祖父・祖母の遺産を相続する!孫が受け取る遺産を解説

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親の遺産を相続するよりも複雑なのが、祖父母の遺産です。

祖父母が孫に遺産を相続させたいけれども、税制が複雑なので二の足を踏む…といったことがあります。孫も祖父母の遺産について理解できていないケースがほとんどかと思います。

今回は、祖父母の目線でお孫さんに遺産を相続させる場合と、

お孫さんの目線で祖父母の遺産を相続する場合について解説します。

祖父母と孫がスムーズに遺産相続できる一助となれば幸いです。

 

結論!孫は遺産を受取れる

孫は、祖父母の遺産を受け取ることができます。

直接的な法定相続人ではありませんが。親の他界などにより代襲相続したり、遺言書によって相続人に認められたりした場合は、正当に祖父母の遺産を相続することが可能です。

孫が祖父母の遺産を受け取るには多種多様なケースがあります。

記事を読み進めていただければ理解していただけるよう、順に解説していきます。

 

祖父・祖母の遺産を相続する

祖父母の遺産を孫が相続するには、何らかのアクションやイベントが起こった場合です。祖父が亡くなった場合の相続人は、孫から見て、祖母・親・叔父や叔母・祖父の兄弟姉妹が該当します。優先順位も同様です。

ここでは、なぜ孫が相続できるのかを解説しますので、ご自身の立場に当てはめてお読みください。

 

なぜ祖父・祖母の遺産を相続できるのか

法定相続人ではない孫が、祖父母の遺産を相続するケースはよくあることです。

では、なぜ、祖父母の遺産を相続できるのかを説明します。

  • 祖父母が遺言書に相続人として指名し認めている場合。
  • 祖父母の実子(孫から見て親)がすでに他界していて代襲相続する。
  • 親(実子)が祖父母から相続人除外した場合の代襲相続。
  • 親(実子)が相続欠格者だった場合の代襲相続。
  • 祖父母と養子縁組している場合。

このような事例に当てはまれば、孫であっても祖父母の遺産を相続できます。

これは、父親方であっても母親方であっても扱いは同じだということを憶えておくと良いでしょう。

 

祖父・祖母から見た相続優先順位

祖父母から見る遺産相続の優先順位も知っておくと役に立つことがあります。

【祖父母が他界した場合の遺産相続の優先順位】

最優先:配偶者(祖父または祖母)

優先順位第1位:子(父または母)

優先順位第2位:直系尊属(曾祖父母)

優先順位第3位:兄弟姉妹(大叔父・大叔母)

( )内は孫から見ての続柄を記しています。

配偶者は常に相続人であって、子からは、優先順位が定められています。つまり、配偶者の子がいる場合は、優先順位第2位以下は法定相続になれません。

また、配偶者がすでに他界していた場合で子がいる場合は、全ての遺産を子が相続することになります。

 

父・母が死亡している場合

祖父母の遺産相続における優先順位第1位である父母がすでに他界している場合は、その子供であり、祖父母からみれば孫にあたる者が代襲相続人となります。

代襲相続とは、本来相続するべき人に代わって遺産相続することです。

孫が代襲相続するケースは意外と多く、父方、母方を問わず直系の祖父母が亡くなり、直系の父母がすでに他界している場合は、孫が代襲相続人となります。

 

祖父・祖母の遺産を相続するための必要書類

遺言書の効力や代襲相続などによって祖父母の遺産を相続する場合は、相続人として書類を準備しなくてはなりません。

書類は、身分を証明するものから、相続する遺産内容によって異なるので、ここでは身分証明関係の書類を記しておきます。

  • 戸籍全部事項証明書
  • 住民票の除票もしくは戸籍の附票
  • 遺言書
  • 遺言執行者の選任審判書謄本
  • 相続人が誰かがわかる戸籍全部事項証明書
  • 遺産分割協議書
  • 相続人全員の印鑑証明書

高額な遺産を相続した場合は、相続税の申告をしなくてはなりません。その場合にも必要となるので早めに準備すると良いでしょう。相続は複雑で非常に難解な書類を揃えなくてはならないので、プロに依頼するという手段も視野に入れておくと良いでしょう。プロに依頼すればこのような書類の他に必要なものは全て揃えてくれます。

