不動産相続に関わる税金は相続税だけではない!関連税金全て解説!

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不動産を相続すると相続税が気になるのは当然のことです。

しかし、不動産相続に関わる税金は、相続税だけではありません。知らなければ、思わぬところで税務署からの通知がくる場合もあるかもしれません。

今回は、相続税を含めて不動産相続に関わる税金を詳細に解説します。この記事を読めば、相続税だけでなく不動産相続に関わる税金の知識を得ることができるでしょう。

 

不動産相続に関わる税金の種類

不動産相続に関わる税金の種類

不動産相続に関わる税金の主役は相続税です。不動産の相続税は土地と建物に分かれますが、どちらも資産価値が高いので相続税評価も高い傾向になるのです。相続税以外に不動産相続に係る税金については下記に記します。

  • 登録免許税
  • 固定資産税
  • 都市計画税
  • 譲渡所得税の所得税・住民税
  • 賃貸経営における所得税・住民税
  • 不動産取得税

相続した不動産を譲渡したり、賃貸経営を継承したりしなければ、所得税や住民税を申告し納税する義務は生じません。

しかし、1つの不動産で相続税以外にもこれだけの税金があるということは理解しておくとよいでしょう。

不動産相続のメインは相続税

不動産相続のメインは相続税

不動産相続において最も大きなウェイトを占めているのが相続税です。逆に言えば、不動産は価値が高いということになります。

また、相続財産の中でも、現預金と並んで比重が高い相続財産といえるのです。ここでは、不動産相続における相続税の仕組みや計算方法などを解説します。

 

不動産相続における相続税の仕組み

相続財産の現預金以外は、相続税法「第2章 第5節 相続税の課税価格の計算」や「第11章 財産の評価」などに定められている評価方法によって、価額を算出する仕組みになっています。

ここでは、不動産の評価方法を解説しますので、不動産以外の詳細は、下記の国税庁相続税法を確認してください。

国税庁:相続税法

https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kohon/souzoku/pdf/all.pdf

不動産の相続税は、土地と建物を分けて計算する仕組みになっています。そして、相続人自身や家族が使用する自用と賃貸ししている賃貸用では、計算方法が違うのです。

 

自用地の相続税

自用地とは、土地を相続した相続人自身が使用する土地のことです。この場合も相続税は課税されます。自用地の相続税の評価は下記の式で計算します。

自用地の評価額=正面路線価×面積×奥行補正率

この計算式の中にある正面路線価と奥行補正率は、下記の国税庁のホームページで確認できます。また、面積については実測値となりますので、地積測量図や実績図などで確認すると良いでしょう。

これら2つの書類は、相続税を申告する際に税務署に提出する書類です。不明であれば、土地家屋調査士に依頼して、取得しておくことをお勧めします。

国税庁:路線価図・評価倍率表

https://www.rosenka.nta.go.jp/

奥行価格補正率表

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/02/07.htm

 

自用家屋の相続税

不動産相続で取得した建物を自分で使用する場合は、自用家屋の評価方法で相続税の評価額を算出します。自用家屋の評価額は、固定資産税評価額と同じです。

固定資産税評価額については、固定資産税評価証明書を取得して確認するとよいでしょう。取得した、固定資産税評価証明書は相続税申告の際に税務署に提出する書類となります。

 

貸家建付地の相続税

相続した土地に賃貸用の建物が建っていて、賃貸経営を行なっている場合は、貸家建付地として評価します。貸家建付地は、以下の式で評価額を計算します。

貸家建付地の評価額=自用地の評価額-自用地の評価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合

この式のように、貸家建付地の評価額を算出するのには、まず自用地としての評価額を求めることになります。その評価額を基に借地権割合と借家権割合、賃貸割合を掛け合わせて算出する仕組みとなっているのです。

