土地相続に関連する期限とは?期限を過ぎるとどうなるの?

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土地相続に関連する手続きには、原則として期限があります。期限を守らなければ痛いペナルティが課せられる場合もあるのです。そのようなことについて知っている人は少ないのではないでしょうか。

今回は、土地相続に関する手続きの種類と期限を紹介し、期限を守らなければどうなるのかを解説します。この記事を読めば、土地相続に関する期限を知ることができて、適正な相続手続きができる一助になるかもしれません。

 

相続に関連する8つの期限

相続に関連する8つの期限

相続の手続きには、期限のあるものと期限のないものがあります。ここでは、一般的な相続に適用される期限を説明し、その中から、土地相続に関わるものもピックアップします。土地相続に関する期限の概要を掴んでいれば、手続きを進めるのに役立つかもしれません。

 

相続開始日とは

相続開始日とは、被相続人の死亡日のことで、相続を開始する日をさします。親族や縁の深い人などにとっては悲しいことですが、相続に関する期限の起点に使わるのが相続開始日となっています。土地相続においても同様です。ちなみに法的に死亡したと扱われる場合には以下の3つがあります。

  • 自然死亡:医学的な死亡のことで、老衰以外の外傷や病気などの死因も含まれる。
  • 擬制死亡:法的に死亡したとみなされるもので、生死が7年以上明らかでないなどのケースに該当する場合。
  • 認定死亡:事故や災害などで死亡したとみなされる蓋然性が極めて高いもので、死体が確認できなくても取調官公署が死亡を認定したもの。

上記に当てはまって、死亡が認定された日や死亡したとみなされた日が、相続開始日とされます。

 

一般的な相続には8つの期限がある

土地相続に限らず、相続の手続きの多くは期限が設けられています。期限の起点となるのは相続開始日です。以下の表にまとめていますので参考にしてください。

期限(相続開始日から) 手続き内容
相続開始後できるだけ早く 遺言書の検認(遺言公正証書は不要)
3ヶ月以内 相続放棄・限定承認の申述
4ヶ月以内 被相続人の準確定申告
10ヶ月以内 相続税の申告・納税
1年以内 遺留分侵害請求権の行使
2年以内 埋葬料・葬祭費の請求
3年以内 生命保険の請求
5年10ヶ月以内 相続税の還付請求
期限のない手続き 遺産分割協議
預貯金等の解約や名義変更
相続登記

 

不動産相続に関連するのは6つの期限

土地相続の手続きには、上記の表の中から6つの期限のあるものと2つの期限のないものが関連しています。その中で、遺言書の検認は早急にするほうがよいのですが、期限が明確に決まっているわけではありません。しかし、検認しなければ相続できないので、期限があるものとして扱っています。

期限のある手続き

  1. 遺言書の検認
  2. 相続放棄
  3. 準確定申告
  4. 相続税の申告・納税
  5. 遺留分侵害請求
  6. 相続税の還付請求

期限のない手続

  1. 遺産分割協議
  2. 相続登記

以降、この8つの項目について解説を進めていきます。

 

遺言書は相続開始後すぐに

相続の手続きの始まりは、遺言書の確認です。理由は、遺言書があるのとないのでは、相続に手続き内容が異なるからです。もちろん、遺言書の内容はもっとも尊重されるべきものでありますので、相続開始後はすぐに、遺言書の有無を確認しましょう。被相続人が弁護士に預けていたり、金庫に保管したりしていて、相続人が遺言書の存在を知らない場合もあります。

 

遺言書の種類

遺言書には3つの種類があって、遺言書によっては、家庭裁判所での検認手続が不要なものもあります。

  • 自筆証書遺言:被相続人自身が認める遺言書。無料でいつでも書けることと、遺言書を書いた事実を誰にも伝える必要がありません。ただし、専門家のチェックを受けていないと不備によって無効となる可能性もあります。相続人は、家庭裁判所で検認手続が必要です。
  • 公正証書遺言:2人の証人が立ち会って、公証人が被相続人から遺言内容を聞き取り作成します。最も確実に遺言内容を実現できて、保管も任せることができます。検認手続きは必要ありません。
  • 秘密証書遺言:被相続人が自分で用意した遺言書を2人の証人と同行し公証役場に持ち込み、遺言書が存在を保証してもらいます。遺言の内容を公証人や証人に公開する必要もありませんが、不備があれば効力を失う恐れがありますので、注意が必要です。相続人は、家庭裁判所で検認の手続きが必要となります。

