土地相続の相談は誰に?タイプ別の相談先を解説

  1. 土地相続
  2. 68 view

土地は、現金と違って簡単に遺産分割できない相続財産です。また、相続税の計算も複雑で土地の地目によって評価の方法も違いますし、特例や軽減措置も異なります。土地の相続について悩む方は少なくないのです。

今回は、土地の相続についての悩みをタイプ別に分けて、どのプロフェッショナルに相談し、依頼すればよいかを解説します。この記事を読めば、相続のプロ達の特性についての見識を深めることができて、円滑な土地相続の一助なるでしょう。

 

土地相続のタイプ別の悩み

土地相続のタイプ別の悩み

土地を相続するにあたっては、大なり小なり悩みが生じやすいようです。相続する土地の全容が把握できず遺産総額が算出できない人や、遺産分割しようとして遺産分割協議を重ねているが、相続人の間で紛争が起きているなど、土地相続に関する悩みは尽きないのです。

ここでは、土地を相続する人の代表的な悩みについて説明します。

 

土地の相続税がわからない

土地を相続する人の中で、土地の相続税を納めなければならないのかどうかわからない人は多いのです。逆に言えば、相続する土地の相続税を、納める必要があるかどうかを分かっている人の方が少ないと言えます。

土地の相続税を納税については、土地の価額を算出しなければなりません。それには、土地を評価しなければならないのですが、評価方法は、対象の土地によって違うので、国税庁の路線価・倍率表で確認する必要があります。定められた方式で土地を評価し算出した土地の価額は、相続税を算出する基となるのです。

土地の価額が分かれば、相続税を申告する必要があるのかないのか判断します。基礎控除を超えていれば、相続税を申告し納税する義務が生じますが、超えていなければ申告や納税も必要はありません。

 

相続税が課税されるようだが計算できない

土地を含んだ遺産総額を算出し、基礎控除を超えていれば課税対象となります。しかし、土地の相続税を算出するには、対象となる土地についての地目や用途を理解し、土地によって定められている減免措置や特別控除などが、適用されるかどうかを調べなくてはなりません。また、相続人によって特別控除が設けられている場合もあります。

土地を含んだ相続税の計算は、あまりにも複雑なので、算出できないという悩みを持っている人は多いのが現状です。

 

相続税はかからないが相続登記が分からない

土地を含んだ遺産総額が基礎控除を超えていなければ、相続税の申告納税の義務は生じません。しかし、土地を相続するについては相続登記をする必要があります。これは、相続税とは関係なく、土地を含んだ不動産を相続した相続人全員に当てはまる事です。

相続登記は、簡単に言えば土地の名義変更ということになるのですが、被相続人との続柄や関連性を証明し、身分を証明したり、本人であることを証明したりする必要があるのです。また、対象となる土地についての証明も必要となるので、手続きが複雑すぎて分からないという人も多いのが現状となっています。

 

相続争いが発生している

土地の相続については、現金のように簡単に分割できないので相続争いが発生するケースもあります。相続人同士が、互いに「自分が土地を相続する」と主張すれば、話し合いの余地がなくなり、争いに発展することもあるのです。

遺産相続における争いは、大きな事件となる恐れもありますので、相続人だけではなく相続人を取り巻く人たちへも影響を与える悩みの種となります。

 

遺産分割が円満に進まない

相続税の申告や納付の期限は、相続開始日から10ヶ月となっています。遺産分割協議が円満に進まなければ、期限が迫ってくる恐れもあります。

また、相続するのか相続放棄するのかの決断は、相続開始日から3ヶ月以内です。遺産分割協議の進捗次第では、負の遺産を相続することになる可能性もあります。これら以外にも土地相続の遺産分割では、トラブルが発生しやすく悩みを抱える人も多くいます。

 

遺産相続のプロフェッショナル達

遺産相続のプロフェッショナル達

土地の遺産相続で悩んだら、相談先は相続のプロフェッショナルとなります。相続のプロフェッショナルは、税理士・司法書士・弁護士です。土地相続に関する紛争を解決する場は、家庭裁判所や裁判所となります。

ここでは、それぞれの得意分野を紹介し、どのような相続トラブルの相談に向いているのかを説明します。

 

税理士は相続税のプロフェッショナル

税理士の得意分野は税金です。土地相続では、相続税に関する相談をする場合には、税理士を選ぶと良いでしょう。税理士の中には、遺産相続に関するあらゆる問題解決や手続きをパッケージとして提供しているケースをあります。その場合は、税理士だけでは難しいので、提携している弁護士や司法書士などとチームを組んで対応してくれるのです。

また、貸地を相続し、賃貸経営を継承した場合の経営相談や確定申告を相談することも可能です。

 

司法書士は相続手続きのプロフェッショナル

司法書士の得意分野は登記です。土地相続では、相続登記に関する悩みを相談するときに選ぶと良いでしょう。

相続登記は、しなくてもペナルティが発生するわけではありませんが、相続した土地の所有者を明確に示すために必要な手続となります。所有権という民法上の権利を公示することで、相続した土地の所有者が確定します。

