離婚後に遺産相続が発生!元妻や子は遺産を受け取れるのか?

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日本の離婚率は、35%程度です。平成27年度版厚生労働省の調査では1年間に22万件もの離婚があったとされています。

昭和の時代に比べて、離婚に対するハードルも下がっています。しかし、離婚によって失われた権利や、離婚後も維持している権利を理解している人は意外と少ないようです。

特に、遺産相続については、理解していないと相続できる遺産まで失うことになりかねません。今回は、離婚と遺産相続について解説します。自身が保有している権利の再確認となれば幸いです。

(厚生労働省:人口動態統計月報年計(概数)の概況の4と5)

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai15/dl/gaikyou27.pdf

 

離婚した元夫・元妻は法定相続人ではない

離婚した元夫・元妻は法定相続人ではない

結論から述べると、離婚した元夫や元妻が死亡しても法定相続人とはなりません。なぜなら、離婚と同時に赤の他人となるからです。

離婚後も仲の良いカップルだったとしても、法的には何の関係もない間柄とみなされます。仮に、離婚後したが内縁関係は続いたとしても、内縁関係では法定相続人になれません。

離婚届や婚姻届は、たかが紙切れ1枚ですが、その紙切れ1枚に大きな法的効力があることを認識しておくと良いでしょう。

 

元夫・元妻の遺産にまつわる相続ケース

元夫・元妻の遺産にまつわる相続ケース

すでに離婚した元夫や元妻の遺産については、相続できないことは理解いただけたでしょう。しかし、遺産相続は多種多様ですので、元夫・元妻の遺産を相続できる可能性もあります。ここでは、離婚後の遺産相続について、よくあるケースを説明します。

 

遺産を元夫・元妻が遺産を受取れるケース

元夫や元妻は、法定相続人にはなれないと述べましたが、遺産を全く受け取れない訳ではありません。また、相続人でなくとも遺産を受取れる可能性があります。

  • 被相続人である元夫や元妻が、遺言書に遺産を相続できるように記している場合は、相続人となれる。
  • 被相続人である元夫や元妻が、元の結婚相手に遺贈するように遺言書に記している場合は財産を受取れる。
  • 被相続人が、元の結婚相手を死亡生命保険の受取人としていた場合は保険金を受け取れるので、実質的に遺産を相続したことになる。

このように、遺言書や生命保険を使って、元の結婚相手に遺産を譲渡する例は少なくありません。ただし、再婚している場合は、再婚相手が理解して承諾できるような内容の遺産譲渡でなければ、被相続人の死後にトラブルが起こる可能性は高まります。

 

遺産を実の子が相続する

夫婦が離婚しても子の立場は法律上何も変わることがありません。子が未成年であれば、夫婦のどちらかが親権を持つことになるだけです。

相続においても同様で、元夫や元妻が亡くなった場合は、子はどちらの親が亡くなっても法定相続人と認められ、その相続優先順位は第1位です。

また、遺留分も認められます。故に、遺言書で子に遺産を相続させないとしても、子は遺留分を請求することができます。

 

元妻の連れ子だった場合は相続人ではない

元夫の子であっても、元妻の子であっても、子が直系卑属でなければ遺産相続の権利はなく法定相続人としても認められません。これは、婚姻中であっても同様で血族関係のない連れ子に遺産相続権はありません。

どうしても遺産を相続させたい場合は、元夫や元妻が遺言書に相続人として認めると記載するか、養子縁組することです。遺言書は、法定相続人を超えた効力をもっており、養子となれば実子と同じ扱いとなります。

ただし、離婚後に養子縁組が解消されていた場合は、実子と同じ扱いにはなりません。

 

元夫の遺産を孫が受け取るケース

元夫との間にできた子が先に他界していて、後に元夫がなくなった場合で孫がいれば、孫は子の遺産相続分を代襲相続できます。

代襲相続とは、相続人になるはずの人が死亡や相続人廃除などの理由で相続できない場合に、相続人の子が代わりに相続する制度です。

代襲相続が起こると、相続人の数が増える場合が多く、結果的に遺産の取り分が少なくなったり、遺産分割協議が長引いたりするケースもあります。

代襲相続については、元夫を元妻に置き換えても内容は同じです。離婚しても、子や孫は直系卑属であるということを理解しておくと相続問題を整理しやすいでしょう。

 

