独身者の遺産相続とは?相続人はだれになるのか?

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生涯を独身で過ごす人が増えており、内閣府の調査では、男性が約20%で女性が10%とされています。

また、離婚や死別などで独身となり再婚しない人もいますので、独身者の数は想像以上に多いでしょう。

独身者の中には、自分の死後の財産の行方が気になる人もいるかと思います。

今回は、独身者の遺産相続について解説します。

せっかく築いた財産が無駄にならないように記事を進めますので、独身の方は是非御一読してみてください。

(内閣府:生涯未婚率の推移(男女別)

http://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h25/zentai/html/zuhyo/zuhyo01-00-20.html

 

独身者の相続人になるケース

親族に独身者がいると、ある日突然に相続人だと知らされることがあります。血縁が濃くなくても、法事で顔を見る程度の親族であっても、親族であれば法定相続人となる場合があります。

法定相続人には優先順位があります。常に相続人として認められる最優先の相続人が配偶者であり、税制でも最も優遇されています。

そして、優先順位1位が子です。その子が亡くなっていたり、相続人廃除や相続欠格であったりした場合は、孫が代襲相続し相続人となります。

相続順位第2位は直系尊属です。配偶者も子もいない場合は、直系尊属として親や祖父母が相続人となります。

相続順位第3位は兄弟姉妹です。配偶者や直系卑属・直系尊属もいない場合に相続人となります。兄弟姉妹が亡くなっている場合は、その子であり、被相続人からみると甥や姪にあたるものが代襲相続人となります。

また、法定相続人の範囲を超えている親族であっても、遺言書や遺産分割協議によって相続人となる場合もあります。

ここでは、被相続人が独身者であった場合、だれが相続人となるのかなど、様々な相続ケースを解説させていただきます。

 

独身の兄弟姉妹の相続人

兄弟姉妹の中で、誰かが生涯独身であったり、配偶者と別れていて子もいなかったりする場合があります。何らかの要因で独身の兄弟姉妹がいる人は少なくありません。冒頭に申し上げたように男性の20%は生涯独身です。

問題は、独身者の兄弟姉妹が亡くなって被相続人となった場合の遺産相続です。

配偶者もなく法定相続順位1位の子や孫などの直系卑属もいない場合は、父母や祖父母などの直系尊属が相続人となります。

だが、直系尊属もすべて他界している場合は、兄弟姉妹が相続人となります。法定相続人の優先順位に従って相続人が決まる仕組みとなっています。

 

配偶者なしの叔父の相続人

配偶者がいない叔父が亡くなっても、子がいれば子が相続人となります。

しかし、子を成していない場合は、叔父の親や祖父母が相続人です。親も祖父母も他界している場合は、叔父の兄弟姉妹が相続人となりますが、すでに他界している場合は、代襲相続として甥や姪が相続人となります。

視点を変えると自分が相続人となるということです。代襲相続は、子からの代襲相続であれば、子から孫・孫から曾孫・曾孫から玄孫と脈々と続いても認められます。

しかし、兄弟姉妹に関しては次の代まで認められますが、その次の代となると認められません。

 

生涯独身の叔母の相続人

生涯独身者で子もいない叔母が被相続人にとなっている場合は、養子縁組でもしていない限り、相続人は直系尊属となりますが、すでに他界していると叔母の兄弟姉妹が相続人となります。

兄弟姉妹もすでに他界していると叔母からみて甥や姪にあたる者が代襲相続します。つまり、自分が相続人の1人となります。

ここまでが法定相続人となる血縁関係です。従兄弟や大叔父などの法定相続人になることは基本的ありません。

もし、相続人となるのなら、遺言書に相続人と指定されている場合や、特別縁故者として認められたなどの理由があります。

 

被相続人が独身の場合の法定相続分

独身者の法定相続人となった場合、法定相続分が定められています。ただし、法定相続分は民法で定められたものでありますが、あくまでも相続分の基準であると認識してください。

実際の相続は、相続人が1人の場合を除き遺産分割協議での決定が優先されます。遺産分割協議決定書がなければ金融機関から現金を引き出せませんし、不動産の名義変更もできません。

また、遺言書がある場合は、遺言書の内容が最も優先されます。遺言執行人が選定されていている場合もあります。遺言執行人とは、遺言の内容を実現する一切の権限を持ち必要な手続きを行う者です。

遺産執行人が選定されていない場合であっても相続人は、遺言書に従って遺産を分割し被相続人の意志を最も尊重しなければなりません。

ここでは、遺産分割のベースとなる法定相続分に意味や配分について記事を進めさせていただきます。

 

