不動産相続における相続税とは!相続税の基本から徹底解説

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「相続する財産は不動産が大半だけど相続税はどれくらいかかるのだろう」と不安に思われている人も多いのではないでしょうか。不動産は、現金に比べて相続税が分かり難い財産ですので、不安に思われるのは当然のことです。

今回は、不動産の相続税について、相続税の基本から不動産の相続税評価や相続税を納付するまでの流れなどを解説します。

この記事を読んでいただければ、スムーズな不動産相続税納付の一助となるでしょう。

 

相続税とは

相続税とは

相続税とは、被相続人の相続財産を相続で受け継いだ場合にかかる税金です。そもそも「相続税をなぜ納めなければならないのか」と思われている人も多いのではないでしょうか。

相続税には富の再分配で、資産格差をなくそうという意味合いがあります。これは、特定の人物や家族のみに財産が集中するのを防がないと、貧富の差が激しいという問題を解決できないという考え方から生まれています。

また、相続税は所得還元という意味合いも含まれているのです。所得還元とは、被相続人が納めるべきだった所得税の代わりに、財産を受け継いだ相続人に相続税として税金を納めてもらうという考え方になります。

いずれにしても、一定以上の価額がある遺産を受け継いだ場合は、相続税を納めなければならないのです。

不動産の相続においても上記の考え方からすると、先祖代々土地を受け継いでいるというのは土地の独占に相当するかもしれません。不動産も相続税が課せられる代表的な財産なのです。

 

遺産を受け継いだ人に課税される税金

相続税は亡くなった人の財産を受け継いだ人に課税される税金です。受け継いだ人とは、被相続人の法定相続人だけではなく、友人や知人は当然ですが、寄付先なども対象となる場合があります。

相続税が課税される人は、相続人と受遺者に分かれるのです。相続人とは法定相続人や相続権がある親族を指します。受遺者とは、法定相続人としての相続権のない親族や血族ではない人、寄付先の団体のことを指すのです。

また、相続や遺贈などにより財産を相続した人の中で、配偶者と1親等以外の相続人及び受遺者は相続税が2割加算されます。

国税庁:相続税額の2割加算

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4157.htm

 

基礎控除を超えると課税される

相続税は先にも述べましたが富の再分配という基本的な考え方があります。また、貧富の差を緩和させるという経済政策も含まれているのです。

それゆえに、たくさんの遺産を相続した人ほどたくさんの相続税を納税する仕組みとなっています。

しかし、遺産を相続した人が全て相続税を納めるというわけではありません。基礎控除があって、遺産の総額が基礎控除を上回った場合にのみ、申告と納税の義務が生じるのです。

基礎控除は、法定相続人の数によって変動し、以下の式によって算出されます。

基礎控除=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

基礎控除は遺産総額全体から控除されるものですので、不動産相続においても控除される金額となるのです。

平成30年度の国税庁相続税申告状況によると、遺産相続において、相続税の課税対象となったのは全体の6.7%となっています。

国税庁: 平成30年分の相続税の申告状況について

https://www.nta.go.jp/about/organization/takamatsu/release/hodo/hodo_r01/souzoku_shinkoku/index.htm

 

現預金以外の相続財産は評価で価額を決定

相続財産がすべて現預金であれば、単純に財産の価値を計算できますが、相続財産の中には不動産を始め価値が分かりにくいものも含まれています。

その場合、財産の価値を評価で決める仕組みとなっているのです。不動産には不動産の評価方法があり、株式や投資信託についてもそれぞれ評価方法が定められています。

また、その他にも多種多様な課税対象の財産がありますが、その全てについて評価方法が定まっているのです。

相続財産がたくさんあるのであれば、相続税の計算や申告が複雑になりますので、最初からプロフェッショナルに依頼することも視野に入れておきましょう。

 

