土地相続に関わる費用とは?税から諸費用まで詳細に解説

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相続は、思わぬ時期に突然始まるものです。予想を立てて予定通りに相続が開始されるということは珍しいのではないでしょうか。

相続の中で、取り扱いが難しいものに土地があげられます。土地は、被相続人やその配偶者が居住している土地だけではなく、貸家建付地もあれば貸地もあるのです。また、被相続人が農地や山地、原野などを所有している場合もあるかもしれません。

今回は、土地相続に関わる費用について詳細に解説を進めます。この記事を読めば、相続の難題である土地についての知見を深めることができるでしょう。

 

土地相続に関する費用

土地相続に関する費用

土地を遺産相続した場合の費用は、大きく分けて税金と手数料となります。税金は、相続税と登録免許税です。手数料は、相続税の申告や相続登記などに必要となる書類の取得費で、場合によっては膨大な書類を取得する必要があり、費用もかかります。

土地の相続をプロフェッショナルに依頼する場合も費用が発生します。相続のプロフェッショナルも、依頼する内容によって職種が変わってきますし、費用にも違いがあるのです。

複雑な土地相続に関わるそれぞれの費用の詳細は、次項以降で詳細に解説していきます。

 

土地相続に課税される相続税

土地相続に課税される相続税

土地を相続するにあたり、最も大きな費用となる可能性があるのは相続税です。土地を相続するからといって全ての人が相続税を支払うわけではありません。

相続税は基礎控除を超えた遺産額に対して課税される仕組みになっていて、すべての相続人の6.7%程度が対象となっています。つまり、100人の相続人がいたとして、6~7人程度だけが相続税の課税対象者となっているのです。

しかし、相続財産を土地だけ絞ると対象者が増える可能性もあります。土地は高額な財産であることが多く、恒久的な資産価があり、その資産価値が落ちにくい遺産なのです。ここでは、土地と相続税について解説を進めていきます。

 

相続税とは

相続税は、財産の再配分と被相続人が納める予定だった税金を徴収する目的があります。財産の再配分とは、特定の人達だけに偏って集まっている財産を再配分することにより、調和をとることです。

貧富の格差を縮める役割を果たすことにつながります。また、被相続人が納める予定であった税金を相続税で補完することによって、税収を安定させる作用もあるのです。

相続税は遺産の額によって決まりますが、土地の金額は現金のように見てすぐにわかるものではありません。このように金額がすぐに分からないものは、相続税法によって評価し、価額を算出するように定められているのです。

 

路線価式と倍率式

土地を評価し価額を算出する方法は2種類です。1つは路線価式で、もう1つは倍率方式となります。

路線価式の路線価とは、国税庁が毎年1月1日に定める路線に面する土地の1平方メートル当たりの価額のことを指します。そして、路線価が定められている地域は、路線価を基に評価し、その価額を決定するのです。路線価式の土地評価は、以下の式で算出します。

路線価式相続税評価額=路線価×地積(㎡)×奥行価格補正率

路線価図で確認した路線価に地積をかけることで相続税評価額は基本的に算出できます。地積は、固定資産税の納税通知書や固定資産税評価証明書で確認することが可能です。

路線価が定まっていない地域は、倍率式で相続税の評価額を算出します。その際には、以下の計算式を用います。

倍率式相続税評価額=固定資産税評価額×倍率

路線価や倍率・奥行価格補正率は、国税庁のホームページで確認することができます。以下のURLをご参照ください。

路線価図評価倍率表:https://www.rosenka.nta.go.jp/

奥行価格補正率表:https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/02/07.htm

土地の相続税評価額は、土地の使用状況や地目によって、控除や減額がありますので、よく確認するようにしましょう。

 

自用地の相続税

自用地とは、相続した土地を相続人自身やその家族が、使用する土地のことを指します。土地を相続人が自由に使うことができるので、特別な相続税控除や税の減額措置があるわけではありません。したがって、路線価式や倍率式がそのまま適用されることになります。