法定相続分とは

法定相続分とは、被相続人の財産を相続するにあたって、各相続人の相続分を民法で定めたものです。実際の相続は、遺言書や遺産分割協議の決定によって決まりますが、調停や裁判となった場合は、法定相続分が基準となります。

遺産分割協議においても、法定相続分が基本的な分割割合として捉えて話し合いを進めるほうが揉め事は起こりにくいでしょう。

しかし、どうしても遺産分割協議で主張したいことがある場合は、全てを伝えたほうが良いです。遺産分割協議が決定したあとで蒸し返すと相続税の期限である相続開始から10ヶ月以内に間に合わない可能性が出てくるかもしれません。

また、親族間でわだかまりを残していれば、後々のトラブルになりかねません。

 

親の場合

独身者である被相続人が親で、自分が子の場合は子が全てを相続することになります。子が複数いる場合は等分に分けて相続します。

相続人が複数となると遺産分割協議を行う必要があります。親の介護など面倒を見てきた人は、その場で遺産の取り分を増やすように主張することも可能です。

子が独身で孫もなく被相続人となった場合は、親が全てを相続します。両親が健在なら父母で1/2ずつ相続です。どちらかが他界している場合は、残った1人が全ての遺産を相続することになります。

 

兄弟姉妹の場合

独身の兄弟姉妹が被相続人となり、親も子もいない場合は兄弟姉妹が相続人となります。法定相続分は10割であり、兄弟姉妹が複数いる場合は、人数で等分することになります。

この場合も相続人が複数いますので、遺産分割協議を行い議決する必要があります。遺産分割協議決定書がなければ遺産相続はできません。

 

叔父や叔母の場合

独身の叔父や叔母の相続人となるということは、自分の親や祖父母もすでに他界していて、叔父や叔母に子も養子もいないというケースです。

この場合の法定相続分は10割で、他に兄弟姉妹や従兄弟がいれば、人数で等分することになります。どのような場合でも、相続人が複数いれば遺産分割協議の行う必要があると改めてご認識ください。

 

被相続人が独身の場合の遺留分

遺産相続において被相続人の意志は最も尊重されると前途しました。独身血族が被相続人となり、遺言書によって全ての遺産が第三者に相続されるとなったら、納得できない親族もいるでしょう。

このような場合には、民法で定められている遺留分侵害請求権を行使することが可能です。ここでは、遺留分と被相続人が独身者である場合の遺留分侵害請求について解説します。

 

遺留分とは

遺留分とは、法定相続人に対して法律で保証された遺産の取り分です。本来、被相続人が自分の財産をどのように処分しようが自由であり、誰にどの程度相続させるかも自由に決められます。

しかし、残された相続人の生活保障面や、財産形成の寄与分などを考慮すれば、相続人を保護する必要もあります。

そこで、被相続人の意志と相続人の保護を両立させたのが遺留分です。遺留分は民法で定められ、遺言書であっても侵害されない効力をもつ相続人の権利です。

 

直系卑属・直系尊属のみが遺留分を認められる

遺留分は、法定相続人全てに認められた権利ではありません。独身の被相続人に子や孫などの直系卑属がいる場合は、それが優先的に法定相続人となり、遺留分も直系尊属であれば認められます。

また、被相続人に子がいない場合は、親などの直系尊属が法定相続人となります。直系存続にも遺留分は認められますので、侵害されれば権利を行使できます。ちなみに直系尊属に認められている遺留分は、遺産総額の1/3です。

遺言書などによって、遺産の1/3が侵害されている場合は、遺留分を他の相続人に請求できます。

(SMBC日興証券:初めてでもわかりやすい用語集

https://www.smbcnikko.co.jp/terms/japan/i/J0211.html

 

兄弟姉妹の場合は無し

遺留分は、配偶者や直系尊属・直系卑属に認められている権利です。従って、法定相続の優先順位第3位である兄弟姉妹には遺留分は認められていません。

兄弟姉妹以外に法定相続人がいない場合は、見ず知らずの第三者が遺言書によって全ての遺産を相続しても抗する権利はありません。遺言書の効力は強力に保護されているとご認識ください。

 

叔父や叔母の場合も無し

独身の叔父や叔母被相続人となった場合も、兄弟姉妹と同様に遺留分は認められていません。叔父や叔母は、親の兄弟姉妹であり、親は法定相続の優先順位第3位です。その代襲相続で相続人となったとしても、遺留分は認められません。

 

だれも相続人がいない場合

孤立死は社会的問題となっていて、年間に約2万7000人もの人が孤独に亡くなっていると推計されています。また、孤立世帯も増加傾向であり、孤立世帯の予備軍である夫婦二人暮らしも増加傾向です。