借地権割合と借家権割合は、先の国税庁の路線価図・評価倍率表で確認できます。

賃貸割合は、下記の式で計算します。

賃貸割合=課税時期において賃貸されている各独立部分の床面積の合計÷当該家屋の各独立部分の床面積の合計

貸家建付地は、賃貸用の建物が建っているので、所有者が自由に土地を使うことができません。賃貸用建物の入居者に借家権があるからです。

貸家建付地は、自用地と比べて相続税評価額が低くなるように設定されているのは自由度が低いからといえます。

国税庁:貸家建付地の評価

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4614.htm

 

貸家の相続税

貸家とは、家屋を相続した相続人自身が使用せず、第三者に貸している家屋のことです。この場合も、相続税の課税対象となり評価の方法が決まっているのです。貸家の評価方法は下記の式で計算します。

貸家の評価額=自用家屋の評価額-自用家屋の評価額×借家権割合×賃貸割合

貸家も、貸家建付地同様に自用家屋の評価額が基になるのです。借家権割合や賃貸割合については、貸家建付地と同様の方法で確認し算出します。貸家についても、入居者が借家権を持っていますので、所有者であっても自由に家屋を解体したり、リフォームしたりすることができないのです。

つまり、自由度が自用家屋に比べて低いので、相続税評価額も低くなるように設定されています。

 

小規模住宅用地の特例について

不動産相続で取得した土地の中には、小規模宅地等の特例に該当するものがあります。小規模宅地等の特例とは、相続開始の直前において被相続人また被相続人と生計をともにしていた親族に適用される土地の減額措置です。対象となるのは、以下の3項目に該当する土地です。

  1. 賃貸事業以外の事業用宅地
  2. 貸付事業用の宅地
  3. 被相続人等の居住用の宅地

上記の3項目の土地で、一定の要件を満たせば特例を受けることができます。

土地の利用区分 限度面積 減額される割合
貸付事業以外の事業用宅地 400㎡ 80%
貸付事業用の宅地 200~400㎡ 50~80%
被相続人等の居住用宅地 330㎡ 80%

国税庁:相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm

 

相続登記時の登録免許税

相続登記時の登録免許税

不動産相続が終了すれば相続登記を行います。相続登記しなくても罰則や罰金があるわけではありません。

しかし、不動産の権利関係を明確にしておく必要はあるのです。相続した不動産の所有者であることを内外に示しておくためにも相続登記を済ませる方が良いでしょう。相続登記を澄まさなければ、相続した不動産を売却する場合などで弊害が生じます。

 

登録免許税とは

不動産の情報は全て法務局で登録されています。法務局は、どこの土地をどれだけの広さで誰が所有しているかという情報を集約しているのです。

不動産を相続することによってこのだれが所有しているかという情報が変わります。この変更手続きが相続登記になります。そして、手続きにかかる費用が登録免許税となるのです。

 

登録免許税の計算式

登録免許税は、下記の式によって計算します。

登録免許税=固定資産評価額×0.4%

固定資産評価額が1億円の土地であれば、登録免許税は40万円となり、1000万円の評価であれば4万円となります。

また、固定資産評価額は、相続税申告時に提出する固定資産評価証明書で確認できますので、控えをとっておくとよいでしょう。毎年送られてくる、固定資産税の課税明細書にも記載されています。

 

固定資産税と都市計画税

固定資産税と都市計画税

相続した不動産を所有していると、固定資産税や都市計画税が課税されます。固定資産税は、毎年1月1日時点で不動産を所有している人や企業などが納税する税金です。

また、相続した不動産が都市計画法による市街化区域内に所在している場合は、都市計画税が課税されます。

 

固定資産税・都市計画税とは

固定資産税とは家や土地などの不動産に対して課税される税金で、市区町村が徴収する地方税です。固定資産税を決める基になるのは、固定資産税評価額で課税標準額とも呼ばれています。

固定資産評価額とは、不動産の価値について自治体ごとの基準に基づいて確認評価した値ですが、一定の基準は決まっています。固定資産税額は以下の計算式で算出できます。

固定資産税額=固定資産評価額×税率

この計算式で、問題なのが税率です。地方税ですので、各自治体が自由に税率を決められることになっています。基本的には標準税率である1.4%を採用している自治体が多いのですが、中には標準税率を大幅に超える自治体がありますので、不動産の取得の前には確認すると良いでしょう。

