親の遺産相続に関わるエトセトラ!揉めないためのケーススタディ

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親の遺産を相続することは正当な権利ですが、リスクも相続することがあります。相続人が多数いる場合や、相続させたくない親族がいるケースがあり実情は複雑な場合が多くあります。

今回は、親の遺産についてあらゆる角度から解説し、親の遺産相続について揉め事が起こらないように記事を進めさせていただきます。

スムーズな遺産相続の一助になれば幸いです。

 

親の遺産を相続する

親の遺産を相続するということは、遺産相続の中でも最も多いケースです。

しかし、人の数だけ個性があり、家族の数だけ生活様式が違うように、親の遺産相続であっても多種多様な相続があります。

その中で、よくあるパターンを説明しますので、遺産相続に関する捉え方のベースとしてください。

 

一般的な親の遺産相続

最も一般的な親の遺産相続は、法定相続分で分割する方法です。法定相続分とは被相続人の財産を相続するに当たり、各法定相続人の取り分を民法によって定められた割合です。被相続人との血縁関係が深いほど割合は高くなっています。

この法定相続分で遺産分割するメリットは、法に則って分割しているので異論が出にくく揉め事が起こりにくい点です。

仮に問題が起こったとしても、法によって守られるので、大事にはなりにくいです。また、問題を起こした相続人も、最終的には法に従わざるを得ません。日本は法治国家です。

 

遺言書と遺留分の関係

親が遺言書を残していたなら、その内容に従って遺産相続すると良いでしょう。正式な遺言書は、法定相続よりも優先され法的な効力も持っています。相続を円滑に進める為に被相続人が残したものなので、その意志を尊重すべきものです。

しかし、子である自分に、1円も遺産相続できない内容であった場合は、当然ながら納得できないでしょう。そのような場合には、遺留分が侵害されているので、相続人に遺留分請求することができます。

遺留分は、遺言書であっても侵害できない相続人の権利ですので、正当に請求すれば良いです。

 

親の遺産を兄弟だけで相続

親の遺産を兄弟だけで相続する場合とは、両親が死亡したり、遺言書によって遺産分割したりするケースで起こる相続方法です。

遺言書があれば、分割方法は遺言書に従えば良いです。しかし、全ての財産を長男にだけに譲るなどの遺言内容であり、他の兄弟の遺留分を侵害している場合は、遺留分侵害額請求権を行使できます。

法定相続分に従って分割する場合は、兄弟姉妹の人数で均等割です。法のもとでは長男であっても、他の兄弟姉妹と同じ身分として扱われます。

 

親の遺産を1人で相続する

親の遺産を1人で相続するケースとして考えられるのは、子が1人で両親が他界した場合です。また、遺言書により全ての遺産を1人にだけ譲ると記されており、配偶者や、他の子を含む法定相続人全てが遺言書の内容に納得した場合などです。この場合には、相続放棄の手続が必要となるので憶えておくと良いでしょう。

 

親の遺産にもいろんなケースがある

親が残してくれる財産にもいろんなケースがあります。有り余るほどの遺産であったり、全く遺産がなかったりするケースもあります。

多額の負債を抱えていることを知らずに遺産相続してしまい、後で返済に追われるケースも珍しくありません。子供に全ての財産を明確に知らせている親は約13%で、全く教えていない親は約50%とされています。

ここでは、親の遺産にまつわる様々なケースを説明させていただきます。知っておけば、当事者になったときに慌てなくてすむ情報も合わせて説明します。

 

親の遺産で生活できるケース

遺産相続の平均額は約2100万円とされています。これは、現預金だけでなく、全ての遺産を評価し現金に換算したものです。

人生100年時代とはいえ、これだけの遺産に、自身の預貯金や退職金・年金を足していけば、無理に働く必要がなくなる人も少なくありません。

ともあれ、遺産相続は大金が動きます。中には億単位の遺産を相続する人もいるでしょう。

相続税を納めても親の遺産だけで十分に贅沢な暮らしができます。しかし、思いもよらぬ大金を手にして、身を滅ぼす人は後を絶ちません。多額の遺産を相続しても、自制を心がけるほうが良い人生を送ることができるのではないでしょうか。

