遺産相続に関わる税とは?非課税や非課税額も全て解説

  1. 税金
  2. 46 view

高齢になり財産を所持していると、気になるのは遺産相続です。2015年に相続税の税制が変わりましたが、知らない人や中身を理解していない人も多いと思います

そこで今回は、遺産に係る税の基本的な内容から生前贈与などを解説します。

法律に違反することなくスムーズに相続し、節税できる可能性もあるので最後までお付き合いください。

 

遺産に関わる税とは相続税

遺産を相続した場合や残した場合に、税を申告しなければいけない国とそのような税制がない国があります。

遺産の関わる税制がない国ではカナダやオーストラリア・ニュージーランドが有名です。

また、財産を残した人が税金を支払う遺産税を導入しているのがアメリカなどです。実際に亡くなった人が払うわけではなく遺産管理人などが申告して支払う形式です。

日本では、遺産を相続した人が税務署に申告し支払う相続税が適応されています。

 

そもそも相続税とは

相続税とは、相続税法によって課せられる税金です。親や親族の死亡、遺言書の効力などにより遺産を相続した場合に申告しなくてはなりません。

前途したようにカナダやオーストラリアでは、そのような税制がないので不公平のように感じる方も多いかもしれません。しかし、日本では「富を再配分する」という基本理念があり、貧富の差が少しでも埋まるようにする経済政策の意味合いも持っているのが相続税です。

相続税は、遺産総額が基礎控除額を超えると課税されるので、それを超えなければ申告する必要はありません。

 

相続税の対象となる遺産

遺産の中でも相続税の対象となる遺産とそうでないものがあります。遺産総額を知るためにも課税対象となる遺産を知っておくことが肝要です

相続税が課税される遺産の例

  • 現金
  • 預金
  • 株式や投資信託などの有価証券
  • 不動産
  • 貴金属
  • 書画骨董
  • 営業権
  • 特許権
  • 著作権
  • ゴルフなどの有料の会員権
  • 生命保険に関する権利
  • 過去3年以内に贈与された財産

みなし相続遺産として課税されるもの

  • 死亡保険金
  • 退職金

課税額から差し引かれるもの

  • 被相続人の借入金などの債務や未払いの税金
  • 未払いの医療費
  • 被相続人の葬式費用

課税対象外の遺産の例

  • 墓地・墓石
  • 仏壇・仏具・仏像・神棚
  • 生命保険金のうち500万円×法定相続人の数
  • 死亡退職金のうち500万円×法定相続人の数
  • 相続人が公共団体に寄附した遺産

課税対象は、金銭的な価値があるものほぼ全てが対象となりますので、この例以外にも遺産があって金銭的な価値があるものを相続した場合は、相続のプロに相談すると良いでしょう。税務署に遺産隠しと指摘されると追徴課税が徴収されるだけでなく、悪質とみなされると逮捕される可能性もあります。

 

現金と外貨の評価方法

遺産の中で現金・預金は、被相続人の死亡時点での残高を評価額とします。また、その中に外貨が含まれている場合もあり得ます。その場合は国税庁の財産評価基本通達4-3により「現金の外貨については、納税義務者の取引金融機関が公表する対顧客直物電信買相場又はこれに準ずる相場により評価」となります。

対顧客直物電信買相場とは、外貨預金の支払いやトラベラーズ・チェックの買取りや電信送金された外貨を円に交換する場合に適用される為替相場です。これを基準に外貨を円に評価するので、チェックしておくと良いでしょう。

 

土地や建物と評価方法

土地と建物では評価方法が異なるので先に土地の評価方法を解説します。土地の評価方法は、国税庁が定めた路線価や固定資産税評価額に基づいて評価されます。大抵の場合は実際の取引価格より低く設定されています。

路線価方式は市街地で提要され、それ以外では固定資産税評価額に一定の倍率をかける倍率方式が適用されているケースが殆どです。

建物の場合は、自宅など相続人が使用しているものであれば固定資産税評価額と同額で評価されます。賃貸に出している場合は、30%減額して評価されますが、空き家期間が長ければ減額の対象にはなりません。