ただし、小規模宅地等の特例を受けることができる可能性があります。特例の対象となる土地は、相続直前に被相続人が住んでいた土地であったり、事業をしていたりした土地などです。限度面積は200㎡から400㎡までで、減額される割合は50%から80%となっています。

小規模宅地等の特例は、この後に説明する貸家建付地や貸地でも適用される可能性があるので、しっかりと確認しましょう。

小規模宅地等の特例についての詳細は、下記の国税庁ホームページでご確認ください。

国税庁:相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm

 

貸家建付地の相続税

相続した土地に、賃貸用の建物が建っている場合は、貸家建付地の評価方法が適用されます。貸家建付地は、賃貸物件に入居者がいるので、相続人が自由に土地を使うことができません。

したがって、自用地よりも相続税評価が低くなるように定められているのです。貸家建付地は以下の計算式で算出します。

貸家建付地の価額=自用地の価額-自用地の価額×借地権割合×借家権割合 ×賃貸割合

この計算式にある自用地の価額とは先ほど説明した通りです。また、借地権割合や借家権割合は、路線価図評価倍率表で確認可能です。賃貸割合については以下の計算式を適用します。

賃貸割合=課税時期に賃貸されている各独立部分の床面積÷当該家屋の各独立部分の床面積

一般的な宅地では、借地権割合は60%から70%に設定されていて、借家権割合は30%です。賃貸割合は、入居率とほぼ連動するようになっています。結果的に自用地価額から大きく割り引かれることになるので、貸家建付地の税額は、自用地の税額よりもよりも大幅に低くなります。

 

貸宅地の相続税

被相続人が、第三者に貸し出している土地を相続した場合は、貸宅地の相続税評価が適用されます。貸宅地は5つに分かれているのですが「借地権の目的となっている宅地」と「定期借地権等の目的となっている宅地」が一般的です。これらの貸宅地は以下の式で評価します。

借地権の目的となっている宅地の価額=自用地の価額-自用地の価額×借地権割合

定期借地権等の目的となっている宅地の価額=自用地の価額-定期借地権等の価格

いずれにしても、貸家建付地同様に、相続人が自由に土地を使用することができませんので、相続税評価額が低くなるような仕組みになっています。貸宅地について詳細は以下の国税庁ホームページでご確認ください。

国税庁:貸宅地の評価

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4613.htm

 

農地・山林・原野などの相続税

農地・山林・原野の相続税評価は、それぞれが区分に分かれていて評価方法も異なっています。ただし、用いられる評価方法は、倍率方式と宅地比準方式です。倍率方式はすでに説明済みですので、ここでは、宅地比準方式について説明します。

宅地比準方式とは、農地を宅地とみなした場合の1㎡あたりの評価額から、農地を宅地に転用するときにかかる1㎡あたりの造成費用を差し引いて評価する方法です。計算式は以下のようになります。

宅地比準方式の価額=(宅地とみなした場合の1㎡あたりの価額-1㎡あたりの造成費用)×地積(㎡)

農地・山林・原野の区分によって用いられる評価方法は下記の表でご確認ください。

農地

区分 評価方法
純農地 倍率方式
中間農地 倍率方式
市街地農地 宅地比準方式または倍率方式
市街地周辺農地 市街地農地としての価額の80%

山林

区分 評価方法
純山林 倍率方式
中間山林 倍率方式
市街地山林 宅地比準方式または倍率方式

原野

区分 評価方法
純原野 倍率方式
中間原野 倍率方式
市街地原野 宅地比準方式または倍率方式

農地・山林・原野それぞれに上記表以外に細かな取り決めや軽減措置がありますので、自分で算出することが難しい場合はプロフェッショナルに依頼する方が良いでしょう。農地については、当サイトで詳細に解説していますので下記のページをご参照ください。

「農地を遺産として相続したら何をすればいいのか?ケースごとに解説」

http://sozoku-susume.com/2020/03/19/heritage-of-farmland/

 

相続登記に必要な登録免許税

相続登記に必要な登録免許税

相続登記とは、被相続人の相続した不動産の名義を相続人に変更する手続きです。相続登記をしなければ、不動産の所有者は被相続人のままになります。相続登記は法律上期限が定められているわけではありません。