 

親の遺産がない場合もある

親が貧困であったり、長く疎遠になっていたりした場合、遺産が全くないという場合もあります。また、子に財産を残さない親も増えています。

遺産総額が少なければ少ないほど、骨肉の争いが起こる可能性が高くなるというデータもあります。特に、遺産が家だけという場合は、遺産分割協議で揉める種になる可能性が非常に高いです。

少額の遺産で揉めるのなら、終活で綺麗に財産を整理して葬式費用だけ残す。このようなエンディング計画を立てる親が増える理由もそこにあります。

 

相続税を申告する必要がある場合

遺産を相続した全ての人が相続税を納める訳ではありません。一般的に遺産を相続した人の8%程度が相続税申告対象者とされています。

参考:国税庁 平成28年分の相続税の申告状況について

https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2017/sozoku_shinkoku/index.htm

相続税は、遺産総額を計算し基礎控除を超えている場合に申告する必要があります。つまり、基礎控除以下なら遺産相続の申告は必要なく、相続税を納める必要もありません。

相続税の基礎控除の金額=3000万円+600万円×法定相続人の数

上記のように基礎控除が定められています。法定相続人とは、遺産相続する資格のある人として民法に定められている人たちです。内容は、配偶者・子・直系尊属・兄弟姉妹です。

被相続人が残してくれた種々の財産を合算して基礎控除を下回った場合は、相続税の申告をする必要はありません。しかし、財産とみなされる多種多様なものを、見逃さないように注意して遺産総額を弾き出さないと、後に税務署から「お尋ね」が届き慌てなくてはなりません。

 

親の介護や面倒をみない兄弟の遺産

親の面倒も介護も全くしなかった兄弟姉妹が、自分と同じ遺産を受け取るとなると心穏やかでない人もいるでしょう。

このような不義理な兄弟姉妹であっても法定相続人であるため、遺産を受け取る権利はあります。また、親が遺言書に相続させないと記してあっても遺留分を受け取る権利があり、遺留分は遺言書の効力であっても侵害されません。

他の兄弟姉妹よりも多くの遺産を受け取りたい場合は、贈与税控除内で毎年贈与を受けたり、遺産分割会議で寄与分を主張し他の兄弟姉妹に認めさせたりする方法があります。

しかし、遺産分割会議で遺言書の内容に従うように説得することが、最もスムーズに収まる可能性が高いです。

 

親の負の遺産も相続するの

親の遺産相続で悩ましいものの1つに負の遺産があります。遺産総額がマイナスであって相続放棄を選択した場合は、親が他人や他社に迷惑をかけたことを放置したことになります。親の汚名返上ができないのです。相続人が到底払えない負債であれば、致し方ないかもしれません。

しかし、相続人が支払える範囲の負の遺産なら、親に代わって支払うほうが気持ちもスッキリするのではないでしょうか。いずれにしても親族でよく話し合って決めなければならない問題です。ちなみに、相続放棄の手続は、相続の開始を知った時から

3ヶ月以内なので、あまり時間的猶予がないことも認識する必要があります。

 

残す人によって違いがある

財産を残してくれる親によっても相続の内容が変わる場合があります。また、遺言書などによって、法定相続と違った相続の形になる場合もありますのでケースごとに説明させていただきます。

 

父親が亡くなった場合の遺産相続

遺産相続に置いては、法定相続分を理解しておく必要があります。このベースを理解していないと後のトラブルを未然に防ぐことが難しくなります。

父親が死亡した場合の法定相続人と法定相続分

  1. 母親が存命で子が2人の場合
    母親が1/2で子がそれぞれ1/4ずつ
  2. 母親がすでに他界していて、子2人の場合
    子がそれぞれ1/2ずつ

子は法定相続で第一順位となりますので、父親の遺産を相続する権利が発生します。ただし、被相続人である父親が、遺言書で遺産分割について遺言を残していた場合は、遺言に従うほうが良いでしょう。

 