ただし、相続登記の手続や書類は複雑ですので、司法書士に相談・依頼するケースが多いのです。

貸地の賃貸経営を法人成りする際の手続きや法人登記の相談、法律相談も司法書士の得意分野となります。

 

弁護士は相続係争のプロフェッショナル

弁護士は、社会の中で起こるさまざまなトラブルを法的に解決することが得意分野です。土地相続では、相続人同士の遺産分割トラブルや、相続した土地で問題が発生した場合に相談すると良いでしょう。

また、遺産相続が紛糾して、調停や審判、裁判にまで及んだ時には、自分の代理人となってくれるのです。

 

調停・審判・裁判は裁判所

遺産分割協議で決着がつかず、遺産分割調停となった場合は、家庭裁判所で調停が行われます。そこで、調停が不調に終わった場合は、遺産分割審判となるのです。

遺産分割審判は、調停とは違い強制力がありますので、裁判官が判断した内容に従わなければなりません。しかし、その審判に不服があれば不服申し立てを行うことができます。

遺産分割審判でも決着がつかない場合は、遺産分割に関する裁判となります。この裁判での決定に不服がある場合は、上級審に対して控訴することも可能です。

 

土地の相続税関係なら税理士に相談

土地の相続税関係なら税理士に相談

税理士は、税金の専門家ですので、土地の相続税に関連することであれば税理士に相談すると良いでしょう。

税理士の仕事は、税務代理や税務書類の作成、税務相談、e-taxの代理送信など多岐にわたっています。また税務訴訟の補佐にとしても役割を果たしています。近年では、税金と会計の専門家として、中小企業の経営アドバイスや支援なども行なっている税理士が増えています。

 

相続税以外の相続関係の税金も相談可能

税理士は、土地を含む相続税を算出し、納税するためのプロフェッショナルです。相続税を専門とする税理士に、相続税に関する一切の事を任せれば、難しい相続税で悩む必要がないかもしれません。

また、相続した土地を活用する際に発生する税務上の問題点などについて、アドバイスを得ることもできれば、顧問となり税務に関係する一切を任せることも可能です。

また、相続した土地が貸地であった場合なら、賃貸経営を営む場合の経営相談から、税務相談まで対応してくれる場合もありますので、税理士を選ぶ際には、要望に対応できる税理士を選ぶほうが良いでしょう。

 

相続関係が苦手な税理士も存在する

税理士は税のプロフェッショナルなので、相続税もどんな税理士に任せても安心と思われる人もいますが、決してそうではありません。

税理士の中には、相続税について素人同然の税理士も存在するのです。理由は税理士試験にあります。税理士試験では、相続税は選択科目ですので、相続税に関することを全く知らなくても、税理士の資格を取得することが可能となっているのです。

また、税務署に23年間勤めると、税理士の資格が与えられるので、税務署OBが多いのも税理士という資格の特徴となっています。税務署に23年以上勤めたが、相続税に全く関連しなかった公務員であっても、税理士の資格を得ることができるのです。

このような税理士であれば、相続税に最も関連する相続税法や民法を知らない税理士がいても不思議ではありません。すなわち、税理士であっても相続税に関することは素人同然の税理士が存在するということになります。

このような税理士に、相続税の相談をしても全く無意味となりますので、相談する際には、相続税を専門としているかどうかを確認しておく必要があるのです。

 

土地の相続登記関係なら司法書士に相談

土地の相続登記関係なら司法書士に相談

司法書士は登記の専門家ですので、土地相続に関することであれば相続登記について相談すると良いでしょう。

司法書士は、相続登記以外にも各種名義変更手続きの代行や、成年後見人、家族信託の設計などを依頼することが可能です。

司法書士や行政書士も、弁護士と同じく法律の専門家と言われる国家資格ですが、遺産分割の紛争などの相談を受けることはできません。ただし、争いにはいたっていないが、法律家監修のもと遺産分割した方が良いと考えられているケースでは、司法書士でも相談を受けることができます。

要するに、調停や審判に至らないような法律相談であれば、司法書士であっても行政書士であっても受けることができるということです。

 

行政書士と使い分けることも可能

行政書士は、街の身近な法律家です。土地相続において行政書士に相談するできることは、遺言書の作成や各種名義変更などとなります。得意としていることは、飲食店や運送業などの営業許可の取得代行ですので、そのような事業を、被相続人から承継する場合は相談すると良いでしょう。

行政書士と司法書士の違いは、不動産の名義変更です。司法書士であれば相続登記を含む不動産の登記を代行することができるのですが、行政書士は不動産の名義変更を代行することができません。ただし、車の名義変更は、行政書士なら代行できますが、司法書士では代行することはできません。

 

土地の相続に関する紛争は弁護士に相談

土地の相続に関する紛争は弁護士に相談

弁護士は、法律に関することが何でもできる国家資格です。土地相続に関することでは、遺産分割争いに関する法律相談や調停などの代理です。

弁護士に土地相続に関する相談や依頼を行う前に、知っておいた方が良いことがあります。弁護士は利益相反の要素がある場合、紛争している両者から仕事の依頼を受けることができません。簡単に言えば、遺産分割で長男と次男が揉めている場合、公平な立場で遺産分割をまとめることができないのです。弁護士は、長男が依頼者の場合は、長男の利益を最大化しなければなりません。依頼者の利益を損なうような行為はできないのです。

