不動産相続にかかる費用とは?相続登記の相場も徹底解説

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遺産を相続した場合、現金や金融資産なら相続にかかる費用や手間は、簡素なもので相続税以外はほとんど発生しません。

しかし、不動産となると勝手が違います。不動産には、相続税以外に不動産ならではの費用が発生するのです。 また、不動産の相続は、書類や手続きも煩雑になることが多い傾向となっています。

理由は、不動産が現金などに比べて明確に価値が判別できないことと分割することも難しいからです。

今回は、不動産の相続に関して発生する費用について解説を進めていきます。不動産を相続しても、相続費用が理解できていなければ、思わぬ出費で苦しむことになるかもしれません。

この記事を読んでいただいて、不動産相続の費用についての知識を深めることができれば幸いです。

 

不動産の相続手続きにかかる費用とは

不動産の相続手続きにかかる費用とは

相続手続きを行う際には、書類を取得する費用や税金を収める費用が必ず必要となります。

また、相続のプロフェッショナルに相談したり、依頼したりした場合でも費用は必ず発生するのです。

不動産が相続財産に含まれていれば、さらに費用が増えます。法務局で登記簿謄本を取得したり、固定資産税評価証明書を市区町村役場で取得したりする必要が生じるのです。

また登録免許税も納めなければなりません。不動産は相続後、相続登記をする必要があるのでその分の費用がプラスされということになるのです。

不動産登記のプロフェッショナルに相談したり、依頼したりした場合も、他の相続と同様に費用は発生します。

 

不動産の相続登記にかかる費用

不動産の相続登記にかかる費用

相続登記とは不動産の相続ならではの手続きです。相続登記についてかかる費用を理解していれば、相続後速やかに相続登記の手続きを進めることができるでしょう。ここでは、相続登記に必要な書類とその費用について解説します

 

登録免許税

土地や建物を買った人や不動産を相続した人などは、不動産の所有権について登記する必要があります。この不動産を所有しているということを公示しなければならいため、法務局にある登記簿に不動産の所有権を記録してもらうのです。

登録免許税とは、登録手続きの際に国に納める税金のことになります。税額は固定資産税評価額を基に税率をかけて計算する仕組みです。

税率は登記の種類によって異なりますが、相続登記の場合は、0.4%となっています。

 

固定資産評価証明書の取得費用

固定資産税とは土地や建物などの不動産を所有している人に毎年課税される税金のことです。固定資産評価証明書とは、所有している不動産の固定資産評価を証明する書類になります。

この書類は、相続登記の際に提出しなければならない書類であり、申請先は各市区町村役場です。

固定資産評価証明書の取得費用は、市区町村によって違いがありますが、1通につき200円から400円程度となります。

 

戸籍関係の書類の取得費

相続登記の際には、戸籍に関わる書類も提出しなければなりません。被相続人については、戸籍全部事項証明書や除籍全部事項証明書そして改製原戸籍が必要です。 相続人については、相続人全員の戸籍全部事項証明書と住民票の写しが必要となります。

戸籍全部事項証明書の費用は1通につき450円で、除籍全部事項証明書や改正原戸籍は1通につき750円です。住民票の写しは、市区町村によって金額に違いがありますが300円~500円程度で取得できるでしょう。

 

その他の実費について

その他の相続登記に必要な書類は、不動産登記事項証明書と相続人全員の印鑑証明書です。不動産登記事項証明書は、相続登記の申請をする際に登記しようとする不動産の正確な情報が必要であるために取得します。

不動産登記謄本の取得費は1物件あたり480円から600円です。オンライン請求で窓口交付の場合は480円で、オンライン請求・送付の場合は500円となります。書面請求の場合は600円です。

印鑑証明書の取得費は、市区町村によって違いがありますが300円から500円程度で取得できるでしょう。

また、費用は発生しませんが、遺産分割決定書と遺言書がある場合は遺言書も必要となります。

 

不動産の登録免許税について

不動産の登録免許税について

相続財産のほとんどは、相続税を納めれば他に税金が課税されることはありませんが、不動産においては登録免許税を納めなければなりません。登録免許税は、収入印紙で法務局に収めるという方法になりますが、税率は登記の原因によって異なります。

