土地相続の節税マニュアル!基礎控除や7つの税額控除を解説

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故人が残した遺産に対しては、相続税という税金が課税されます。たとえ故人があなたのために残した資産であっても、しっかりと課税されます。

納税は日本国民の当然の義務であり、納税をしなければ厳しい罰則を受けてしまう可能性もあるでしょう。しかし、納税義務のある一方で、“節税”は、納税者の当然の権利です。

多くの土地を相続した場合には、できるだけ相続税を抑えるべく、節税を行いたいはず。そこで今回は、「土地の相続をした場合の節税種方法はあるの?」と疑問を抱えている方に向けて、土地相続の節税について詳しくお伝えしようと思います。

基礎控除から7つの控除、その他、土地の分筆による大きな節税効果など詳しくお伝えしています。ぜひ参考にしてみてください。

 

土地相続の基本!まずは基礎控除を確認

土地相続の基本!まずは基礎控除を確認

土地などの不動産に限らず、金融資産や動産などすべての相続財産に対しては“基礎控除”が適用できます。

基礎控除の計算式はとてもシンプルで【3,000万円+法定相続人✕600万円=基礎控除】です。つまり、相続人が1人しかいない場合であっても、相続財産合計が3,600万円以下であれば、税金が発生しません。仮に、法定相続人が配偶者と子の2人いた場合には、4,200万円が基礎控除額となります。

基礎控除だけでもとても大きな控除を受けられるので、前提として覚えておいてください。

そして、基礎控除のとても大事な部分、「法定相続人」に該当する人は下記の通り

・配偶者

・子(第1順位)

・両親(第2順位)

・兄弟姉妹(第3順位)

※上位の者がいる場合には、第2・第3は法定相続人になりません。

法定相続人が亡くなっている場合には、襲相続として「相続人となるはずだった子」が法定相続人となります。なお、法定相続人が相続放棄をした場合であっても、基礎控除の法定相続人にカウントできます。

例えば、法定相続人が配偶者と子2人の計3人であった場合で、子の1人が相続を放棄したとしても、基礎控除額は【3,000万円+(3✕600万円)=4,800万円】となります。

 

7つの税額控除を利用する

先にお伝えした基礎控除を行っても、控除しきれなかった部分については、通常、相続税が課税されます。しかし、下記の7つの税額控除を利用すれば、相続税負担が軽減されます。

・相続時精算課税制度贈与税額の控除

・贈与税額控除

・未成年者控除

・配偶者の税額軽減

・障害者控除

・相次相続控除

・外国税額控除

それぞれの対象について詳しくお伝えします。

 

相続時精算課税制度による贈与税額控除

相続時精算課税制度を利用して、生前に土地などの資産を贈与した場合に受けられる控除です。

相続時精算課税制度とは、父母・祖父母から子もしくは孫に対して生前に贈与を行い、贈与税が発生すれば贈与税を支払います。その後、贈与者の相続発生時には、生前贈与を受けた分を含めて相続税を計算し、贈与税として支払った税金は控除を受けられる制度です。

贈与時・相続税を通じた納税が可能であるため、メリットの多い制度です。ちなみに、相続時精算課税制度を利用した生前贈与は、2,500万円まで贈与税が非課税になります。

 

贈与税額控除

被相続人が亡くなる前3年以内に贈与を受けていた場合には、相続とみなされてしまうため、相続税が発生します。しかし、贈与を受けた際に贈与税を納税していた場合には、贈与税として納めた税金の控除を受けられます。

ちなみに贈与税の計算式は【贈与額-基礎控除(110万円/年)=課税対象】です。

例えば、生前に1,000万円の土地の贈与を受けたとしましょう。

【1,000万円-110万円=890万円】

その他、贈与の金額や贈与者によって決まっている控除をし、税率を掛けた金額を実際に納めることとなります。

 

未成年者控除

未成年控除は、相続人が未成年である場合に限って20歳になるまでの年数✕10万円を控除。例えば15歳の子が相続人となれば、【5年✕10万円=50万円】が控除できる金額です。

15歳○か月など、端数がある場合はすべて切り捨てとなります。例えば、15歳11か月の子が相続人になれば、15歳とみなされ50万円の控除を受けられます。

なお、未成年者控除を受けられる未成年者は“法定相続人”に限られているので注意しましょう。

 