 

祖父・祖母の遺産を孫だけで相続する

祖父や祖母の遺産を孫だけで相続する場合もあり得ます。遺言書の効力による場合や、父母の代襲相続で相続人が孫だけの場合などです。孫に兄弟がいたり、直系卑属である孫が複数いたりする場合は均等割で計算されます。

人生100年時代になり、父母よりも祖父母が長生きしている例は決して珍しくありません。故に、孫が祖父母の遺産を相続する例も珍しいケースではなくなってきているのです。

しかし、複雑で難解な遺産相続や相続税の申告などは、過ちやミスがないように遺産相続のプロに相談したり、依頼したりして進めることをお奨めします。

 

孫が遺産を相続する権利や割合

孫が相続人となることが決まったとして、実際にどのような割合で祖父母の遺産を受け取れるのかは、ケースよって判断するしかありません。

ここでは、孫が相続できる割合や相続税の非課税分・遺留分などを解説していきます。

 

孫が受け取る遺産分割の割合

孫が祖父母の遺産を受け取る割合は、相続人の立場によって異なります。

  • 遺言書によって相続人になった場合
    遺言書の内容に従った相続割合・相続金額となります。ただし、他の相続人の遺留分を侵害した遺言内容だった場合は、侵害分を請求される可能性もあります。
  • 孫が、被相続人と養子縁組していた場合
    法定相続人として、実子と同じ扱いになるので、優先順位第1位となります。配偶者や兄弟の人数によって相続できる割合は異なります。法定相続分は、配偶者が1/2・子が1/2だ。その1/2を子の人数で割ることになるので3人いれば1/6ずつです。
  • 孫が親の代襲相続する場合
    孫が代襲相続により相続人となった場合は、祖父母から見て子と同じ立場になるので優先順位第1位です。法定相続分は、上記の養子縁組のケースと同じです。

このように相続人となった立場によって遺産分割の割合は変わってきます。さらに、遺産分割協議によっても受けることができる割合に変化が生じる場合があります。

 

孫が受け取る遺産相続の非課税分

生前贈与であれば非課税分はありますが、遺産相続に関しては非課税分は設けられていません。

しかし、相続税の税額によって適用される通常の相続税控除と孫が未成年であれば未成年控除が受けることができます。

未成年者控除とは、相続人が20歳未満の方の場合に20歳に達するまでの年数1年につき10万円が控除される仕組みとなっています。

 

孫も遺産分割協議の対象者

孫であっても遺産相続の資格を有した場合、遺産分割協議に参加して相続の分割や相続する遺産を決めなくてはなりません。

遺産分割協議に参加するケースとしては、代襲相続や遺言によって相続人と認められた場合。又は、被相続人が親族や他の相続人に孫に遺産を相続させるべく協議に参加することを望んでいた場合などです。

法定相続人でなくても、故人である被相続人の意志が明確に他の相続人に伝わっている場合や、遺産分割協議により遺産を相続できることが可能だということです。

 

孫にも遺留分侵害請求権はある

孫に遺留分が認められる場合は、代襲相続により法定相続人になったケースです。祖父母の遺産を代襲相続する場合は、父母がすでに他界している場合や、父母が相続人廃除の対象者となっている場合などに認められています。

ただし、父母が相続放棄している場合は代襲相続も認められないので、遺留分も認められません。

遺留分とは、相続人が受取れる最低限度の遺産を保証したものであり、民法によって定められています。

 

孫へ財産を残すなら遺産よりも生前贈与

可愛い孫に少しでも多くの財産を譲渡したいと思う気持ちは、多くの祖父母が思うことです。しかし、多額の贈与や遺贈・遺産相続を行えば、孫は必然的に多額の税を納めることになります。

ここでは、生前贈与や生命保険などを利用し、節税しながら孫に財産を譲渡する方法を説明していきます。

 

孫が遺産相続した場合の税金

孫に限らず、誰が遺産を相続しても遺産総額が基礎控除を上回れば相続税を申告し納めなくてはなりません。期限は、相続開始(被相続人の死去)から10ヶ月以内です。

相続税の基礎控除は「3000万円+600万円×法定相続人の数」で計算します。つまり、法定相続人が4人いる場合は、遺産総額が5400万円を超えていなければ、申告する必要もなく納税の義務も生じません。