不動産売買により土地や建物を取得した場合は、2%ですが令和3年3月31日までの登記であれば1.5%となります。相続や法人の合併又は共有物の分割の場合は0.4%です。

その他の登記原因については2%と定められています。本記事は、不動産相続についての解説ですので、登録免許税の税率は0.4%となるのです。

 

3-1:登録免許税の計算方法

登録免許税の計算式は、不動産の価額に税率をかけるだけなので、いたってシンプルなものです。相続登記の場合の価額とは、固定資産税評価額になります。そして税率は0.4%です。

例えば、自用地の固定資産税評価額が5000万で、自用建物の固定資産税評価額が1000万だとした場合の登録免許税を算出すると下記のようになります。

(5000+1000)×0.4=24(万円)

3-2:登録免許税の免税措置

相続登記の登録免許税の税率は0.4%ですが、免税措置も定められているので、知っておくと登録免許税を納めなくて済む場合があります。

  1. 相続により土地の所有権を取得した個人が、相続による土地の所有権移転登記を受ける前に死亡した場合に適用される措置です。死亡した個人を、その土地の所有権の登記名義人とするために受ける登記については、登録免許税は課税されません。期間は平成30年4月1日から令和3年3月31日までです。
  2. ①相続登記対象の土地が、相続登記の促進を特に図る必要がある一定の土地
    ②登録免許税の課税標準となる不動産の価額が10万円以下の土地
    ①と②に両方に該当する土地の相続による所有権の移転登記については、登録免許税は課税されません。ただし、個人が平成30年11月15日から令和3年3月31日までの間において、相続による所有権移転登記を受ける場合にかぎります。

上記は、相続における土地の登録免許税の免税措置です。建物においては、相続登記の免税措置はありません。

しかし、新築又は取得後1年以内の登記であることを要件に床面積が50平米以上あれば軽減税率が適用されます。ただし、登記した後で申請しても軽減税率の適用を受けられませんので、注意して登記の手続きを行いましょう。

 

3-3:相続登記費用は誰が負担するのか

相続登記の費用は、相続人が負担します。相続人が1人の場合は、その相続人が費用を負担することになるのです。しかし、複数の相続人がいて共有分割した場合は、それぞれの持分に応じて按分するのが妥当と判断されます。

 

3-4:相続登記にかかった費用も必要経費になる

相続した不動産の活用方法によっては、相続登記にかかった費用を経費として計上できます。

相続した不動産を売却した場合は、譲渡所得を確定申告しなければいけません。その場合、不動産の譲渡額から不動産の取得費と譲渡費用を差し引いた金額が、譲渡所得となるのです。相続登記にかかった費用は、不動産の取得費として経費計上できますので、確定申告で漏れがないようにしましょう。

相続した不動産を賃貸住宅として活用したり、農業で所得を得たりすれば事業所得となります。このような事業所得も確定申告が必要です。その場合の事業所得とは、収入から必要経費を差し引いた額になります。相続登記にかかった費用は、この必要経費の対象となりますので、申告時に計上できます。

相続した土地や建物を自用として使用する場合は、必要経費として計上することはできません。

3-1~3-4参照

国税庁: No.7191 登録免許税の税額表

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm

 

費用を抑えて自分で相続登記する場合

費用を抑えて自分で相続登記する場合

相続登記は煩雑で面倒な書類が多いので、プロに任せる人が多いのですが、中には自分で相続登記しようとする人もいます。それぞれに事情があるのですが、相続した不動産の価額が低かったり、費用をかけるのが嫌だったりする場合が多いようです。

ここでは、自分で相続登記する方法を解説していきます。ハードルの高い相続登記を自分で完遂できる可能性を高めることができるでしょう。

 

必要な書類を集める

相続登記を自分で行う場合は、まず必要な書類を集めることから始めましょう。必要な書類とは、戸籍関係の書類や住民票関係の書類、不動産登記に関する書類などのことを指します。