 

開封せずに裁判所へ

検認手続が必要な遺言書がある場合は、迅速に家庭裁判所に持ち込み、検認の手続きを済ませましょう。その際に重要なのは、絶対に開封しないことです。開封すれば、遺言書の偽造や変造を疑われることになり、遺産分割でのトラブルにもつながります。なお、遺言書の偽造や破棄、隠蔽を行なった相続人は、遺産を相続できなくなる可能性が高くなります。

 

相続放棄の期限は3ヶ月

相続放棄の期限は3ヶ月

被相続人の遺産には、相続人にとってプラスとなる遺産もあれば、債務などマイナスの遺産もあります。被相続人の遺産を調べて、負の遺産が多ければ、遺産放棄する方法もあります。

 

相続放棄とは

相続放棄とは、被相続人の遺産を全て受け取らないための手続きです。負債だけを相続放棄するようなことができず、一切の遺産を放棄することになります。相続放棄には期限があります。原則として、相続開始日から3ヶ月以内に手続きしなければ、単純承認とみなされて、マイナスの遺産がプラスの遺産を上回っていても、相続しなければならず、被相続人の債務を相続することになるのです。

 

相続放棄の手続き方法

相続放棄は、被相続人の住所を管轄する家庭裁判所に申述書などの書類を提出して手続きすることになっています。その際に、必要な書類は以下のようになります

  • 相続放棄の申述書
  • 被相続人の死亡の記載のある戸籍関係の書類
  • 被相続人の住民票除票または戸籍の附票
  • 相続放棄する人の戸籍全部事項証明書

 

期間延長も可能

被相続人の債務があって、その金額を調べるのに時間がかかる場合があるかもしれません。また、土地などが各地に点在している場合は、遺産総額の実態調査に時間がかかることは否めません。このような状況である場合は、相続放棄の期限の伸長を申立することが可能です。ただし、その場合も相続放棄の期限である3ヶ月以内に、相続の承認又は放棄の期間の伸長の申立を行う必要があります。

 

延長の手続き方法

相続人が単純承認や相続放棄などの選択をするまでの3ヶ月間を熟慮期間といいます。熟慮期間の伸長は、以下の書類を家庭裁判所に提出して手続きを行います。

  • 相続の承認又は放棄の期間の伸長の申立書
  • 被相続人の死亡記載がある戸籍全部事項証明書
  • 被相続人の住民票除票または戸籍附票
  • 伸長を申し立てる相続人の戸籍全部事項証明書

 

期限をすぎるとどうなる?

相続放棄の手続きをせず、熟慮期間の伸長の手続きもしなければ、法律上は単純承認したことになります。単純承認とは、プラスの財産もマイナスの財産も全て相続することです。被相続人の遺産で負債が多くても、単純承認と認められると全ての債務も相続し、被相続人の代わりに債務者に弁済しなければなりません。

 

被相続人の準確定申告も期限あり

被相続人の準確定申告も期限あり

被相続人が確定申告をしなければならない収入があった場合は、たとえ亡くなったとしても確定申告をしなければなりません。その場合、相続人が代わって申告し納税することになります。

 

準確定申告とは

被相続人の確定申告を、相続人が代わって行うことを準確定申告といいます。対象は、亡くなった年の1月1日から亡くなった日までに一定の所得があった場合です。必要な書類は以下の6点となります。

  • 確定申告書
  • 被相続人の源泉徴収票
  • 被相続人の控除証明書
  • 所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表
  • 被相続人の医療費の領収書
  • 委任状

被相続人に事業所得や不動産所得がある場合は、事業所得の申告を行う必要があり青色申告決算書や収支報告書などの提出も必要となります。

 

準確定申告の期限は4ヶ月で延長なし

準確定申告の期限は、相続開始日から4ヶ月と定まっていて、被相続人が亡くなった時の住所地を所管する税務署で行います。通常の確定申告とは期限が異なりますので注意してください。また、期限の延長などの制度は設けられていませんので、期限内に手続きしましょう。

 

期限をすぎるとどうなる?