相続税の課税対象財産と非課税財産

相続税の課税対象財産と非課税財産

相続税の課税対象となる財産は、基本的に価値のあるもの全てと認識しておくと良いでしょう。

金融商品や不動産などはその筆頭といえます。他には、絵画や骨董品なども対象となりますし、目に見えないものでは営業権や特許権なども相続税の対象となるのです。

相続税の課税対象とならない財産は、被相続人の債務や借金などのマイナスの財産、葬式費用の一部などとなります。また、国や地方公共団体などに寄付した、相続財産についても相続税は課税されません。

 

不動産を相続した場合の相続税評価方法

不動産を相続した場合の相続税評価方法

不動産は、現預金のように見ただけで価値がわかる相続財産ではありません。先ほども述べたように、価値がわからない財産については評価方法が定められています。不動産の評価方法は、土地と建物とに分かれていてそれぞれ評価方法が違うのです。

また、土地も建物も相続人や家族が使用する場合と、貸し出す場合とで相続税の計算方法は違ってきます。不動産の相続税評価は、難解と言っても過言ではありません。ここでは、その難解な不動産の相続税の計算について詳細に解説します。

 

自用地の相続税評価

土地については、相続人が使用する場合と貸し出す場合に分かれています。自用地とは、相続人が使用する場合の土地をさすのです。

自用地の相続税評価方法は、路線価方式と倍率方式があります。路線価の定まっている地域では路線価方式を採用し、路線価の定まっていない地域では倍率方式を採用することになっているのです。

また、自用地の相続税評価額は、貸し出している土地の評価額の基にもなっています。

 

路線価方式

路線価方式とは、国税庁が定める路線価を用いて自用地の相続税評価を行う方式です。路線価とは、道路に面する標準的な1平方メートルあたりの土地の価値を定めたもので、国税庁が年に一度決定します。

国税庁のサイトでいつでも簡単に確認することが可能です。路線価方式による自用地の価額は以下の式で計算します。

自用地の価額=正面路線価×土地面積(㎡)×奥行価格補正率

この計算式の中で土地面積とは、登記上の土地面積ではなく実際の土地の面積になります。また、奥行価格補正率表も、国税庁のホームページで確認可能です。

 

倍率方式

倍率方式とは、固定資産税評価額に一定の倍率をかけて相続税評価する方法です。倍率は国税庁ホームページの路線価図・評価倍率で路線価と同様に確認できます。倍率方式による自用地の価額は以下の式で計算します。

自用地の価額=固定資産税評価額×評価倍率

倍率方式はほとんどの場合、人口の少ない地方や田畑、山林、原野などに適用される方式となっています。

 

自用建物の相続税評価

相続人自身が使用する建物は自用建物です。自用建物の相続税評価額は固定資産税評価額と同額になります。建物の場合も、土地と同様に貸し出している場合は、自用建物の評価額を基に算出する仕組みとなっているのです。

 

貸家建付地の相続税評価

相続した土地に、マンションにアパートなどの賃貸建物が建っている土地を貸家建付地といいます。貸家建付地は、自用地に比べて相続税の評価額が低くなる仕組みとなっています。理由は、自用地に比べて、貸家建付地は自由度が低いとみなされているからです。

仮に、賃貸マンションが建っている貸家建付地を売却しようとすれば、賃貸マンションに住んでいる住民が立ち退かなければなりません。賃貸契約を結んでいる住民は、借家権や借地権を持っていますので、合意がなければ立ち退くことはありません。その際には、立ち退き料を支払うだけでなく、新しい入所先を見つける必要性もあるのです。

このように、所有者が自由に使用することができない貸家建付地に関しては、税制上の優遇措置を取らざるをえないので、自用地に比べて相続税評価が低くなっています。貸家建付地の相続税評価の計算式は以下のようになります。

貸家建付地の価額=自用地としての価額-自用地としての価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合

上記の計算式の中で、自用地としての価格は前途した計算式で算出できます。借地権割合や借家権割合は、国税庁ホームページの路線価図・評価倍率表で確認可能です。また、賃貸割合は、以下の計算式で算出します。