しかし、注意したいのは遺産の種類と税務署の調査能力です。そして、相続時精算課税を選択している場合などです。

まず、ひとえに遺産と言っても多種多様にあり、現預金や不動産だけではありません。例えば骨董品や美術品も鑑定評価して遺産に加えなければならず、金融商品も遺産です。税務署は、被相続人の年収などを把握しているので、遺産総額の概算を掴んでいるといっても過言ではありません。

また、金融機関などに対して強制的に調査できる権限をもっているのでタンス預金でさえも調べ上げられます。

税務調査に入られてからでは、時既に遅しです。知らないなどは一切通用しませんし、最悪の場合は脱税とみなされるので正確に申告するように注意しなければなりません。

次に相続時精算課税制度の選択や、相続開始3年以内の贈与にかかる相続税の問題です。

相続時精算課税制度とは、祖父母などから贈与された財産が2500万円までは贈与税が非課税になる制度です。

しかし、遺産総額に相続時精算課税制度で贈与を受けた財産は加算され、結果、基礎控除を上回った場合は相続税が課税されるのです。相続開始3年以内の贈与についても同様に相続税の対象となります。

 

生前贈与の非課税分を利用する

節税を兼ねて孫に財産を渡したい場合に、贈与税の基礎控除内で毎年贈与する方法があります。贈与の基礎控除は年間110万円です。10年続けると1100万円を非課税で贈与することが可能となります。

また、相続時精算課税制度を選択すれば2500万円までは、贈与税が非課税です。しかし、相続時に相続税が課税される可能性があるので、相続税の基礎控除などと照らし合わせて利用すると良いでしょう。

孫に生前贈与するなら教育資金贈与を利用する手段が効率的です。

これは、非課税枠が1500万円あり、一括で贈与することができます。また、直系卑属なら誰に対してでも活用できるのも大きなメリットです。

 

孫と養子縁組をする方法もある

孫と養子縁組すれば、遺言書を残す必要もなく子と同様に遺産を相続させることができます。また、相続税の基礎控除も1人分(600万円)増えるので、遺産総額によっては相続税を支払わなくて済む場合もあります。

通常、孫が相続人となるには、遺言書の効力によるものや直系の父母が他界している場合です。また、父母が相続人廃除などになっており、孫が代襲相続することによっても相続人となります。

もし、直系の父母がすでに他界している状態で祖父母と養子縁組した場合は、父母の代襲相続分(相続優先順位第1位)と養子としての相続分(同第1位)の二重相続資格を持つことになります。

 

生命保険の受取人を孫にする

生命保険には非課税枠があるので、上手く利用すると節税対策になります。生命保険の非課税枠は500万円×法定相続人の数です。

法定相続人が多いほど非課税枠が増える仕組みになっています。しかし、相続人以外の場合は非課税枠が適用されないので、遺言書や養子縁組・代襲相続などをしっかり理解して実行しておく必要があります。

生命保険の非課税枠のメリットは、受取人は1人でも法定相続人の人数分が非課税となることです。

この制度を利用して孫を受取人としておき、遺言書で相続人であることを明確に認めておくと、節税対策しながら孫に財産を残すことが可能となります。

 

孫が未成年の場合の遺産相続

相続は、どのようなタイミングで発生するかは誰にもわかりません。祖父母の遺産を孫が相続する場合でも同様です。必ずしも孫が成人しているとは限りません。

ここで重要なのは、未成年者は遺産相続などに関わる法律行為を自ら行うことができないということです。親権者や親族などが法定代理人として手続きしなければなりません。

 

未成年の孫にも相続権はある

孫が未成年であっても相続権はあります。どのようなケースであっても相続人と認められた段階で相続権も発生します。

民法では、胎児であっても相続の権利を認めています。しかし、未成年者の場合は法定代理人を立てなければ、相続権を行使できません。

 