固定資産税評価額の算出も土地と建物に分かれていて、それぞれ算出方法が異なります。その計算式は複雑で、あらゆる要素を加味して算出しますので、税金のプロフェッショナルでなければ難しいでしょう。

ただし、固定資産税について疑問に思うことを、所在地の市区町村に問い合わせすることは可能です。

また、固定資産税評価額は、自分で計算することも不可能ではありません。ただし、相当の労力と時間を要することと、あまり意味がないことを認識しておきましょう。

都市計画税も各市区町村が貸している地方税のです。その算出方法は、固定資産税と同じく固定資産評価額を基にしています。

都市計画税の税額=固定資産税評価額×税率

都市計画税の税率は、固定資産税と同様に各市区町村によって異なりますが、上限が0.3%と定められておりこれより高くなることはないのです。

 

固定資産税の確認方法

固定資産税の税額を確認する方法として、毎年送られてくる固定資産税の納税通知書が最適です。固定資産税評価額を確認するのであれば、通知書の中にある課税明細書で簡単に確認できます。

また、不動産相続において固定資産税や固定資産税評価額を確認するのであれば、固定資産税評価証明書を取得すると良いでしょう。不動産が所在する市区町村で相続人であることが証明できれば取得することは可能です。

 

譲渡所得にかかる所得税と住民税

譲渡所得にかかる所得税と住民税

どのような方法であっても所得を得れば、原則として所得税が課税されます。相続で取得した不動産を売却した場合も、譲渡所得に課税される仕組みとなっているのです。

また、所得税を納めた場合は、住民税も課税されることになります。基本的に所得税と住民税はセットとして捉えておくと良いでしょう。

 

相続した不動産を売却した場合の所得税

相続した不動産を売却した場合、売却益が譲渡所得となり課税対象になります。つまり、売却益と譲渡所得の金額は同じになりますが、売却益とは利益のことを指しますので、売却した価格ではありません。売却により利益が出れば、所得税の課税対象となり、利益が出なければ課税されません。

 

譲渡所得の計算方法

譲渡所得は以下の計算式で算出します。

譲渡所得(売却益)=売却価格-取得費-譲渡費用

この計算式の中で取得費とは、被相続人が不動産を購入した時の価格と取得するのにかかった費用です。また、譲渡費用とは売却した時にかかった費用のことを指します。

不動産の譲渡所得において、取得費も土地と建物に分かれて計算することになっています。土地は、購入した時の価格がそのまま取得費になるのです。

しかし、建物は経年とともに劣化しますので、建物の取得費については購入価格から減価償却費相当額を差し引く必要があります。

 

賃貸不動産継承による所得税と住民税

賃貸不動産継承による所得税と住民税

賃貸物件を相続し、賃貸経営を承継した場合において、課せられる税金は所得税と住民税になります。この場合の収入は主に家賃収入であり、不動産所得を得るので毎年確定申告しなければなりません。

確定申告後は、所得税を納税しますが、6月から7月にかけて住民税の納付書が届きますので、これも納めなければなりません。

 

賃貸物件を相続し賃貸経営を承継した場合の所得税

賃貸物件を相続し、賃貸経営で得た家賃収入などは不動産所得に分類されます。相続した不動産の不動産所得とは、その土地や建物などを貸し付けて得た収入から、賃貸経営に関わる必要経費を差し引いたものです。不動産所得に課税される税金が所得税となります。

 

賃貸経営における所得税の計算方法

賃貸経営における所得税を計算するのには、まず不動産所得を算出する必要があるのです。不動産所得の計算式は以下のようになります。

不動産所得=家賃などの収入-経費

家賃以外で、家賃などの収入に含まれるものを以下に記します。

  • 敷金・礼金・保証金の中から返還しないもの
  • 賃貸契約更新料
  • 管理費
  • 駐車場代
  • その他雑収入

不動産所得の経費とされるものは、以下のようになります。

  • 修繕費・リフォーム費用
  • 管理委託費
  • 減価償却費
  • 営業費用(広告など)
  • 不動産投資ローン金利
  • 不動産取得税
  • 固定資産税