配偶者の税額軽減

配偶者が相続をする際には、税額を大幅に軽減される制度。具体的には、

【相続税の総額✕※①②の少ない金額/課税価格の合計額=配偶者の税額控除額】

となります。

①課税価格の合計額に配偶者の法定相続分を掛けた金額、1億6,000万円のうち多い金額

②配偶者の相続税課税価格

配偶者の税額軽減を利用することで、法定相続相当の金額もしくは1億6,000万円以下であれば相続税が発生しません。なお、この控除は婚姻関係にあることが要件であるため、内縁の配偶者は利用できませんので注意してください。

 

障害者控除

85歳未満の障害者が法定相続人である場合に利用できる控除です。障害者が85歳になるまでの年数✕10万円(特別障害者は20万円)が控除されます。

例えば、15歳の障害者が法定相続人になった場合には、【70年✕10万円=700万円】700万円が控除されます。なお、障害者控除も未成年控除同様に○か月などの端数はすべて切り捨てとなるのであわせて覚えておいてください。

 

相次相続控除

10年間の間で2回以上の相続が発生した場合に利用できる控除。例えば、父が亡くなった後すぐに母が亡くなってしまうと、短期間の間で2回も相続税を納税しなければいけません。そうなってしまうと、納税者の負担が大きいため、10年間という期限を設けて利用できる控除です。

具体的には、1回目で納税した税額の一定額を2回目の相続税から控除できるというもの。1回目でしっかりと納税をしても、2回目でまったく納税しなくても良いわけではありませんので注意してください。あくまでも“一定額を控除”できるだけです。

 

外国税額控除

外国にある財産を相続した際に利用できる控除。例えば、外国にある土地を相続した場合、当該土地のある国でも相続税が発生している可能性があります。さらに日本でも税金を納めてしまうと、二重課税になってしまうため、外国で支払った税金分は日本で控除を受けられる制度です。

 

土地を分筆して節税する

土地を分筆して節税する

“土地を分筆する”とは、土地を2つに分けてしまうというものであり、土地の形状によっては非常に大きな節税効果が見込めます。

ただ、ひとつだけ注意しなければいけないのが、1つの土地を分筆して2つにした場合、同一人物が2つの土地を相続することはできません。もしも、相続人が1人しかいない場合には、分筆をするメリットがありませんので注意してください。

分筆で節税効果が見込めるケースは、分筆した土地を複数の相続人がそれぞれ相続する場合に限ります。また、分筆は法定相続人全員の同意が必要ですので、だれかが勝手に分筆することは認められません。

 

土地の分筆でなぜ節税できるのか?

土地を分筆することで“土地の評価額を下げられるから”節税効果が見込めるのです。土地の評価額が下がれば当然、税額も下がります。

ではなぜ、分筆をすると土地の評価額が下がるのか?それは、土地の価格の出し方が大きなポイントです。

まず、相続税を課すためには、土地の評価額を決定しなければいけません。土地の評価額は、“路線価”という価格に基づいて算出されます。この路線価は、“土地が道路に面しているか”によって、価格が異なるため分筆をすることで節税を見込める可能性が高いのです。

例えば、角地であれば2面の道路に面しており、路線価を算出する場合には値段の高いほうの路線価を正面路線価とします。そして、正面路線価をメインとした計算式で路線価を算出するため、土地の評価額が大きく出てしまうのです。

そのため、土地を分筆して値段の安い方一面の土地を作ってしまうことで、大幅な節税効果が見込める。ということでした。分筆による節税は、条件(同一人物では不可など)がありますが、違法性はまったくない行為ですので安心してください。

 

小規模宅地等の特例も活用

小規模宅地等の特例とは、相続によって取得した土地等の不動産が居住用もしくは事業用等に使用されていた場合に受けられる特例の控除です。

例えば、故人が残した不動産が居住用もしくは事業用として使用されていた場合に、その土地の評価額が高額であれば、相続人の税負担が非常に重くなってしまいます。もしも、税金を支払うことができなければ、自宅に住めない、事業を継続することができないなどの弊害が発生してしまうことでしょう。

これらの弊害をできるだけ抑えるべく、「小規模宅地等の特例」という控除があります。小規模宅地等の特例によって得られる減額割合は、宅地の種類によって80%または50%とされています。

小規模宅地等の特例や土地の分筆を行うことで、大きな節税効果に期待ができるので、ぜひ活用してみてください。

 