孫が未成年の場合の遺言書の効力

孫が未成年であっても遺言書の効力は、成人の場合と同様です。遺言書の効力は法定相続人の権利を上回るが、遺留分は侵害できません。また、未成年者の後見人の指定や後見監督人の指定ができます。

未成年の孫に遺産を相続させる場合は、法定代理人の選定や後見人・監督人の指定まで遺言書で定めておくと安心できるでしょう。

 

孫が未成年の場合の遺産分割協議

未成年の孫が遺産分割協議に参加することはできません。法定代理人がその役目を担うことになりますが、親が同様の相続人である場合は、父母であっても代理人になれません。この場合は特別代理人を選任する必要があります。

相続人でない家族や親族であれば特別代理人になることはできます。しかし、利益相反行為が起こりやすいため、特別代理人には第三者でありながら相続のプロフェッショナルである人を選任することをお奨めします。

 

遺産分割協議中に数次相続が起こったら

数次相続とは、遺産分割協議中や遺産分割手続きが終了していない段階で、相続人の誰かが死亡し、次の相続が開始される状態です。

祖父の遺産分割協議が終了していないのに、父が亡くなってしまった場合などが、この数字相続に相当します。要するに、相続が2つ以上重なっている状態であり、遺産分割協議が複雑になる可能性が高くなってしまいます。

 

数次相続における遺産分割協議書

祖父母の遺産を孫が相続する場合に数次相続よって相続人となる場合もあります。例えば、祖父の遺産分割協議中に父が死亡した場合などです。この場合は、父の遺産相続人となり、続柄は子です。

すでに、祖父の遺産相続人となっている場合は、祖父の遺産分割協議と父の遺産分割協議に関わらなくてはなりません。

遺産分割協議書は、それぞれの相続について遺産分割協議書を作成しても良いですし、

複数の相続を1つにまとめた遺産分割協議書を作成しても良いです。相続人が多く、複雑になる場合はそれぞれの相続について協議し、別々の遺産分割協議書を作成するほうがお奨めです。

 

数次相続で孫の遺産分割の割合はどうなる

数次相続によって相続人となった孫の遺産相続割合はケースによって異なります。上の例になぞって説明しますと

  1. 祖父の遺産分割協議中に父が死亡し代襲相続した場合は、父と同じ割合である。
  2. すでに、祖父の遺産相続人となっている場合は、祖父の遺産相続取り分に代襲相続分と父の遺産相続取り分が加算される。要するに3つの取り分があるということ。

1の場合は、数次相続でも1つの遺産分割協議に関わるだけでいいのですが、2の場合は、祖父の遺産分割協議に相続人と代襲相続人の2役で関わり、父の遺産分割協議には、相続人として関わることになります。

 

孫に財産を譲渡する場合の注意事項

孫に財産を譲渡する場合の注意事項として、他の法定相続人の遺留分を侵害するような譲渡は好ましくありません。祖父母が亡くなった後で、遺留分侵害請求によって孫が遺留分を支払うようなことが起きれば、孫は大変辛い思いをする可能性があります。

また、孫が相続税を納めることができないような相続も、孫を苦しめる結果につながります。

孫に遺産を相続させたり、財産を譲渡したりする気持ちは誰でも理解できます。しかし、孫がトラブルに巻き込まれずにスムーズに財産を受取れるようにすることが肝要です。

相続のプロに相談しながら進めると、リスクは大幅に削減できて、孫に負担をかけない遺産相続や財産譲渡が可能となります。

【記事監修】高野友樹

株式会社アーキバンク取締役COO/不動産コンサルティングマスター/宅地建物取引士

不動産会社にて2,000件以上の賃貸売買仲介に関わり、6,000戸の収益物件の管理業務を経験した後、年間で36.9万平米を超える賃貸契約面積を獲得している国内有数の不動産ファンドであるGLR(ジーエルアールインベストメント株式会社)にてAM事業部のマネージャーとして従事。

大規模物件の売買仲介を中心に、投資家へのコンサルティング業務を行い、100億円規模の物件の取引に携わる。2019年より株式会社アーキバンクに参画し、不動産事業部統括責任者として取締役に就任。

不動産投資家の所有物件の買い替えによる資産整理や遺産相続など、その経験と知識を生かしたコンサルティング業務を行っている。

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