相続登記をせずに放置していても罪はないのです。しかし、所有者が変わったということを相続登記によって確定しておかないと相続人同士で揉め事が起こったり、不動産を売却する時にトラブルになったりする可能性があります。相続登記を済ませておくほうが無難といえるでしょう。

相続登記に必要な費用として登録免許税が課税されるのです。ここでは、登録免許税とその計算式について解説します。

 

登録免許税とは

登録免許税とは、不動産の所有権や持分権を登記する場合に課税される税金です。手数料的な要素を持つ税金だと認識すると良いでしょう。土地の相続について課税される税率は0.4%です。ただし、被相続人の法定相続人ではない第三者が、遺贈により取得した土地については税率が2%となります。

 

登録免許税の計算式

登録免許税の計算式は以下のようになります。

登録免許税=固定資産税評価額×税率

固定資産税評価額は、相続登記に必要となる固定資産評価証明書で確認できます。また、固定資産税評価額は、1000円未満を切り捨てて登録免許税を計算し、登録免許税は100円未満を切り捨てられることになっているのです。

 

申告や登記に必要な書類費用

申告や登記に必要な書類費用

相続税の申告や相続登記には、多くの書類が必要となります。1つ1つの書類の費用は、さほど大きなものではありませんが、多くなると思った以上に費用がかかっている可能性もあるのです。

ここでは、相続税申告と相続登記の申請について必要な書類とその費用を解説します。相続税に関しては、基礎控除を超えた遺産を相続する相続税申告対象の相続人だけが必要な書類です。

相続税申告・相続登記には似通った書類が必要となるのですが、どちらも被相続人の戸籍に関しては、出生時から死亡時までの全ての戸籍情報が分かる書類が必要となります。

相続税申告に必要な書類

  1. 被相続人の戸籍全部事項証明書:450円
  2. 被相続人の除籍全部事項証明書:750円
  3. 被相続人の改製原戸籍謄本:750円
  4. 被相続人の戸籍の附票の写し:300円
  5. 被相続人の住民票の除票(本籍の記載のあるもの):300円
  6. 相続人全員の戸籍全部事項証明書:450円(被相続人死亡日以降のもの)
  7. 相続人全員の印鑑証明書:450円
  8. 相続人全員の住民票:300円
  9. 遺産分割協議書:0円(遺産分割協議で土地の相続が決定した場合)
  1. 遺言書がある場合は遺言書:0円
  1. 登記事項証明書:480円~600円
  2. 不動産の固定資産評価証明書:300円
  3. 遺言書がある場合は遺言書:0円
  4. 相続税申告書:0円

※4と5はどちらか一通

※9と10は遺産分割の方法による

相続登記で必要な書類

  1. 被相続人の戸籍全部事項証明書:450円
  2. 被相続人の除籍全部事項証明書:750円
  3. 被相続人の改製原戸籍謄本:750円
  4. 被相続人の戸籍の附票の写し:300円
  5. 被相続人の住民票の除票(本籍の記載のあるもの):300円
  6. 相続人全員の印鑑証明書:450円
  7. 相続人全員の住民票:300円
  8. 遺産分割協議書:0円(遺産分割協議で土地の相続が決定した場合)
  9. 遺言書がある場合は遺言書:0円
  10. 登記事項証明書:480円~600円
  11. 不動産の固定資産評価証明書:300円
  12. 登記申請書:0円

※4と5はどちらか一通

※8と9は遺産分割の方法による

この一覧から分かるように相続税申告と相続登記は書類の書類が重なっています。書類取得の費用を削減するのであれば、相続登記を先に済ませると良いでしょう。相続登記で添付した各種書類の原本は原本還付が可能となっているのです。

また、各書類の費用は一通につきの費用です。また、費用の額面は一般的な金額を記載していますので、市区町村によって費用が変わる場合もあります。

 

