遺産相続した土地はどうするのか?相続手続きや土地の扱いを簡単解説

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土地や建物を相続することになった場合、多くの方はまず何から始めれば良いのか迷うことでしょう。

名義や価値はもちろん、相続人同士でどのように分割するのか、受け取った土地をどうするのか…

特に相続した土地を管理できない、土地自体にあまり価値がないときは、できる限り早く売却するか、何か方法を取りたいと考えます。

今回は土地を相続する際に必要な手続きや複数人で分割する際の方法、そして売却や放棄などについて解説していきます

 

遺産として土地を相続する場合には手間も時間もかかる

大前提として土地を相続する場合、非常に手間や時間がかかります

相続する際には土地の固定資産評価証明書や被相続人の戸籍謄本を全て、そして相続人の戸籍謄本など多くの書類を集めなければなりません

また必要になる書類は公的な書類であり役所や法務局で取得することができますが、基本的には平日しか申請できません。

そのため平日に時間をとって取得しに行く、郵送で取り寄せる、委任状を書いて代理人に依頼する3つの方法を取るしかありません。

相続人の戸籍謄本などを取得することは難しくありませんが、被相続人の戸籍謄本を全て揃えることは手間がかかります。

なぜなら被相続人のものに関しては出生から死亡までの全ての謄本が必要だからです。

結婚や転居を機に本籍地を変えている場合もあります。

必要な書類を集めた後にも、遺産分割協議書や登記申請書の作成など慣れていなければ手間も時間もかかる手続きが非常に多いことを覚えておいてください。

 

土地を遺産相続する際の3つの手続き

相続が発生した場合にやるべき手続きは以下の3つです。

  1. 死亡届の提出
  2. 土地の評価額や登記簿を調べる
  3. 必要な書類を集める

急な事態にも対応できるように、まずは3つの手続きを覚えておきましょう。

 

死亡届の提出

まずは被相続人の死亡届を役所に提出する必要があります。

提出は法律で7日以内と決められているためそれまでに提出しなければなりません。

死亡届の提出をすると同時にしておきたいことが、遺言書の有無の確認です。

遺言書により遺産の配分が明記されていれば、相続する際の遺産分割協議やその文書の作成などの手続きは不要になります

協議をした後に遺言書が見つかったときはそれまでの苦労が水の泡になるため、遺言書があるのかどうかは確認しておきましょう。

 

土地の評価額や登記簿を調べる

次に土地の評価額や登記簿の状況を調べる必要があります。

土地の評価額を調べるための方法は主に3つです。

  1. 固定資産評価証明書を役所で発行する
  2. 1月1日時点の所有者に対して市町村から送付される固定資産税課税明細書を確認する
  3. 所有する土地や建物について記載された固定資産税台帳を不動産のある役所で閲覧する

土地の評価額を知ることで、その土地をどうするのかを決める判断材料にもなります。

また登記申請書を作る際に納付する免許登録税を算出するためにも評価額は知っておかなければなりません。

免許登録税は固定資産評価額の0.4%であり、算出した金額は登記申請書にも記載します。

ちなみに登記申請書には決まった専用の用紙があると思われがちですが、実際には専用の用紙というのはありません相続の手続きを自ら行う場合は、インターネット上にある見本や雛形を参考にして作ります。

慣れていない方や作ってみたけど何度も法務局から修正を求められるという方は専門家に相談すると良いでしょう。

また登記事項証明書(登記簿謄本)も法務局で取得しなければなりません。

登記事項証明書とは、不動産の地番(住所とは異なる)や所有者に関すること、そして担保などの情報がまとめられたものです。

この書類は発行するために費用が要りますが、発行のために用意するべき書類などはありません

 

必要な書類を集める

土地に関する書類を集めたら、次は被相続人や相続人に関する書類を集めます。

必要なものは以下の4点です。

  1. 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
  2. 相続人の戸籍謄本
  3. 相続人の住民票
  4. 相続人の印鑑証明書

被相続人の戸籍謄本を集めていくなかで、稀にではありますが、隠し子がいたというケースもあります。

隠し子も相続人になるため、その場合は相続について同様に話し合わなければなりません。

相続人は戸籍謄本、住民票、印鑑証明書を集めなければなりませんが、こちらは役所で手間なく発行することができます。

しかし相続人全員が集めなければいけないことは覚えておきましょう。

上記の4つの書類と固定資産評価証明書、そして登記事項証明書を集めた後に実際に遺産をどう相続するかを決める遺産分割協議を行います

協議がまとまれば遺産分割協議書を作成し、相続人全員で署名押印する必要があります。

遺産分割協議書も専用の用紙はなく、インターネット上にある見本や雛形を参考にしましょう。

遺産分割協議書、そして登記申請書を作成し法務局に他の書類とともに提出して手続きは完了となります。

ただし作成した書類と提出した書類の整合性などは厳しく見られるため、自ら作った場合はなかなか一回で通すことは難しいでしょう。

修正を求められたときには、再度法務局に提出しなければなりません。

書類集めや作成、それに修正にかかる時間や法務局に再度足を運ぶ時間などを考えると時間のない方は専門家に頼むことも一つの方法と言えます。

 