 

株式や投資信託などと評価方法

有価証券は、遺産の中で現預金や不動産に次いで比率が高い遺産です。有価証券の中でも代表的な株式と投資信託の評価を解説させていただきます。

株式は、上場株式と非上場株式に分かれます。上場株式の場合の評価は、株価に保有株式数をかけて計算しますが株価の決定に対してはルールがあります。

  • 相続開始日の終値
  • 相続開始月の終値の平均値
  • 相続開始前月の終値の平均値
  • 相続開始前々月の終値の平均値

この4つの中から最も値が低いものが株価として採用されます。

非上場株式の評価は、企業の財務状況をもとに個別に株価を評価することになります。金融の素人である個人では非常に難しい為、プロに依頼することが一般的でありトラブル回避にもなります。

その他の遺産の評価

現預金や不動産・有価証券以外にも相当の価値がある遺産に対しても評価の方法が定められています。その中でも一般的に知られているものを解説させていただきます。

  • ゴルフ会員権
    ゴルフ会員権の評価方法は、相続開始時点の取引相場の70%で評価される。預託金の返還がある場合はその金額を加算する。
  • 書画骨董や貴金属
    書画骨董や貴金属の評価は、販売実例や専門家の鑑定結果によって評価される
  • 車など
    車両については、相続開始時点の取引価格で評価される。取引価格は、販売価格ではなく取り価格が採用されるので、申告時には注意が必要だ。販売価格の場合は業者の利益が上乗せされているので正当な遺産評価とはならない。

この他にも金銭的価値のあるものは申告書に載せなければなりません。正確な評価が難しい場合はプロに託すか相談しながら申告書の作成を進めるほうが無難です。

相続税の対象となる遺産を全て書き出して合計した金額が遺産総額となります。

 

相続税の基礎控除や税額控除

遺産を相続したからといっても全ての人が相続税を払うとは限りません。実際には、遺産を相続した人の8%程度が実情です。

理由は、様々な控除があるからです。遺産総額が決定したら、法で定められている控除や諸費用を差し引くことになります。結果的に基礎控除を上回った金額に対してのみ相続税がかかります。

 

基礎控除とは

基礎控除とは、遺産金額から無条件で控除されるもので3000万円+600×法定相続人の数となっています。

基礎控除以下の遺産総額を相続しても相続税はかからないということになります。

 

相続税対象遺産額に対する税率と控除

遺産の課税額が決定したら、その金額によって税率と控除が定められています。

相続税の速算表

課税価格 税率 控除額
1000万円以下 10% なし
3000万円以下 15% 50万円
5000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1700万円
3億円以下 45% 2700万円
6億円以下 50% 4200万円
6億円超 55% 7200万円

例として、1500万円の課税価格の相続税を計算すると

1500万円×15%-50万円=175万円となります。

 

相続時精算課税は税額から控除される

相続時精算課税とは、被相続人から現金などの贈与を受けた時に特別控除額及び一定の税率で贈与税を計算しておき、相続税で精算するものです。

相続税の対象となる遺産を受け取っていますが、先に贈与税を支払っているので相続税から控除される仕組みです。もし、控除しきれない相続時精算課税があれば申告することにより還付を受け取ることが可能です。

 

配偶者控除は申告書が必要

配偶者控除とは、配偶者が実際に受け継いだ遺産額が1億6000万円までか、配偶者の法定相続分相当の遺産であれば配偶者に相続税がかからない控除です。

配偶者控除は相続税の税額軽減の中では、最も軽減額が大きい控除なのでよく理解しておく必要があります。また、相続税の申告書を提出する必要があることもご留意ください。

 

その他の税額控除

相続税には、遺産総額から控除されるものと、税額から控除されるものがあります。この章で解説している基礎控除や配偶者控除は遺産総額から控除されるものですが、課税額に対する控除や相続時精算課税は税額から控除されます。他にも税額から控除されるものがあるので解説させていただきます。