たくさんの書類が必要となりますので、整理して二度手間にならないように申請するようにしましょう。下記に必要な書類の概略を記載しますので参考にしてください。

必要な書類 書類を集める理由
被相続人の戸籍関係の書類 被相続人である人と相続関係にあるかどうかを確認するために必要です。
相続人の戸籍関係の書類 被相続人が亡くなった時点で、相続人が存在していたことを証明するために必要となります。
被相続人の住民票の除票 被相続人の住民票の住所と登記上の住所とのつながりをつけ同一人物であることを証明するために必要です。戸籍の附票でも代用可能です。
不動産の登記名義人となる相続人の住民票 相続登記完了後に新たに登記名義人となる相続人の住所を証明するために必要であります。
固定資産評価証明書 登録免許税の課税価格となる固定資産評価額の確認のために必要となります。

上記の表に記した書類を効率よく取得しなければ、スムーズな相続登記を行うことは難しいでしょう。

 

相続人の確定

被相続人の戸籍に関する書類を集めることができたら、その書類を読んで被相続人に関連する相続人を確定します。時には、誰も知らなかった相続人の存在が明らかになることもありえます。また、遺言書により相続人が指名されている場合もあるので、遺言書の有無もしっかりと確認しましょう。

次項で説明する遺産分割決定書には、相続人全員の合意と押印と印鑑証明が必要となるため、後で相続人が判明すれば、その遺産分割決定書は無効となります。また、相続人全員が関与していない遺産分割協議も無効となり、それに基づいて登記申請された案件は、登記の取り下げが必要となるのです。

登記の取り下げは、提出した収入印紙の再使用の申請なども必要となる場合があり、大変手間のかかる作業となりますので、相続人をしっかりと確認する必要があります。

 

遺産分割決定書を作成する

相続人が確定すれば、遺産分割協議を行う必要があります。遺産分割協議では、被相続人の遺言書があれば、その遺言書の内容が最優先となるのです。

また、遺言書がなければ、遺産分割協議で決定した内容が法定相続分よりも効力を発することになるので、相続人全員の合意が大前提となります。

遺産分割協議において、相続人全員の合意形成ができれば、遺産分割決定書を作成する運びとなるのです。遺産分割決定書には、相続人全員の押印と印鑑証明が必要となります。ある程度話し合いが進んだ段階で、実印と印鑑証明の準備を促しておくと良いかもしれません。

 

相続登記の申請書の作成

必要な書類を集め、相続人を確定し無事に遺産分割協議がまとまれば、いよいよ相続登記の申請書を作成する段階に入ります。

相続登記の申請書については、法務局のホームページで取得できる雛形を利用して作成すると良いでしょう。

相続税の登記申請書が作成できれば、登録免許税の準備をしなければなりません。先に述べたように登録免許税は、固定資産税評価額の0.4%です。相続人が1人ならば問題ありませんが、不動産の共有分割になると、持分に合わせて登録免許税も按分することになるでしょう。そうなると、各相続人から登録免許税を集めることになります。もちろん、相続登記を申請する人が、登録免許税を立て替えることは可能ですが、後で回収することが難しくなる可能性もあることを認識しておく必要があります。

 

不動産相続登記のプロフェッショナルと費用相場

不動産相続登記のプロフェッショナルと費用相場

相続登記の専門家は司法書士です。しかし、相続税の申告や他の相続財産についての手続きも依頼する場合は、弁護士や税理士も選択肢に入ります。

どの専門家が、何に精通しているのかを理解しておけば、自分の要望にあったプロフェッショナルに相談し依頼する事ができるでしょう。そうすることにより、ロスのないスムーズな相続も可能となるのです。

ここでは、相続登記を中心に各プロフェッショナルの守備範囲とおおよその費用相場について解説します。

 

司法書士ができることと費用相場

司法書士は、不動産登記全般のプロフェッショナルです。相続登記を依頼することについて何ら問題は生じませんが、遺産相続については、手続きについては問題ありませんが、遺産分割協議で揉めたりした場合の仲裁などは難しいと認識しましょう。