土地相続で相続税が支払えないときの対処法3つ

土地相続で相続税が支払えないときの対処法3つ

相続税の納税は基本的に“金銭”しか認められていません。さらに、納付期限までに“一括納付”が基本です。そのため、土地のみを相続し、手元に現金がなくても現金で一括で納付をする他ありません。

たとえ、土地の相続によって多額の資産を手に入れたとしても、相続税は“金銭での一括納付”が原則です。せっかく得た資産も金銭の用意ができなければ、最悪の場合手放すしかないでしょう。

ただ、原則は金銭での一括納付としながらも、しっかりと逃げ道を作っているのも事実。金銭一括納付が厳しい方は、延納や物納などの納付方法も検討してみてはいかがでしょうか。

 

物納

相続税は金銭一括納付が原則ですが、下記の3つの要件を満たすことで物納(物での納付)が認められています。

・延納でも納付がむずかしい理由がある

・申告期限までに税務署の許可を得ている

・相続財産が※物納できる財産である

※物納できる財産

  1. 国債・地方債・不動産・船舶
  2. 社債・株式・投資信託もしくは受益証券
  3. 動産

(番号は順位)

上記の要件を満たすことで物納が認められますが、一括金銭納付ができない理由があり、延納もできない理由があることが条件です。さらに、物納できる財産を相続しなければ、物納は認められません。

もしも物納が認められなければ、相続した土地を売却するか、相続放棄をするか、しかありません。相続税を減らすために節税に注力していても、支払えなければ意味がありませんので注意してください。

 

延納

延納とは、申告期限までに金銭一括納付がむずかしい方が、支払期日を延長してもらえる制度です。延納が認められると5年~20年以内の期間を定め、分割払いが認められます。

なお、延納を利用するためには下記5つの要件をクリアしていなければいけません。

・相続税額が10万円を超えていること

・申告期限までに一括納付ができない理由があること

・延納はあくまでも“納付できない金額”を上限とする

・担保を用意できること(延納税額が100万円以下かつ延納期間が3年以下であれば不要)

・申告期限までに税務署長の許可を得ていること

上記すべての条件をクリアして初めて延納が認められます延納が認められれば最長20年間の間で支払いを行えるので、メリットはとても多いでしょう。

 

土地を売却

物納や延納を行っても相続税の納税が厳しいのであれば、土地の売却を検討しましょう。

土地の相続は評価額や相続税が高額になりやすいにもかかわらず、土地しか相続しなければ、現金の用意がむずかしい方がほとんどです。ですが、物納も延納もそれぞれ細かい要件を設定しているため、中には要件をクリアできない方もいるでしょう。

もしも、金一括納付はもちろんのこと、延納や物納での相続税納付も厳しいのであれば、相続した土地の一部を売却し、現金に変えても良いでしょう。納税額と土地のプラスマイナスの関係を鑑み、相続放棄をしたほうが良いのかどうかを含めた計算も必要かもしれません。

 

まとめ

まとめ

今回は、土地の相続に対する節税についてお伝えしました。

相続税は基礎控除として最低3,600万円の控除を受けられるため、3,600万円以上の評価額のある土地に対して初めて課税(法定相続人による)されます。

その他7つの税額控除のうち、当てはまるものがあれば大きな節税に期待ができるため、当てはまるものがあれば積極的に利用しましょう。

また、土地の分筆という効果的な節税方法も用意されています。土地の分筆は、相続人が複数いる場合、全員の同意が必要であることや1人では分筆節税の効果がないなどの注意点もいくつかありました。注意点をクリアできるのであれば、とても効果の大きい節税です。ぜひ利用してみてください。

今回、土地相続のさまざまな節税についてお伝えしましたが、節税は、納税者の当然の権利です。活用できる控除や分筆は積極的に利用しましょう。

【記事監修】高野友樹

株式会社アーキバンク取締役COO/不動産コンサルティングマスター/宅地建物取引士

不動産会社にて2,000件以上の賃貸売買仲介に関わり、6,000戸の収益物件の管理業務を経験した後、年間で36.9万平米を超える賃貸契約面積を獲得している国内有数の不動産ファンドであるGLR(ジーエルアールインベストメント株式会社)にてAM事業部のマネージャーとして従事。

大規模物件の売買仲介を中心に、投資家へのコンサルティング業務を行い、100億円規模の物件の取引に携わる。2019年より株式会社アーキバンクに参画し、不動産事業部統括責任者として取締役に就任。

不動産投資家の所有物件の買い替えによる資産整理や遺産相続など、その経験と知識を生かしたコンサルティング業務を行っている。

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