相続人同士で土地の相続について話し合う

土地に関しては相続した後にどうすれば良いのかなかなか想像しにくいことでしょう。

相続人が遠方に住んでいるとき、土地の管理や維持は非常に難しいです。

ではどうすれば良いのでしょうか。

実際には相続した土地は「相続(保有)」「売却」「放棄」ができます。

 

土地は相続・売却・放棄ができる

相続した土地や建物に価値があるのであれば、そのまま保有することも一つの方法でしょう。

相続する場合、まずは相続税を支払い、その後に固定資産税を払うことになります

相続税は以下の計算式で算出できます。

相続税額=(相続財産額-基礎控除額)×相続税率

相続財産額とは、不動産以外にも預貯金や株式など全ての遺産の金額の合計です。

相続税の基礎控除額の計算式は以下の通りです。

基礎控除額=3000万円+(600万円×法定相続人の人数)

法定相続人が一人の場合でも、相続財産額が3600万以上にならなければ相続税を支払うことはありません。

ちなみに土地の名義変更していない場合も固定資産税は支払わなければならないため注意が必要です。

土地を管理できない、または所有する価値がないと思えば売却することも可能です。

売却の手続きは後で詳しく書いていきます。

土地が査定額より安くしても売れない、固定資産税を支払う余裕がない方は放棄することが選択肢になるでしょう。こちらも後ほど、必要な手続きや期限について詳しく書いていきます。

 

土地を含めた遺産を兄弟など複数人で相続する方法は4つ

遺産が預貯金だけであるとき、比較的簡単に均等に分配できます。

ところが土地や株式などが含まるときには均等に相続するのは途端に難しくなります。

主に遺産の分割には4つの方法があるため、どのようにすれば良いのか悩む方は参考にしてください。

 

現物分割

現物分割は、そのままの形で遺産を受け取る最もシンプルな方法です。

二人兄弟が両親から土地・預貯金・車を相続すると仮定します。

兄は土地を、弟は預貯金・車の受け取るとしましょう。

現物分割は土地や株式など分割しづらいものを均等に配分しなくても良いため、後に問題が起きづらい分け方と言えます。

一方で各相続人が受け取るものに差がついてしまうことがデメリットです。

片方の相続人が4000万の土地を受け取るとき、もう片方の相続人が受け取る遺産が2000万分にしかならないということもあります。

この場合は受け取る遺産に大きな差が生まれます。

手続きよりも公平さを重視するのであれば、次に紹介する代償分割が良いと言えるでしょう。

 

代償分割

代償分割とは、分割しづらい遺産を受け取った相続者が、相続分が公平になるよう現金で他の相続者に不足分を補填するやり方です。

両親から家と土地を二人の兄弟で相続したと仮定します。

この際、家と土地を分けて相続することは不可能です。

そこで兄が4000万円の分の家と土地を受け取ったときには、2000万円を弟に不足分として支払う(分割の比率はそれぞれですが)などです。

代償分割のメリットは相続人が受け取る遺産や現金を合わせると均等になることと言えます。

一方のデメリットは現金で不足分を補填する相続人には現金で補填できるだけの支払い能力がいることです。

 

換価分割

換価分割とは、分割できない遺産を売却したときの金額を相続人で配分するやり方です。

こちらも代償分割と同じく、メリットは相続人がそれぞれ受け取る分を均等にできることです。ただしデメリットは不動産の買い手が必要であり、相続人が納得する金額で売却できるかはわかりません

更には不動産が両親の家ではなくマンション等であるとき、他に居住者がいると売却できない点もデメリットといえます

 

共有分割

共有分割とは、複数の相続人の共有名義のまま不動産を保有する方法です。

この方法は一見公平に思われますが、実際には手続きを中断している状態といえるでしょう。

相続人全員の共有財産になるため、売却や放棄するときにも全員の了解を得なければなりません

この状態のままにしておくと、相続人が亡くなるなどして新たな相続人が追加されたときに問題が発生しやすいです

二人兄弟で不動産を相続し、共有分割をしていたとしましょう。

兄弟で取り決めをしていても、どちらかが亡くなったときにはその妻や子どもが新たな相続人となります。その際、また新しく配分する方法を決めなければなりません

不動産の相続を先延ばしにした際には、他にも様々なデメリットがあります。

例えば、一人の相続人に借金があったとしましょう。

土地を誰が相続するかを決めていても、実際に名義変更をするまではあくまで全員の財産とみなされます。借金のある人のために、全員の財産である土地が差し押さえられることもあります。