孤立死の中には、親族が誰もいなくて遺産を相続する人が誰もいない場合もあります。ここでは、相続人が誰もいない遺産の行方や、相続人が不明な場合などの対応を解説します。

(ニッセイ基礎研究所特別研究プロジェクトチーム:「長寿時代の孤立予防に関する総合研究

https://www.nli-research.co.jp/files/topics/42101_ext_18_0.pdf

 

相続財産管理人の選定

相続人が誰もいない状態を相続人不存在といいます。親族がいないだけでなく相続人全員が遺産放棄したり、相続欠格や相続人排除認定されたりして相続人がいない状態も含みます。

相続人が誰もいない場合は、家庭裁判所が相続財産管理人を選定します。相続財産管理人は、被相続人遺産を管理する人を指し、地域の弁護士が選任されることが多いです。

 

相続人探しで官報に掲載

相続財産管理人は、相続人や相続債権者を探すことから始めます。相続人がいるのかいないのか不明な場合は官報で3回広告します。

  • 1回目は相続財産管理人選任の広告
  • 2回目は債権者や受遺者に対して債権を申し出るように広告する
  • 3回目は相続人捜索を広告

1回目・2回目はともに2ヶ月間広告し、3回目は6ヶ月間相続人捜索の広告を行うことになります。6ヶ月経過しても相続人が現れないと相続人不存在が確定します。

 

最終的には国庫に帰属

相続人不存在が確定すると遺産は国庫に帰属することになります。誰に知られることなく財産が国庫に帰属されるのはあまりにも寂しい結末です。

孤立家庭で、相続人が誰もいないなどという悲しいケースが増えるのは決して良い状態ではありません。

遺言書で相続人を指名したりNPO法人に遺贈したりするなど、何かしらのエンディングプランを作成することを強くお奨めします。

 

相続人がいない独身の遺言書は誰が執行する

相続人が誰もいない人が遺言書を認めるときは、遺言執行者を選任しておく必要があります。理由は、自分の死後だれも遺言を執行する人がいないからです。

相続人がいる場合は、相続人の中から遺言執行者を遺言書で指名できます。遺言書で、親族でない第三者を数名相続人に指定してその中から遺言執行人を選ぶことも可能です。

また、遺言執行人に自分の葬儀や墓の管理を依頼する代償として遺産を多く相続させる手段もあります。

しかし、本当に遺言書に従った遺産分割や手続きなどに不安を感じるようであれば、遺言書を作成する相談も兼ねて、弁護士を遺産執行人に選任しておくほうが安心です。普段から懇意にしている弁護士がいるのであれば、尚のこと信頼できるのではないでしょうか。

お金を見ると人格が変わる人も多い世の中です。弁護士が100%信頼できるとは言えませんが、遺言書に関して最も信頼できる職業であることに変わりありません。

仮に、遺言書で全財産を寄付するなどと認めていても、信頼できる遺言執行人がいなければ遺言書さえも消え失せる可能性もあります。

また、相続人不存在で遺産を国庫に帰属させるのは惜しいと思うのであれば、遺言書を正確に作成し信頼できる人に託す必要があります。

 

独身だからこそエンディングプランを

独身者や親族がいない人ほどエンディングプランは重要です。親しい人に遺産を相続させたくても遺言書などでその旨を指名しておかねば、その意志は、だれにも伝わらず心ならずも遺産は国庫に帰属されます。

また、ボランティア団体へ遺産を遺贈したくても遺言書を作成し、遺言執行人を専任しておかないとだれも遺言を執行してくれず、相続人不存在とみなされます。

人生をかけてせっかく築き上げた財産を最後まで自分の思うように財産分与するのであれば、当サイトの相続のすゝめでご相談ください。

貴方の意志を最大限に活かしたエンディングプランを立て、具現化させる手助けになるはずです。

【記事監修】高野友樹

株式会社アーキバンク取締役COO/不動産コンサルティングマスター/宅地建物取引士

不動産会社にて2,000件以上の賃貸売買仲介に関わり、6,000戸の収益物件の管理業務を経験した後、年間で36.9万平米を超える賃貸契約面積を獲得している国内有数の不動産ファンドであるGLR(ジーエルアールインベストメント株式会社)にてAM事業部のマネージャーとして従事。

大規模物件の売買仲介を中心に、投資家へのコンサルティング業務を行い、100億円規模の物件の取引に携わる。2019年より株式会社アーキバンクに参画し、不動産事業部統括責任者として取締役に就任。

不動産投資家の所有物件の買い替えによる資産整理や遺産相続など、その経験と知識を生かしたコンサルティング業務を行っている。

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