プロフェッショナルに任せる時の費用相場

プロフェッショナルに任せる時の費用相場

土地相続は、相続財産の中でも手続きが難しいとされています。自分で、相続税の申告や相続登記をする場合は、多大な時間と労力が必要となるのでしょう。

相続には、相続のプロフェッショナルがいます。相続全般や相続税であれば弁護士や税理士です。土地の相続登記だけであれば司法書士が適任です。相続税の申告などで、土地の測量などが必要な場合は、土地家屋調査士が専門となるのです。ここでは、相続に関するプロフェッショナルの役割と費用の相場を解説します。

 

相続全般を任せる弁護士の費用

遺産相続全般の問題解決ができて、総合的に遺産相続を任せることができるのは弁護士です。弁護士には、刑事事件専門家民事訴訟専門などとドラマや映画なので見聞することがあるかと思いますが、相続についても同様のことがいえます。

相続全般をお任せするにあたっては、遺産相続に強い弁護士に依頼するようにしましょう。弁護士に依頼する場合の費用は、細かく区分されていて大きな費用としては報酬額となります。

まず、法律相談ですが、基本的に30分ごとに5,000円から1万円が相場です。着手金は経済的利益の額によって異なりますが300万以下なら8%程度です。

土地相続だけではなく、遺産分割協議から法廷闘争まで、相続全般を任せることができる分だけ他のプロフェッショナルに比べて割高になっているのです。

 

税がメインの税理士の費用

遺産分割協議を含めて遺産分割でトラブルがなく、相続税に焦点を絞ることができるのでしたら、税のプロフェッショナルである税理士が適任です。しかし、税理士の中で相続に強い税理士は、一握りしかいませんので注意が必要となります。

相続の方法によっても報酬は変わってきますが、この費用相場を超えることは稀といえるでしょう。

税理士の中で、成功報酬制を導入している税理士事務所は要注意です。たとえば税理士の関与により、土地の相続税評価額が想定よりも減額できた場合、減額分の20から30%を成功報酬として請求する税理士もいます。

税理士に相続税の申告を依頼する場合は、その税理士が相続に強いかどうかを見極めて、成功報酬制を導入しているかどうかを確認するとよいでしょう。

 

登記に強い司法書士の費用

土地相続において、相続税が課税されなくて、相続登記のみならば司法書士が適任です。司法書士は、弁護士や税理士よりも相続登記に長けている場合が多いので、安心して任せることができます。

相続登記は、オンラインでも申請することができますので、司法書士の中にはインターネットで一律料金を定めている場合もあります。その場合の費用相場は、10万円から12万円程度です。

 

土地の測量にかかせない土地家屋調査士の費用

相続税の申告や相続登記において、土地の測量が必要となった場合は、土地家屋調査士に依頼することになります。

 

土地相続はプロに任せることも視野に!

土地相続はプロに任せることも視野に!

ここまで、土地相続に関する費用について、税金は相続税と登録免許税を解説し、その他の費用として書類の取得費やプロに依頼する場合の相場を解説しました。

土地相続の相続税申告や相続登記は、自分で申告することも申請することも可能です。しかし、先程解説したように多大な労力と時間を割くことになり、なれない書類と向き合わなければなりません。この記事を参考に費用を把握すれば、プロフェッショナルに依頼することも難しいことではなくなるのではないでしょうか。

また、相続に関する悩みがあれば、この「相続対策すゝめ」を活用していただくことで、解決の糸口が見つかる可能性があります。

【記事監修】高野友樹

株式会社アーキバンク取締役COO/不動産コンサルティングマスター/宅地建物取引士

不動産会社にて2,000件以上の賃貸売買仲介に関わり、6,000戸の収益物件の管理業務を経験した後、年間で36.9万平米を超える賃貸契約面積を獲得している国内有数の不動産ファンドであるGLR(ジーエルアールインベストメント株式会社)にてAM事業部のマネージャーとして従事。

大規模物件の売買仲介を中心に、投資家へのコンサルティング業務を行い、100億円規模の物件の取引に携わる。2019年より株式会社アーキバンクに参画し、不動産事業部統括責任者として取締役に就任。

不動産投資家の所有物件の買い替えによる資産整理や遺産相続など、その経験と知識を生かしたコンサルティング業務を行っている。

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