遺産の分配の取り決めをした際には、名義変更の手続きをすぐに行いましょう

先ほどの新たな相続人の追加のように、状況が変わることでそれまでの取り決めが意味をなさなくな、再度話し合いをする事態が生じます。

 

土地を売却する際の4つの手続き

では土地を売却すると決めたとき、何をすれば良いのでしょうか。

4つの手続きにまとめました。

 

土地の名義を変更する

まずは先に書いた書類を集めて、土地の名義変更しなければなりません

例え相続人であっても、名義変更をしていない際は土地を売却することはできません。

専門家に頼まなければ、名義変更だけでも書類集めや作成に非常に時間がかかります

相続する前から土地を売却することを決めているのであれば、早めに準備や手続きをしておくと良いでしょう。

 

不動産屋に売却依頼をする

相続登記を終えてから不動産屋に売却の依頼をしましょう。

不動産屋に支払う費用は売却金額の3%であり、買い手が見つかり契約が成立したときに初めて費用が発生します。

不動産屋によって得意とする物件のタイプやエリアは異なります。

依頼した不動産屋によっては査定額が数十万から数百万円異なることもあるため、複数の会社に査定額を出してもらい比べると良いでしょう。

 

土地を整える

こちらは必ずしも必要な手続きではありません。

しかし土地や建物によっては、そのままにしていても買い手がつかないこともあります。

物件が比較的新しいものであれば買い手も付きやすくなりますが、古い物件は立地が良いなどの条件がなければ買い手がつきにくいです。

不動産屋と相談して、建物の解体も視野に入れると良いでしょう。

売却に出したものの買い手がつかないでいると、固定資産税の支払いのみが費用としてかさんできます。

 

不動産譲渡税を支払う

無事売却できた際は、不動産譲渡税を納めなければなりません。

不動産譲渡税は不動産を売却したときに発生する利益にかかる税金です。

被相続人が購入したときの不動産の費用に対して、売却金額が上回っていたときに課税されます。売却金額が取得費用より下回っている際は課税されません。

 

土地を放棄する

土地を相続する人がいない、売却に出したが買い手がつかないなどの場合相続放棄も視野に入れなければなりません。

ここで重要なポイントは、相続放棄をした場合は土地以外の、預貯金や株式を含めた全ての遺産を放棄しなければならないことです。土地のみを相続放棄し、現金や株式やその他のものを受け取ることはできません。

相続放棄のメリットは親が多くの借金を抱えていたとき、遺産を受け取ることを放棄すれば親の借金を肩代わりする必要もなくなることです。借金やローンも遺産として数えられます。

しかし相続放棄は相続が発生した日から3か月以内に家庭裁判所に申し立てをしなければなりません

他の遺産よりも借金やローンの方が多く、相続放棄の手続きをしようと思っても3か月を過ぎていると放棄することが認められづらくなります。

また遺産の一つの車を売却して現金したなどの場合も、相続放棄が認められなくなることがあります

相続放棄には「相続放棄申述書」「被相続人の住民票除票」「申し立て人の住民票」の3つが必要になります。相続放棄申述書はインターネットから用紙をダウンロードできます。

土地の相続にもいえることですが、決めた場合はすぐに手続きをすることが重要です。

 

専門家に相談することがおすすめ

土地の相続手続きをする際、特別な資格などは必要なく、司法書士でなくても登記申請書の作成などはできます。

とはいえ実際に手続きするとなると何をするのか調べることから始まり、必要な書類を集め作成し、提出することまでかなりの手間や労力が求められます。

法務局に書類を提出しても不備があった際には、その都度修正を求められ、再度法務局に足を運ばねばなりません。

また分割しにくい遺産の分割方法を4つ紹介しましたが、現実には均等に相続することは難しく、相続人同士で遺産の割合をめぐり問題になるケースも多いです

手続きは法律的には資格がなくともできますが、現実的にはかなり難しいといえるでしょう。

そのため少しでも不安な方、時間がない方、そして相続人同士で話がまとまらないときは専門家に相談することがおすすめです。

本稿が土地相続の参考になることを願っています。

【記事監修】高野友樹

株式会社アーキバンク取締役COO/不動産コンサルティングマスター/宅地建物取引士

不動産会社にて2,000件以上の賃貸売買仲介に関わり、6,000戸の収益物件の管理業務を経験した後、年間で36.9万平米を超える賃貸契約面積を獲得している国内有数の不動産ファンドであるGLR(ジーエルアールインベストメント株式会社)にてAM事業部のマネージャーとして従事。

大規模物件の売買仲介を中心に、投資家へのコンサルティング業務を行い、100億円規模の物件の取引に携わる。2019年より株式会社アーキバンクに参画し、不動産事業部統括責任者として取締役に就任。

不動産投資家の所有物件の買い替えによる資産整理や遺産相続など、その経験と知識を生かしたコンサルティング業務を行っている。

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