  • 未成年控除
    相続人が20歳未満の場合は、20歳になるまでの年数×10万円が控除されます。
  • 障害者控除
    相続人が障害者の場合は、85差に達するまでの年数×10万円が控除されます。特別障害者の場合は金額が20万円となります。
  • 暦年課税による控除
    遺産額に加算された相続開始前3年以内の贈与財産があって贈与税を収めているものは控除の対象となります。

相続税を申告する場合は、遺産総額を算出し控除できるものを差し引いて申告書を作成します。控除できるものを知らなければ払い損になる場合もあるので、控除項目を徹底的に調べると節税対策に繋がる可能性もあります。

 

孫に非課税で遺産を渡す方法

大切な孫に非課税で遺産を渡すことができるとなれば喜ばれる人も多いのではないでしょうか。

しかも、孫が財産を必要としているときで、生前であれば尚の事でしょう。なぜなら、孫の希望に応えることができるので喜んでくれるし、感謝もしてくれるからです。

 

孫への生前贈与はメリットが

孫に資産を残すとなれば、遺言書よりも生前贈与のほうがメリットは多いです。一つは節税になる可能性が高いことです。そして、もう一つは孫が必要としているタイミングで援助することができるからです。

 

生前に孫に財産を渡したいなら

前途のように生前に孫に財産を譲渡するのなら暦年贈与による基礎控除を利用すると良いでしょう。暦年贈与の基礎控除は年間110万円です。1年間に110万円以内の贈与なら非課税で孫に生前贈与できるということです。

また、年間110万円を超える高額な生前贈与を行う場合は、相続時精算課税を利用すると良いでしょう。相続時精算課税なら特別控除額が2500万円なのでそれ以下ならば非課税となります。

 

孫への生前贈与が節税になる仕組み

孫への生前贈与は、孫が必要としている段階で財産を贈与できるだけでなく、節税できる可能性があります。代表的な節税方法は以下の5つです。

  1. 贈与税の基礎控除を毎年利用することで相続税の課税対象財産を減らす。
  2. 分散して贈与することで税率を下げることが可能。
  3. 教育資金贈与の非課税制度を利用して1500万円を一括贈与する。
  4. 住宅取得の資金贈与非課税特例を利用する。
  5. 収益物件を贈与して収益を孫が受けとるようにする。

以上のような相続税の節税対策を事前に施しておけば、最愛の孫が生活に窮することはないでしょう。また、孫が税の負担を背負うリスクもほとんどないので、安心して贈与できます。

 

生命保険金にかかる相続税と非課税枠

生命保険で相続税に関するある程度の対策ができることを認知している方は多いでしょう。しかし、どのような仕組みなのかまで理解している人は意外と少ないようです。ここでは、相続に関する生命保険の扱いや非課税枠などを解説させていただきます。

 

生命保険金は相続財産ではない

生命保険は、被相続人が亡くなった段階で生命保険の受取人が所持できる財産です。なので、被相続人が所有していた財産ではありません。民法上でも相続財産に含まれていません。

しかし、事実上財産が相続されるので、相続税法によって生命保険を相続財産とみなされています。このような財産や遺産をみなし相続財産といいます。ちなみに死亡退職金もみなし相続財産に含まれています。

 

生命保険金の非課税枠

被相続人が死亡したことによって受け取った生命保険金は、保険料を誰が支払っていたかによって税金の種類が違います。

  • 被相続人が支払っていた場合は相続税が課税される。
  • 保険金受取人が支払っていた場合は取得税が適用される。
  • 被保険者・保険料負担者・保険金受取人が異なる場合は贈与税の対象。

生命保険金を受け取り、申告する際に必要な知識なので憶えておいて損はありません。

この記事では相続税が主題なので、相続税に絞って記事を進めます。

生命保険金の相続税における非課税枠は、500万円×法定相続人数です。

法定相続人が4人いれば2000万円が非課税枠となります。

 