母親の遺産を相続する場合

母親が死亡した場合、法定相続分は父親が死亡した場合と同じです。父と母が入れ替わるだけです。

ただし、父親が先に他界していて、後に母親が亡くなった場合は、家や土地で問題が起こる可能性があるので先に手を打っていたほうが良いでしょう。

 

継父・継母の遺産を相続する場合

継父や継母が亡くなった場合、子は血縁がないので法定相続人にはなりません。よって、何もしていなければ遺産相続はできません。遺産相続の権利を得るためには、養子縁組をしておく必要があります。養子縁組によって、実子と同等の法定相続分が認められます。また、遺言書で継父や継母に遺産を相続できるよう認めてもらうしかありません。

 

父親の遺産を母親だけが相続

父親の遺産を母親だけが相続するケースは意外と多いです。理由は、相続税の配偶者控除の金額が大きいからです。

配偶者控除は、1億6000万円または、配偶者の法定相続分相当額のどちらか高いほうが控除されます。

通常の基礎控除(3000万円+600万円×法定相続人の数)と比べても非常に大きな優遇措置です。

しかし、子がいて母親だけが遺産を相続するとなると手続きも必要です。まず、母親を除く全ての法定相続人が遺産相続放棄の申告を被相続人の住民票がある家庭裁判所に届け出なければなりません。それも、相続開始から3ヶ月以内に提出しなければ、単純承認とみなされ法定相続に従って遺産相続することになります。

また、配偶者控除を受けるためには、非課税と判っていても必ず相続税の申告書を提出しなければなりません。

 

母親の遺産を父親だけが相続

母親の遺産を父親だけが相続する場合は、母と父が入れ替わるだけです。母親がそのように遺言書を残している場合もあります。

しかし、その遺言に納得できなければ、子は父親に遺留分を請求することが可能です。

その場合、遺留分は遺産総額の1/2となります。子が二人の場合は1/4ずつです。いずれにしても、遺産相続において配偶者や子は他の相続人よりも優先されていることを知っておくと良いでしょう。

 

多種多様な遺産相続を解説

遺産相続に同じ内容はありません。相続の件数分だけ、相続の内容が違っています。故に、遺産相続については、専門家に任せる人が90%以上を占めています。しかし、プロに任せるにも、自分である程度のことを把握していないと思ったような相続の形にならない場合もあります。ここでは多種多様な相続の中でよく問題が起こりやすいケースを説明させていただきます。

 

子の遺産を親等が受け取る場合

あってはならないことですが、子が親よりも先に亡くなる場合もあります。その場合、法定相続人としての親の立場は直系尊属であり優先順位第2位となります。

  • 配偶者と孫がいる場合は、配偶者と孫が全てを相続
  • 配偶者がいないが孫がいる場合は、孫が全てを相続
  • 配偶者しかいない場合は遺産の1/3を受け取る
  • 配偶者も孫もいない場合は全ての遺産を相続

上記の内容で子の遺産は相続されます。遺言書があれば、子の意志を尊重しその内容に従って遺産を分割すると良いでしょう。

 

遺産を配偶者や子以外の親族で分ける場合

被相続人に配偶者がいなくて、子もいない場合は親族で遺産を相続することになります。その場合、優先順位第2位の両親が相続人となり、片親だけだとその親が全てを相続します。もし、両親がすでに他界している場合は祖父母が法定相続人です。

兄弟が全ての遺産を相続できるケースは、被相続人に配偶者も子の親も祖父母もいない場合か、遺言書により相続人と指名されている場合です。

 

子の遺産を親や親族分ける場合の優先順位

子の遺産を親などの親族が相続する場合でも、法は優先順位を定めています。配偶者がいかなる場合も最優先です。以下を参照ください。

優先順位第1位:子(子が死亡している場合は孫、曾孫)

優先順位第2位:父母(父母が死亡している場合は祖父、曽祖父母)

優先順位第3位:兄弟姉妹(兄弟姉妹が死亡している場合はその子(甥・姪))

子に配偶者や子がいない場合は、直系尊属であり、優先順位第2位である父母が遺産を相続する。

 

親権のない子への遺産はどうなるの

親権のない子であっても、被相続人の子であることに変わりはありませんので、法定相続人として認められています。親権と相続は違った法であると認識していれば、間違いはありません。因みに子は、配偶者に続く優先順位第1位と定められています。