賃貸割合=課税時期において賃貸されている各独立部分の床面積の合計÷当該家屋の各独立部分の床面積の合計

このように、貸家建付地の相続税評価額を算出するのには、自用地としての価格を算出し、それに借地権割合、借家権割合、賃貸割合を掛け合わせなければなりません。

かなり複雑な計算なので、誤りがないように予め準備をしたり、相続のプロに依頼や相談したりするなどの下準備も必要となるでしょう。

 

貸家の相続税評価

貸家建付地と同じく、貸家にも相続税評価方法が定まっています。貸家の場合、基になるのは自用建物の価額である固定資産税評価額となります。貸家の相続税評価額は以下の式によって算出します。

貸家の価格=自用建物の価額-自用建物の価額×借家権割合×賃貸割合

この計算式の中にある借家権割合とは、貸家建付地の借家権割合と同じになります。また賃貸割合に関しても、貸家建付地と同じ計算式で算出される仕組みです。

 

小規模宅地等の特例とは

小規模宅地等の特例とは、貸家建付地や貸家の軽減処置と一線を画すものです。

小規模宅地等の特例には施行された背景があります。被相続人が住んでいた土地や事業を営んでいた土地に対して、相続税が満額かかることで、引き継いだ者が相続税によって、住む土地や事業を失うことを防ぐためです。その特例内容とは以下のようになります。

居住用・事業用で一定の要件を満たすもの          は、相続税評価額が80%減額されます。また、貸付用で一定の要件を満たすものに関しては、相続税評価額が50%減額となるのです。

路線価図・評価倍率表

https://www.rosenka.nta.go.jp/

奥行価格補正率表

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/02/07.htm

 

不動産を相続した場合の相続税納税までの流れ

不動産を相続した場合の相続税納税までの流れ

不動産の相続税評価が算出できれば、相続開始から相続税納税までの流れを理解しておくとよいでしょう。流れを把握しておけば、スムーズに申告や納税ができるのではないでしょうか。ここでは、不動産を相続開始から、相続税納税までの流れを解説します。

相続税の申告をするためにはまず遺産総額を算出する必要があります。この場合の遺産とは、お金に換金ができる価値のあるものを指し、その全てが、相続税の課税対象となるのです。

不動産だけを相続するケースは稀となりますので、不動産や金融資産などを含め全ての遺産を相続税の規定に従って評価し価額を算出します。その価額の総合計が遺産総額になるのです。

 

相続人を確認し基礎控除を算出

次に、被相続人の出生から死亡までの戸籍を確認し法定相続人を確定します。この際に取得する被相続人の戸籍関係の書類は、相続税の申告時に提出する書類となるのです。

相続税の規定に従って、法定相続人を確認できたら基礎控除を算出します。基礎控除は以下の式によって計算します。

基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人の数

法定相続人の範囲は以下の国税庁サイトで確認できます。

相続人の範囲と法定相続分

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4132.htm

 

申告の有無を確認

遺産総額と基礎控除の額が出揃いましたら、相続税を申告する必要があるかどうかを判断します。判断基準は、遺産総額が基礎控除よりも多い場合は、申告し納税する義務が生じるのです。少ない場合は、申告納税の義務は生じません。

 

遺産分割協議で合意を得て遺産分割協議書を作成

次に、遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成します。相続人が1人の場合は、原則として必要ありません。しかし、複数の相続人がいる場合は必要な書類となりますので、遺産分割協議を円滑に進行し、遺産分割を決定しましょう。

遺産分割協議では、相続人全員の合意が必要となります。合意できなければ、家庭裁判所での調停や裁判所での法廷闘争となりますので、円満に話し合って全員が合意することが望ましいでしょう。

 

負の遺産が多ければ相続放棄も

少し遡りますが、遺産総額を算出した際に、マイナスの遺産がプラスの遺産を越えている場合は、相続放棄という手段があります。相続放棄すれば、マイナスの遺産もプラスの遺産を相続することはできません。

しかし、相続人が債務を負う必要がありませんので、相続人の返済義務も生じないのです。

 