準確定申告後の所得税納税期限も申告と同様に4ヶ月となっていますので、期限を守って納税しましょう。準確定申告の提出が遅れた場合や放置していた場合は無申告加算税が課税されます。また、所得税の納税が遅れた場合は延滞税が加算されますので注意が必要です。

 

相続税は基礎控除より遺産が多い場合に発生

相続税は基礎控除より遺産が多い場合に発生

土地は高価であり、建物と違って資産価値が落ちにくいので、相続税を申告し納税する可能性が高い遺産です。相続税は、遺産総額が基礎控除を上回らなければ、申告や納税の義務は生じません。しかし、基礎控除を上回った遺産がある場合は、申告や納税の義務が生じ、期限も設けられているのです。

 

相続税の仕組み

相続税は、遺産が基礎控除を上回った場合に申告し納税しなければなりません。基礎控除は、以下の計算式で算出します。

基礎控除=3,000万円+法定相続人の数×600万円

相続税において、遺産は評価により価額が定められています。その価額の合計が遺産総額となるのです。現預金などは簡単明瞭で、1億円であれば1億円と評価されます。土地の評価は、路線価方式や倍率方式で価額を算出します。路線価や倍率は、国税庁が定めて公表していますので、下記のホームページで確認してください。

国税庁:財産評価基準書路線価図・評価倍率表

https://www.rosenka.nta.go.jp/

相続税は、土地を含めた全ての遺産の価額の合計から、基礎控除を差し引いた金額に対して課税される仕組みで、税率なども詳細に決まっています。土地の相続税については、下記の記事で詳細に解説していますので、是非ご参考ください。

土地相続の相続税は地目によって違いがある!その評価方法とは?

http://sozoku-susume.com/2020/12/06/what-is-the-evaluation-method/

 

申告・納税は10ヶ月以内

相続税の申告・納税の期限は、相続開始日から10ヶ月以内です。被相続人が亡くなった時点の住所地を所轄する税務署で手続きすることになっています。土地の相続税の手続きは複雑で、必要な書類も多岐にわたっていますので、下記の記事を参考にして、期限内に手続きするようにしましょう。

土地相続に必要な書類とは?相続や登記で何を揃えるべきか解説

http://sozoku-susume.com/2020/12/02/required-documents/

 

期限を過ぎるとどうなる?

相続税の申告期限を過ぎると課されるペナルティは、無申告加算税となります。無申告加算税は、税額に対して50万円未満は15%、50万円を超える場合は20%を乗じた金額が課さられることになっています。

相続税の納付期限を過ぎた場合は、延滞税が加算されます。延滞税は、相続税の税額に対して、年率14.6%(最大)が課されます。あってはならないことですが、相続申告の隠蔽や偽装がある場合は、重換算税が適用される可能性があります。その場合は、相続税額の35%~40%が加算されることになりますので、正確に申告し期限までに納税しましょう。

 

遺留分侵害額請求権にも期限がある

遺留分侵害額請求権にも期限がある

遺留分は、法定相続人のなかで、配偶者、直系尊属、直系卑属に認められている相続の権利です。最低限引き継ぐことができる遺産の割合のことでもありますが、兄弟姉妹や従兄弟などには認められていません。

 

遺留分侵害額請求権とは

遺留分侵害額請求権とは、不平等な遺言や生前贈与などによって、遺留分を侵害された法定相続人が、遺留分の取り戻しを請求できる権利です。遺留分侵害額請求権の期限は、相続開始日や遺留分が侵害されたことを知った時から1年間です。

 

遺留分侵害額請求の方法

遺留分侵害請求の方法は、遺留分を侵害した他の相続人などに侵害請求するだけです。裁判所に訴える必要はありません。口頭で請求するだけでも効力が生じますが、請求した証拠が残らないため内容証明郵便などで請求するとよいでしょう。

 

期限をすぎるとどうなる?