子の視点から見る離婚した親の遺産相続

子の視点から見る離婚した親の遺産相続

離婚した夫婦間の遺産相続について説明してきましたが、子の立場から見ると更に理解を深めることができます。

また、子に遺産相続についての説明をするときに役立つかもしれません。ここでは、視点を子供に変えて遺産相続の解説を進めさせていただきます。

 

離婚した父親の遺産相続

父母が離婚して母親に育てられた子であっても、父親が亡くなれば法定相続人として遺産を相続できます。

生活を共にしていなくても、子の立場は変わりません。故に、遺言書などで相続放棄を迫られても承諾する必要はありません。もし、遺産分割が不当であれば遺留分を請求できる権利もあります。

 

離婚した母親の遺産相続

父母が離婚して、父親に育てられた場合でも、母親が亡くなれば法定相続人と遺産を相続できます。要するに子は、父母が離婚しても、父方・母方を問わず両方の直系卑属なのです。故に、子が先に亡くなれば、離婚した父母が直系尊属として法定相続人と認められる可能性もあります。

 

離婚した継父・継母の遺産

離婚した後に亡くなった父親が継父だった場合は、元々継子なので血族ではなく直系尊属でもありません。故に相続人としても認められません。

ただし、遺言書で相続人と認められていたり、遺産分割協議において相続が認められたりする場合があります。遺産分割協議の決定事項は、法定相続よりも効力があり、遺言書の効力は遺産分割協議よりも大きいのです。これは継母の場合も内容は同じです。

 

養子縁組をした父母の遺産相続

養子縁組した場合は、実子と同様に養父母の法定相続人と認められます。さらに、実親との親子関係も消滅しないので、実の父母が死亡した場合でも法定相続人として認められます。要するに、二重に相続できるということです。

ただし、特別養子縁組の場合は、実親との親子関係が消滅し、養父母が実親となるので、養父母の法定相続人となりますが、実親の法定相続人は認められません。

 

元夫・元妻の親の遺産相続について

元夫・元妻の親の遺産相続について

離婚した夫婦の中には、義父母と非常に良好な関係を築いているケースもあります。離婚後も実の父母のごとく面倒をみている者もいるでしょう。

しかし、元義父母とは、離婚時点で赤の他人です。元義父母の遺産相続においても赤の他人として扱われます。ここでは、元義父母の遺産相続について説明させていただきます。

 

元義父や元義母の遺産は相続できない

離婚した元夫や元妻の親、つまり元義父母の遺産については、法定相続人とは認められません。夫婦であっても離婚した時点で赤の他人となります。ましてや、その父母である義父母の遺産となると法的に認められることはありません。

 

元夫・元妻の親の遺産を相続する方法

元義父母の遺産は相続できませんが、離婚した後も、元義父母と良好な関係を続けている場合などであれば、遺言書によって相続人と認められる場合があります。また、相続人と認められなくても遺贈によって財産を譲渡される場合もあるかもしれません。

遺言書の効力は法定分を超えているので、遺産分割協議においても最も尊重されるべきものとして扱われます。

遺言書がなくても、遺産分割協議において、元義父母と良好な関係を結んでいる元夫や元妻が遺産分割の対象者となる場合もあります。遺産分割においては、法が最優先ではないのです。

 

元夫・元妻が他界していたら元義父母の遺産は?