納付期限を確認

相続税の申告納付期限は、相続開始から10ヶ月後となります。申告納税時に注意しなければならないのが、相続税の納付方法です。相続税は、原則として現金一括払となっています。不動産や株式などの高額な遺産がたくさんあって、現預金が少ない場合は特に注意しましょう。早めに対策しておかないと、10ヶ月後の納付期限に間に合わなくなる可能性があるのです。もちろん、遺産分割協議が長引いても、同様となりますので留意しておく必要があります。

 

相続税申告に必要な書類を揃える

相続税申告に必要な書類は多岐にわたります。基本となる書類の他に、遺産の種類によって必要となる書類が異なるのです。ここでは、基本となる書類と遺産が現預金と不動産であった場合に必要な書類を述べます。

【基本となる書類】

被相続人に関する書類

  • 被相続人が生まれてから死亡するまでの戸籍関係書類
    (戸籍全部事項証明書・除籍全部事項証明書・改製原戸籍・戸籍の附票の写し)
  • 被相続人の住民票の除票と戸籍の附票
  • 死亡診断書

基本となる相続人関する書類

  • 全員の戸籍全部事項証明書
  • 全員の住民票
  • 全員の印鑑証明書と実印
  • マイナンバーを確認できる書類
  • 身元を確認できる書類

申告に関する書類

  • 相続税申告書
  • 遺産分割協議書

【遺産の種類によって必要な書類】

現預金に関する書類

  • 預金残高証明書
  • 被相続人とその家族全員の預金通帳のコピー

不動産に関する書類

  • 不動産全部事項証明書
  • 間取り図
  • 地積測量図
  • 実測図
  • 固定資産税評価証明書

ここでは、遺産が現預金と不動産であった場合に必要な書類を記しています。その他の書類の詳細については、当サイトの「遺産分割協議書は不動産相続に必須?必要な書類や書き方を簡単解説」を御覧ください。

http://sozoku-susume.com/2020/08/26/consultation-document/

 

相続税申告書を作成し申告する

全ての書類が揃いましたら、相続税申告書を記入して完成です。相続税の申告書は、1~15表までありますので該当する表は必ず記載しましょう。

下記のURLは、国税庁の相続税の申告書の記載例ですので、記載する際の参考になります。

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku/shikata-sozoku2014/pdf/04.pdf

 

相続税の納付期限までにスムーズな申告を

相続税の納付期限までにスムーズな申告を

ここまで、不動産相続における相続税について、基本である相続税から不動産の相続税評価方法や相続税申告までの流れなどを解説しました。

自身で、相続税の申告や納税をすることは不可能ではありませんが、不動産を含む相続税申告は、多大な時間と労力を費やすことも分かったのではないでしょうか。

また、相続税には納付期限があります。納付期限を守らなければ、さらなる時間と労力が必要になるのです。

相続のことは、相続のプロフェッショナルに依頼することも視野に入れる必要もあります。また、相続の専門サイトであるこの「相続のすゝめ」もご活用ください。相続に関する悩みが解決する記事を多数掲載しています。

参考:

国税庁:財産を相続したとき

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/05_4.htm

 

【記事監修】高野友樹

株式会社アーキバンク取締役COO/不動産コンサルティングマスター/宅地建物取引士

不動産会社にて2,000件以上の賃貸売買仲介に関わり、6,000戸の収益物件の管理業務を経験した後、年間で36.9万平米を超える賃貸契約面積を獲得している国内有数の不動産ファンドであるGLR(ジーエルアールインベストメント株式会社)にてAM事業部のマネージャーとして従事。

大規模物件の売買仲介を中心に、投資家へのコンサルティング業務を行い、100億円規模の物件の取引に携わる。2019年より株式会社アーキバンクに参画し、不動産事業部統括責任者として取締役に就任。

不動産投資家の所有物件の買い替えによる資産整理や遺産相続など、その経験と知識を生かしたコンサルティング業務を行っている。

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