 

遺産の親子間の窃盗は犯罪

子が遺産を盗んでも、親が盗んでも刑法上は親族相盗が適用されて裁かれることはありません。理不尽と思う人も多いですが、親子間や夫婦間などの親族間では刑が免除されます。

しかし、盗まれたという証拠があれば、民事で損害賠償を請求することは可能です。どうしても許されないと思う窃盗であれば、民事訴訟で損害賠償請求などを起こすと良いでしょう。

 

遺産を親に渡したくない場合は

自分が築いた財産を親に相続させたくない場合もあります。特に虐待を受けて育ったり、見放されて養護施設で育てられたりした場合は尚更です。親に遺産を相続させないためには相続人から除外しなくてなりません。

相続人の資格を奪う方法は2つあります。

  1. 相続人廃除を家庭裁判所に請求するか遺言書にその内容を認める。
  2. 相続欠格に該当する。

相続人廃除は、虐待を受けたなどの事由が明確であれば、認められる可能性は高いです。事前に家庭裁判所で請求するか、遺言書によって遺言執行者が家庭裁判所へ請求することになりますが、確実性を求めるなら事前に請求するほうが良いでしょう。

 

親の面倒と引き換えに遺産相続するケース

親の面倒をみるので遺産は全て長兄が相続するというのはよくあるケースです。しかし、トラブルの種もここに潜んでいます。

兄弟姉妹の会議でこのような決定があり、全ての者が納得した場合は、相続放棄の意志を書面で残し、できれば公正証書にしておくと良いでしょう。

口約束は、実際の遺産相続時に問題になることが非常に多いです。可能なら、親が同様の内容で遺言書を認めて残しておくとさらに安心です。

 

実家の遺産相続について

親の遺産相続で最も問題になるのが、実家の相続です。しかも、他に目ぼしい遺産がない場合は、実家を売るのかどうかで揉めに揉める原因となります。思い出が残る実家を手放したくない兄弟もいれば、金に困っているのですぐにでも売却して現金化すべきと言う兄弟もいるかもしれません。

普段は、実家を遺産として見る家族はいませんが、相続となると実家も遺産になります。このような事態にならないように予め家族でよく話あっておくと良いでしょう。また、議事録のようなものも残しておくべきです。

遺産分割協議で、その議事録は役に立ち、調停でもそのような記録があれば優位に働きます。

 

相続税が仮に0円でも安心は禁物

遺産総額を算出し、基礎控除以内だったので相続税は0円だった。しかし、そこで安心してはなりません。たとえ相続税がかからなくても、遺産があって相続人が複数いると遺産分割協議を開き、相続人全員が納得しなくてはなりません。親の遺産を複数の兄弟で分ける場合など特に問題が起こりやすいです。

しかし、遺産分割協議決定書がなければ、遺産は相続できず、金融機関から現金を引き出すこともできません。

遺産相続で問題が起こったら専門家に相談することをおすすめします。意見の違う相続人の間に入り、遺産分割協議を円満に進めることが可能です。

転ばぬ先の杖を打つ場合でも、遺産相続のプロである当サイト「相続対策のすゝめ」であれば、あらゆる悩みはすぐに解消するでしょう。

【記事監修】高野友樹

株式会社アーキバンク取締役COO/不動産コンサルティングマスター/宅地建物取引士

不動産会社にて2,000件以上の賃貸売買仲介に関わり、6,000戸の収益物件の管理業務を経験した後、年間で36.9万平米を超える賃貸契約面積を獲得している国内有数の不動産ファンドであるGLR(ジーエルアールインベストメント株式会社)にてAM事業部のマネージャーとして従事。

大規模物件の売買仲介を中心に、投資家へのコンサルティング業務を行い、100億円規模の物件の取引に携わる。2019年より株式会社アーキバンクに参画し、不動産事業部統括責任者として取締役に就任。

不動産投資家の所有物件の買い替えによる資産整理や遺産相続など、その経験と知識を生かしたコンサルティング業務を行っている。

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