収入から経費を差し引いたものが不動産所得となり所得税の課税対象となります。所得税は、所得金額に応じて税率が異なり、所得が多ければ多いほど納める税金も多くなる仕組みになっているのです。税率と控除額は以下のようになります。

課税される不動産所得 税率 控除額
1,000円から1,949,000円まで 5% 0円
1,950,000円から3,299,000円まで 10% 97,500円
3,300,000円から6,949,000円まで 20% 427,000円
6,950,000円から8,999,000円まで 23% 636,000円
9,000,000円から17,999,000円まで 33% 1,536,000円
18,000,000円から39,999,000円まで 40% 2,796,000円
40,000,000円以上 45% 4,796,000円

例えば不動産所得が800万円とすると税率は23%となり、控除額は63万6000円ですので、所得税額は120万4000円となります。

住民税については、自治体によって差がありますが、税率は概ね10%の税率と認識しておいて問題ないでしょう。

所得税は、所得金額応じて負担が増える累進税率が用いられています。不動産所得も同様です。ただし、不動産所得については、損益通算や繰越控除などが認められていますので、それによって節税効果も期待できます。

国税庁:所得税の税率

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm

 

不動産取得税

不動産取得税

不動産取得税は、不動産を取得した際に払う税金です。地方自治体が課税する地方税であり、固定資産税と違って取得時に1度だけ納税します。

不動産を取得後60日以内に、管轄の都道府県税事務所などに不動産取得申告書を提出する必要があるのです。

不動産取得税の税率は、固定資産税評価額の4%です。土地及び家屋については、平成15年4月1日から令和3年3月31日までに取得したものは、3%に軽減されています。

不動産相続においては、不動産取得税は課税されません。これは、被相続人がすでに不動産取得税を納めているからです。不動産取得税は、取得時に1度だけ納める税金ですので、相続や遺贈による不動産の取得であれば、課税されることはありません。

ただし、相続時精算課税制度を使って不動産の贈与を受けた場合は、不動産取得税が課税されますのでご注意ください。

 

不動産相続に関わる複雑な申告はプロに任せることも!

不動産相続に関わる複雑な申告はプロに任せることも!

ここまで、不動産相続に関係する税金について解説してきました。不動産相続時に課税される税金としては、相続税申告時に納める相続税と相続登記時に納税する登録免許税です。

固定資産税や都市計画税は、相続した不動産を所持している限り課税されますが、不動産を手放せば課税されることはなくなります。

また、相続した不動産を売却して譲渡所得を得たり、賃貸経営を承継したりすれば、所得に応じて所得税や住民税を納めることになります。

このように不動産相続においても、さまざまな税金が課せられているのです。税の素人では混乱する人もいるかもしれません。そこで、肝心なのは定められた税金は納めなければ、督促が届き延滞金や追徴課税が課せられる可能性もあります。

相続に関する税のことでわからないことがあれば、この「相続のすゝめ」を活用してください。税に課関する悩みも解消するかもしれません。

【記事監修】高野友樹

株式会社アーキバンク取締役COO/不動産コンサルティングマスター/宅地建物取引士

不動産会社にて2,000件以上の賃貸売買仲介に関わり、6,000戸の収益物件の管理業務を経験した後、年間で36.9万平米を超える賃貸契約面積を獲得している国内有数の不動産ファンドであるGLR(ジーエルアールインベストメント株式会社)にてAM事業部のマネージャーとして従事。

大規模物件の売買仲介を中心に、投資家へのコンサルティング業務を行い、100億円規模の物件の取引に携わる。2019年より株式会社アーキバンクに参画し、不動産事業部統括責任者として取締役に就任。

不動産投資家の所有物件の買い替えによる資産整理や遺産相続など、その経験と知識を生かしたコンサルティング業務を行っている。

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