生命保険金の相続税計算

生命保険金の非課税枠が解ったら次は、実際に相続税を申告する際の計算です。

例として

法定相続人が4人で、内訳が妻と子供が3人、遺言書なしで生前贈与もなし。

遺産総額が6000万円

生命保険金3000万円

とする場合

まず生命保険金の課税額は

3000万円-(500万円×4人=2000万円)=1000万円

それに遺産総額の6000万円をたすと7000万円です。

7000万円から基礎控除を引くと

7000万円-(3000万円+600万円×4=5400万円)=1600万円

相続税の課税対象額は1600万円となります。

1600万円を法定通り相続すると

妻が800万円、子供が2000万円です。

妻は、配偶者控除があるので相続税申告書を提出すれば非課税となります。子供たちは200万円に対しての相続税なので税率は10%が適用され、相続税は各々20万円となります。

ここで重要なのは、生命保険金がなぜ節税になるかです。生命保険金は、非課税枠が先に差し引かれ、その後と基礎控除共に差し引かれることで節税となります。

先の例で遺産総額が9000万円ならば、基礎控除の5400万円が差し引かれるだけになるので課税対象額は3600万円となります。

生命保険金の非課税枠があるかないかで2000万円も相続税の対象額に差が出ます。故に生命保険金を利用することが節税に繋がる訳です。

 

相続税も節税できる

ここまで、相続税の対象や遺産の評価を解説し、遺産総額の出し方から相続税の計算まで説明させていただきました。

ここで重要なのは、税金をたくさん払うことではなく少しでも節税できるかどうかです。

法に則り節税することは、何ら後ろめたいことでもなく、権利であり当然のことです。ただし、節税の方法を知らなければ対策も実行できません。ここでは、一般的な相続税の節税対策について解説させていただきます。

 

生前贈与・財産の組み換えで節税する

遺産の評価額を減らすことで、相続税の節税対策を講じる場合は、生前贈与や財産の組み換えなどを利用します。

生前贈与は、遺産を前もって渡すことにより課税対象額を減らすことができます。財産の組み換えとは、現預金を不動産や生命保険などに変えることです。組み換えのメリットは遺産の価値を下げずに評価額を下げることが可能ということです。

 

事業を営んでいるなら優遇税制を活用

被相続人が事業を営んでいた場合は、事業承継を前提に税制上の優遇を受けることができます。

株式上場をしていない事業であれば、相続税の納税猶予の適用を受けることができます。これにより、一定の条件を満たしながら事業を継続することで半永久的に猶予され、状況次第では実質的免除の可能性もあります。

 

相続人が納税対策も必要

相続税の納税は現金一括が基本です。節税対策を講じるとともに、相続人が納税できるように納税資金の準備も怠ってはなりません。

納税対策の意味でも、生前贈与や教育資金贈与・財産の組み換えなどを上手に行う必要があります。

 

事前の準備で安心できる相続を

相続税の税務調査の確率は約10%です。相続人が税務調査で痛い目に合わないためにも、被相続人と意思疎通して対策を講じるべきです。

しかし、税制は非常に複雑で理解しにくいものが多くあります。金融のプロであっても全てを把握しきれていない場合があります。

その上、税制は毎年のように変化していますので、多くの遺産相続に関わる人がプロに相談しています。

本サイトが遺産相続に関するお悩みの解決に繋がることを願います。

【記事監修】高野友樹

株式会社アーキバンク取締役COO/不動産コンサルティングマスター/宅地建物取引士

不動産会社にて2,000件以上の賃貸売買仲介に関わり、6,000戸の収益物件の管理業務を経験した後、年間で36.9万平米を超える賃貸契約面積を獲得している国内有数の不動産ファンドであるGLR(ジーエルアールインベストメント株式会社)にてAM事業部のマネージャーとして従事。

大規模物件の売買仲介を中心に、投資家へのコンサルティング業務を行い、100億円規模の物件の取引に携わる。2019年より株式会社アーキバンクに参画し、不動産事業部統括責任者として取締役に就任。

不動産投資家の所有物件の買い替えによる資産整理や遺産相続など、その経験と知識を生かしたコンサルティング業務を行っている。

記事一覧

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。