費用相場は、報酬が3万円~7万円です。書類収集などから手続きまで込みのパック料金としては7万円~15万円が相場となります。

 

土地家屋調査士ができることと費用相場

土地家屋調査士ができることは、不動産の表示に関する登記のみです。したがって相続登記や相続に関する手続きは専門外となります。しかし、土地の相続において、境界線の測量などを依頼する場合には、土地家屋調査士以外にプロフェッショナルはいません。

境界確定測量の報酬としては25万円~60万円程度です。実況測量の報酬は10万円~20万円となります

 

弁護士ができることと費用相場

弁護士は、遺産相続や遺産分割に関わること、全てにおいての専門家となっています。しかし、得意なジャンルであるかどうかを見極める必要もあるのです。得意なジャンルでなければ、期待したような成果を得られない場合もあります。

弁護士の報酬は、着手金が10万円からとなっています。ただし、依頼者の経済的利益によって、成功報酬を加算しなくてはならないことを知っておきましょう。

 

税理士ができることと費用相場

税理士は、税に関わるプロフェッショナルです。登記に関わる登録免許税の計算や、相続税・確定申告に関することなどは、安心して任せることができます。ただし、相続登記の手続きは専門外となることを認識しておきましょう。

税理士ならではの相続パックというものがあります。これは、相続税の申告から相続登記、資料を集めなどすべての相続関連手続きが収まっているパックです。専門外の手続きなどは、他の専門家と提携しているので、利用すれば相続の煩雑な手続きから開放されます。ただし、相続に関する紛争を解決することは難しいでしょう。

税理士への報酬は個人の確定申告なら3万円から10万円程度です。相続のパックを利用した場合は、50万円からとなっているようです。

 

プロフェッショナルに依頼するかどうかの判断基準とは

不動産の相続関連の手続きを、プロフェッショナルに依頼するかどうかは、不動産の種類と数や相続内容によって判断すると良いでしょう。また、相続する不動産の所在地がどこにあるかも判断基準になります。

相続登記は、不動産の所在地を管轄する法務局や登記所で手続きを進めるため、遠方の物件であれば、郵送やインターネットでの申請を検討しなければなりません。そうなると、煩雑な相続登記が、ますます面倒になるので、プロに依頼した方が良いと言えます。

相続する不動産が複数あって、所在地が離れている場合もプロに依頼する方が良いでしょう。この場合は、1つの法務局だけで手続きが完了しないケースがほとんどです。

所在地を管轄する法務局でしか手続きできないということは、相続登記を含めた不動産登記の弊害になっているかもしれません。

 

不動産相続で迷ったら費用を抑えるよりもプロへ

不動産相続で迷ったら費用を抑えるよりもプロへ

ここまで、不動産相続の費用について解説してきました。相続が開始されたら、不動産だけではなく、あらゆる相続財産について遺産分割協議を行なったり、相続税の申告準備をしたりする必要があって忙殺されるかもしれません。

不動産相続は、煩雑な手続きがあるので迷ったら費用を抑えるよりも、プロフェッショナルに依頼する方が無難です。プロなら、正確で迅速に不動産相続の手続きを完了させてくれます。

また、当サイト「相続のすゝめ」もご活用ください。不動産相続はもちろん、あらゆる相続について詳細に解説しています。

【記事監修】高野友樹

株式会社アーキバンク取締役COO/不動産コンサルティングマスター/宅地建物取引士

不動産会社にて2,000件以上の賃貸売買仲介に関わり、6,000戸の収益物件の管理業務を経験した後、年間で36.9万平米を超える賃貸契約面積を獲得している国内有数の不動産ファンドであるGLR(ジーエルアールインベストメント株式会社)にてAM事業部のマネージャーとして従事。

大規模物件の売買仲介を中心に、投資家へのコンサルティング業務を行い、100億円規模の物件の取引に携わる。2019年より株式会社アーキバンクに参画し、不動産事業部統括責任者として取締役に就任。

不動産投資家の所有物件の買い替えによる資産整理や遺産相続など、その経験と知識を生かしたコンサルティング業務を行っている。

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