遺留分侵害請求権の期限をすぎると権利を行使することができなくなります。権利の行使は、権利を有する相続人の意思ですので、行使しなければならない権利ではないのです。また、相続開始や遺留分の侵害に気づかなくても、10年経過すると遺留分侵害額請求権を行使できません。

遺留分については、下記の記事で詳細に解説してしますので、是非参考にしてください。

遺産相続の遺留分とは?遺言書と違っても遺産は受取れる

http://sozoku-susume.com/2020/06/27/relics-of-inheritance/

 

相続税の還付請求期限

相続税の還付請求期限

相続税を納めすぎた場合、還付請求にすることができて、納めすぎた分が返ってくる場合があります。相続税の評価方法は複雑で、相続開始日の時価で評価するため、遺産を多く申告する場合があります。特に、土地相続については、算出方法が難しいので還付の対象となるケースも珍しくないのです。

 

相続税の還付請求とは

相続税の還付請求は、納めすぎた相続税を更生の請求によって、還付してもらう手続きです。更生が認められた場合は、相続税が還付されます。

 

還付請求の期限

相続税の申告期限は、相続開始日から10ヶ月以内です。相続税の更正の請求は、相続税申告期限から5年間とされていますので、相続開始日からすると5年10ヶ月以内が相続税の還付手続き期限となります。

 

還付請求の方法

相続税の還付請求の方法は、相続税の申告をした税務署で更生の請求手続きを行います。土地相続に関する相続税の還付請求であれば、土地の相続税評価がポイントとなります。土地に詳しく、相続に強いプロフェッショナルを探すか、自身で相続税における土地評価の知識を深めることが重要です。

 

期限を過ぎるとどうなる?

相続税の還付請求は、期限を過ぎると相続税を納めすぎたとしても、還付を受けることができませんので注意が必要です。土地相続においては、土地そのものの相続税評価が難しいので、相続税の還付を受けられる可能性は少なくありません。すでに、相続税を納めていても疑問がある場合は、相続税の申告を見直すことによって、相続税の更正の請求ができる可能性があります。

 

土地相続に必要だが期限がないもの

土地相続に必要だが期限がないもの

土地相続の手続きにおいて、必要であるが期限が定まっておらず、手続きをしなくても罰則規定がないものがあります。それは、遺産分割協議と相続登記です。しかし、期限もなく罰則もないので手続きしないとなると大きなデメリットが生じます。他の相続人に迷惑をかけたり、自分自身の相続が進まなかったりするのです。

 

遺産分割協議

相続人が1人の場合や、遺言書通りの相続、法定通りの相続などの相続については、遺産分割協議は必要ではありません。しかし、複数の相続人がいる場合は遺産分割協議書がなければ、遺産分割ができない可能性があります。

被相続人の預金を引き出す際には、遺産分割協議書や遺言書が必要です。相続登記する際も、遺産分割協議書や遺言書は必要な書類となります。遺産分割協議を行なって、相続人全員の合意を得た遺産分割協議書を作成しておくと、後のトラブルも未然に防ぐ要素にもなります。

 

土地相続の相続登記

土地を相続し、相続登記をしなければ、土地を売却したり貸し出したりすることができません。また、土地を担保に融資を受けることも不可能となります。相続したのに相続登記していなければ、その土地の所有者と認められないからです。土地の相続登記は、面倒な手続きではありますが、相続登記していないデメリットを考えると相続後は速やかに手続きを済ませておくほうがよいでしょう。

 

期限を守って正しい土地相続を

期限を守って正しい土地相続を

相続の起点となっているものは、相続開始日ですが、何らかの事情で相続開始を知らなかった場合は、相続を知った日が起点となります。土地相続は、相続税や名義変更の手続などがとても複雑で、相続のプロフェッショナルでも間違えるケースもあるのです。特に、相続税の評価は税理士よって違いがあるケースも多くあります。

土地相続をプロに依頼したからといっても安心は禁物で、知識を得て依頼し、自らがチェックできるとより確かなものになります。その知識を集めるためには、当サイト「相続対策のすゝめ」を活用してください。土地相続に関する専門的な記事が網羅されていますので、知識を深めることができるでしょう。

【記事監修】高野友樹

株式会社アーキバンク取締役COO/不動産コンサルティングマスター/宅地建物取引士

不動産会社にて2,000件以上の賃貸売買仲介に関わり、6,000戸の収益物件の管理業務を経験した後、年間で36.9万平米を超える賃貸契約面積を獲得している国内有数の不動産ファンドであるGLR(ジーエルアールインベストメント株式会社)にてAM事業部のマネージャーとして従事。

大規模物件の売買仲介を中心に、投資家へのコンサルティング業務を行い、100億円規模の物件の取引に携わる。2019年より株式会社アーキバンクに参画し、不動産事業部統括責任者として取締役に就任。

不動産投資家の所有物件の買い替えによる資産整理や遺産相続など、その経験と知識を生かしたコンサルティング業務を行っている。

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