本的には認められていません。また、遺言書は見つけた人がただちに開封して確認して良いものでもありません。
封印のある遺言書は、家庭裁判所にて「検認の手続き」を行わなければ、遺言書としての効力が失ってしまいます。検認の手続きを行わずに遺言書を開封してしまった方に対しても、民法上の責任が生じますので注意してください。
また、検認手続きを踏んで開封した遺言書がその効力を認められる時、原則として遺言書に従った相続を行わなければいけません。
ただし、相続人の権利として遺留分請求が可能ですし、相続人全員が納得をすれば絶対に遺言書に従う必要もありません。土地相続事由が発生した場合には、覚えておきましょう。
相続人・相続財産の調査
相続人の人数や被相続人との関係、被相続人が残した財産の調査を行います。
一般的な法定相続人は、被相続人の配偶者及び子が該当します。しかし、被相続人に配偶者や子がいない場合には、両親や兄弟姉妹が法定相続人となり得る可能性が高いです。
また、被相続人に子がいない場合であっても、子が被相続人より先に亡くなっている場合には、「代襲相続」の可能性もあります。相続制度は非常に複雑であるため、確実な相続人の調査が必要となるでしょう。
また、被相続人が残した財産のすべてを調査し、遺言書がなければ法定相続分に従って財産分与を行わなければいけません。相続は、プラスの財産のみならずマイナスの財産も相続します。
つまり、被相続人がたくさんの土地を残したと思っていても、実際に債務が残っていれば、土地の相続と同時に債務も相続してしまいます。
相続財産の一部にでも手を付けてしまえば、単純承認(相続の一種。プラス・マイナス関係なくすべての財産を相続すること)したものとしてみなされます。
債務が残っていないと思っていても、実際には残っている可能性もあります。死亡した時期によっては、税金を納めていない可能性も考えられるでしょう。
土地を相続しても、ただちに現金が手に入るわけではないため、相続税のみならず固定資産税などの各種税金が重荷になる可能性があります。そうならないためにも、被相続人が持っていた財産の調査は絶対に行いましょう。
遺産分割協議
次に相続人同士で、誰が何を(いくら)相続するかを協議します。
被相続人が残した財産は第一に、遺言書に従って相続されます。もしも遺言書がなければ、法定相続分に従って相続を行うことでしょう。
しかし実際には、各家庭の状況があるはずです。ある人は、「被相続人の介護や世話をしていた。」一方である人は、「まったく実家にも帰らず何年も会っていなかった。」など、全員が平等に相続をすることに納得ができない家族もいるかもしれません。
そのために、遺産分割協議を行います。
実際の遺産分割協議は、相続人が集まってそれぞれの意見を出し合い、最終的な遺産分割割合を決定します。しかし中には、遺産協議分割で解決せず、家庭裁判所での手続きと発展してしまうケースも多いです。いわゆる“争族”というやつです。
とくに“争族”が発生しやすいケースとして、土地などの不動産を残した場合。土地などの不動産を売って、お金に変えて相続人で分割をすれば済む話ですが、そう簡単な話ではありません。
相続人によっては、「思い出の土地だから売りたくない」「売ってお金にしてみんなでわけよう」など、意見分かれてしまうケースも非常に多いです。
もしも上記のような“争族”が発生したのであれば、土地を残したい人が現金で他の相続人に対して相続分を支払えば済みます。もしくは、モノの提供と引き換えに納得してもらうなど。
結局は“お互いに納得”してもらうしか手段はありません。遺産分割協議は、“争族”へ発展しやすい事由ですが、相続においては避けて通れませんので前もって話し合いをしておくなどの対処が必要となるでしょう。
相続登記に必要な書類と費用の準備
相続登記とは、被相続人が残した土地などの不動産を相続人が相続し、不動産の名義変更を行うことを言います。相続登記は、相続した不動産の使途に関わらず、行わなければいけないものですので注意してください。
そして、相続登記と一口に言っても、遺言書がある場合とない場合、法定相続人意外が相続をする場合等によって必要となる書類が異なります。
相続種類 | 必要書類 |
遺言書がない場合(遺産分割協議の結果) | ・被相続人の戸籍(出生から死亡まで)
・被相続人の除票 ・相続人全員の戸籍謄本(現在分のみ) ・当該土地を相続する人の住民票 ・遺産分割協議書 ・相続人の印鑑証明 ・固定資産評価証明書 |
遺言書がない場合(法定相続に従う) | ・被相続人の戸籍(出生から死亡まで)
・被相続人の除票 ・相続人全員の戸籍謄本(現在分のみ) ・相続人全員の住民票 ・固定資産評価証明書 |
遺言書がある場合(法定相続人への相続) | ・遺言書(検認済みのもの)
・被相続人の戸籍(出生から死亡まで) ・被相続人の除票 ・相続人の戸籍謄本 ・相続人の住民票 ・固定資産評価証明書 |
遺言書がある場合(法定相続人意外への遺贈) | ・遺言書(検認済みのもの)
・被相続人の戸籍(出生から死亡まで) ・被相続人の除票 ・権利証もしくは登記識別情報 ・受遺者の住民票 ・遺言執行者の印鑑証明 ・固定資産評価証明書 |
その他、登記を行う際に発生する費用として、ある程度の資金を準備しておく必要があります。具体的な費用は、下記のとおりです。
名目 | 費用 |
司法書士への報酬 | 6~10万円程度 |
登録免許税 | 固定資産税評価額の0.4% |
その他費用(住民票との書類請求費用) | 1,000~2,000円(各市区町村によって異なる) |