公平な立場で遺産分割をまとめることができるのは、裁判所の調停員ということになります。

 

弁護士にしかできない領域

弁護士は、法律に関するすべての仕事ができます。司法書士や行政書士では行えない弁護士だけが行える仕事の領域があるのです。この領域を弁護士でない人が行うことは非弁行為となります。

非弁行為は弁護士法に違反し刑事罰が科されることがあるのです。その場合、3年以下の懲役か300万円以下の罰金となります。また、依頼者も弁護士以外の者に、弁護士しか行えない法律事務を依頼してしまうと警察から事情聴取を受けるなど捜査に巻き込まれてしまう可能性もあるのです。

土地相続では、非弁行為を行うような税理士や司法書士などが存在する可能性もあります。おかしいと感じたら、後々の面倒にならないように、その場で非弁行為であるかどうかを当人に確認しましょう。明確な回答が得られない場合は、弁護士に相談するほうが無難です。

 

税にも長けた弁護士を探そう

弁護士は、法律のプロフェッショナルですが、税のプロフェッショナルではありません。土地の相続については、相続税が絡んだトラブルが起こる可能性も低くないのです。遺産分割での紛争が解決しても、相続税についての問題が残ったままでは、安心することができないでしょう。

相続税に長けた弁護士や、相続税のプロフェッショナルである税理士とタッグを組んでいる弁護士であれば、土地相続に関する全てを任せられるかもしれません。いずれにしても、相談・依頼するまえに見極める必要があるのです。

 

土地の相続係争の最終手段は裁判所

土地の相続係争の最終手段は裁判所

被相続人が残してくれた財産の相続で、相続人同士が揉めることは、被相続人も相続人も含めて誰もが望んでいることではないでしょう。しかし、遺産分割で裁判にまで発展することは往々にしてあるのです。

土地相続に関するトラブルの最終的な決着は裁判所となります。 ここでは、遺産分割協議でまとまらなかった場合の遺産分割調停から遺産分割に関する裁判について解説します。

 

調停は家庭裁判所

遺産分割協議で、相続人全員の合意が得られなかった場合は、家庭裁判所で遺産分割調停となります。遺産分割調停では、調停委員が仲介者として話し合いを進めます。調停委員とは、社会経験が豊富で専門的な知識を持っている人の中から選ばれた人です。

遺産分割調停には、強制力がありませんので相続人全員の同意がないと成立しません。中立の立場である調停委員が介することによって、感情的な対立を抑えることが可能となり、遺産分割協議よりも合意が得やすくなります。

遺産分割調停で、相続人全員の合意を得ることができれば、その内容が調停調書にまとめられ、それに基づいて遺産分割を行うことになります。

 

審判や裁判は裁判所

遺産分割調停が不成立に終わった場合は遺産分割審判の手続きに移行します。その場合は、基本的に裁判所で行われます。遺産分割審判では、裁判官が双方の主張と証拠を審理し、遺産分割方法について審判を下すのです。

その審判の内容に納得できない場合、2週間以内に不服申し立てをすれば高等裁判所での裁判となります。遺産分割審判や裁判で確定した内容は、強制力が伴いますので、従わない場合は強制執行などを受けることになりかねません。裁判で結審した遺産分割には従うほうが良いでしょう。

 

物知りの素人や無料相談は避けてプロへ相談

物知りの素人や無料相談は避けてプロへ相談

土地相続について、無料相談や物知りの素人がアドバイスをしてくれる場合があります。無料相談は、駆け出しの弁護士や司法書士などが行なっている場合があるので、経験不足から思うような回答を得られない場合があります。

また、物知りの素人は、責任がないので相談者に都合の良い法解釈をしてアドバイスするケースもあるのです。いずれにしても、土地相続の重要な相談に適しているとは言えません。

土地相続に関する相談をするのであれば、相続のプロフェッショナルに相談しましょう。この記事では、土地相続に関するプロフェッショナルの役割などを説明してきましたのでご参考ください。

また、この「相続対策のすゝめ」では、相続に対する記事を専門に掲載していますので、活用すればきっと役に立つ情報を得られ、相続に関する見識を深めることができるでしょう。

【記事監修】高野友樹

株式会社アーキバンク取締役COO/不動産コンサルティングマスター/宅地建物取引士

不動産会社にて2,000件以上の賃貸売買仲介に関わり、6,000戸の収益物件の管理業務を経験した後、年間で36.9万平米を超える賃貸契約面積を獲得している国内有数の不動産ファンドであるGLR(ジーエルアールインベストメント株式会社)にてAM事業部のマネージャーとして従事。

大規模物件の売買仲介を中心に、投資家へのコンサルティング業務を行い、100億円規模の物件の取引に携わる。2019年より株式会社アーキバンクに参画し、不動産事業部統括責任者として取締役に就任。

不動産投資家の所有物件の買い替えによる資産整理や遺産相続など、その経験と知識を生かしたコンサルティング業務を行っている。

記事一覧

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。