相続事由が発生し、相続割合が決定すれば遅滞なく必要書類を準備し、相続登記を行ってください。
相続登記の申請
遺産分割割合が決定し、相続登記に必要な書類が全部揃ったら最後に相続登記の申請を行います。
相続登記の申請は、相続人自ら行っても良いですが、司法書士などの専門家へ依頼をされたほうが、確実に申請が完了します。司法書士へ依頼した場合の費用は、6~10万円程度です。
ただし、相続人が複数人いる場合には追加で報酬の請求がされる可能性もありますので、依頼前に確実に見積もりをもらっておきましょう。
土地相続にまつわる税金
土地を相続した場合には、相続登記時に発生する「登録免許税」や相続に対して課税される「相続税」などの税金があります。
その他、相続した土地を売却する場合には、所得税や住民税が課税されますし、相続した土地を所有し続けるのであれば、固定資産税が発生します。「土地相続=何をしても税金が発生する」と考えておくようにしましょう。
相続した土地を売却する際の流れと費用
相続した土地を売却する流れは下記のとおり
- 所有者の名義変更
- 不動産会社に相談・査定依頼
- 不動産会社と媒介契約を締結
- 売却後に所有権移転登記申請
それぞれ詳しくお伝えいたします。
所有者の名義変更
土地の所有者を変更しなければ、土地の売却はできません。
相続したばかりの土地の名義人は、“被相続人”になっているはず。所有者が被相続人の名前のままでは売却できません。土地を売却したいのであればまず、「土地の所有者を相続人の名前」に変更をしてください。
土地の所有者名義変更は、先に紹介した“相続登記(所有権移転(保存)登記)”のことです。相続登記を行えば、土地の所有者が相続人に変わります。
不動産会社に相談・査定依頼
相続した不動産の名義変更が完了したら、次に不動産会社に売却したい旨の相談をし、査定の依頼をします。不動産会社へ相談をする際の注意点として、必ず「複数社に相談・査定依頼を行うこと」です。
査定依頼は簡易査定(自分で伝えた情報をもとに行う査定)と、訪問査定(担当者が実際に見て行う査定)の2パターンがあります。
簡易査定は無料で行っている不動産会社が多いため、より正確な情報を伝えた上で、複数社に依頼をしてみても良いでしょう。
また、訪問査定も無料としている不動産会社が多いので、簡易査定で得た情報をもとに訪問査定を依頼しても良いでしょう
そして売却価格ではなく、相続した“土地の正確な価値”を知りたいのであれば、“不動産鑑定士”へのご依頼をおすすめします。
不動産鑑定士への依頼は土地のみで20万円~が相場と、少し割高です。
しかし、正確な土地の価格を知ることで、不動産会社に対しても少し強気に出られるのではないでしょうか。
もちろん、不動産鑑定士が示した金額で土地が売れるわけではありませんので、注意してください。
「不動産会社の査定=査定価格(売却できそうな金額)」、「不動産鑑定士の査定=土地の価値」であると覚えておけば問題ありません。
不動産会社と媒介契約を結ぶ
売却を仲介してもらう不動産会社を決定したら、媒介契約を締結します。
媒介契約とは、「売り主と買い主の間を私共(不動産会社)が媒介しますよ。」という契約です。
媒介契約を締結することで不動産会社は売り主に対して、“報告義務”を負うことになります。どのように集客・広告を行ったのか、案内した人数は何人かなど、詳細に報告を行わなければいけません。
また、媒介契約には
・一般媒介
・専任媒介
・専属専任媒介
の3パターンがあります。不動産会社とよく話し合った上で、どのような媒介契約を締結するのか決定しましょう。
媒介契約によって発生する報酬には“限度”があります。限度内であれば、各不動産会社によって手数料が異なりますので、合わせて複数社を比較検討したほうが良いです。
売買代金 | 報酬限度額 |
200万円以下 | 売買金額✕5%以内 |
200万円以上400万円以下 | 売買金額✕4%以内 |
400万円以上 | 売買金額✕3%以内 |
売却後に所有権移転登記申請
買い主が決定し、売買契約が締結されたら土地の受け渡しを行います。土地は“不動産”であるため、引き渡しの実際は“名義変更(所有権移転登記)”で行います。
土地相続後、不動産を売却するためにはまず、相続人に所有権移転登記を行わなければいけません。そして、売買契約が締結されれば、相続人から新たな買い主に所有権移転登記を行うこととなります。
つまり、不動産を相続してから売却完了までの間に2度、所有権移転登記を行います。そのため、所有権移転登記に必要な登記費用は“2回分”であると覚えておいてください。
流れを把握しスムーズな相続を
今回、土地相続の手続きや流れについて紹介しました。
土地の相続は、遺言書の有無確認から相続登記まで、行わなければいけない手続きが非常に多いです。複雑な手続きも多いため、専門家に任せられることは任せてしまっても良いです。
そして、相続した土地を売却する際もまずは自分(相続人)の名義にしなければいけません。土地の売却が決定すれば、また所有権移転登記を行わなければいけませんが、まずは自分に変更からです。
その後は、不動産会社選びから不動産会社との媒介契約の締結、売買契約締結、所有権移転登記という流れでした。今回紹介した流れを把握しておけば、より円滑に相続手続きや売却手続きがスムーズにいくことでしょう。
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