離婚した夫婦がすでに他界している場合では、元義父母が亡くなったときは、遺産分割はいくつかのケースに分かれます。

  • 元夫婦に子がいれば、元義父母の孫に当たるので直系卑属となり、法定相続人と認められる。
  • 元夫婦に子がなければ、元義父母の親が直系尊属なり、法定相続人となる。その親も他界していた場合は、元義父母の兄弟が法定相続人となる。
  • 上記に該当するものが誰もいない場合は、法定相続人なしとなる。元義父母の面倒を献身的にみていた場合は、特別縁故者となり得ることもあるので、家庭裁判所に申告すれば相続人と認められる場合もある。
  • 法定相続人が誰もいない場合は、地域の弁護士が相続財産管理人として家庭裁判所から専任される。そして、誰も相続人がいなければ、最終的に国庫に帰属することになる。

元義父母に限らず、血族が少ない場合は、できるだけ遺言書を残すように努めたほうが良いでしょう。せっかく築いた財産も無縁となり、国庫に帰属されるのであれば、NPOに遺贈するなどの方法を選択し、活きた財産となってその人が生きた証となるでしょう。

 

離婚後に子が亡くなった場合の遺産相続

離婚後に子が亡くなった場合の遺産相続

親よりも先に子が亡くなるほど悲しいものはありません。しかし、子に財産があれば、遺産相続は避けられないことです。

子が結婚している場合や、孫がいる場合など様々なケースがあります。子に配偶者がいる場合と配偶者がいない場合では相続の内容が異なります。

夫婦は離婚しているとはいえ、子からみればどちらも直系尊属に当たります。ケースによっては法定相続人となります。ここでは、子が先に亡くなった場合の相続ケースで配偶者がいる場合といない場合を解説していきます。

 

孫がいれば孫がすべて相続

子に配偶者がいて、孫がいるケースでは子の配偶者が最も優先される相続人で孫が優先順位第1位となります。離婚した夫婦は法定相続人ではありませんが、遺産分割協議に参加することはできるでしょう。

子の配偶者が離婚や死別でいない場合で、孫がいる場合は子の遺産は全て孫が相続することになります。孫が複数いる場合は均等に分割することになります。

 

孫がいない場合

子に配偶者がいて孫がいない場合は、配偶者と直系尊属である離婚した夫婦が法定相続人となります。

子に配偶者がいない場合で孫もいない場合は、離婚した夫婦が法定相続人となり、分割は均等です。しかし、子の親権を持っており、子を育てた方に多くの遺産を分割するほうが望ましいでしょう。

 

別居中・離婚調停中の遺産相続

別居中・離婚調停中の遺産相続

別居中や離婚調停中で、事実上夫婦と言えない期間中に、遺産相続が起こったらどうなるか当事者で理解している人は少ないかもしれません。

ここでは、このような曖昧な期間中に遺産相続が起こった場合の相続につて解説させていただきます。

 

配偶者が亡くなった場合

別居中であっても離婚調停中であっても離婚届を出すまでは、法的に配偶者であることに変わりはありません。故に、この期間にどちらかが亡くなった場合は、最優先の遺産相続人となります。

民法では、法律上の婚姻関係が続いている限り、事実上離婚しているような状態であっても残された配偶者は、当然のように法定相続人と認めています。

しかし、事実上離婚状態の配偶者の遺産を相続するのが嫌だとなれば、相続開始3ヶ月以内に相続放棄を家庭裁判所申告すれば良いです。また、遺産分割協議においてそのような旨を他の相続人に伝えれば相続を放棄できます。

また、別居や離婚調停中に自分の遺産を離婚予定の配偶者に相続させたくないと思われるなら遺言書にそのように認めれば良いでしょう。しかし、配偶者の遺留分を侵害することになるので、他の相続人が遺留分侵害請求される恐れはあります。

 

配偶者の親が亡くなったケース

別居や離婚調停中でなくても配偶者の親の遺産は配偶者が相続します。当然ながら義理の関係である者に遺産相続の権利はありません。

しかし、問題なのは離婚調停における財産分割となります。夫婦の財産には共有財産と特有財産があります。離婚に伴う財産分割は、このうち共有財産のみです。遺産相続で得た財産は特有財産となるので、離婚する配偶者に分割する必要はありません。

 

元妻が親権を持っている子に相続させたくない場合

元妻が親権を持っている子に相続させたくない場合

子の親権を母親が持つのは良くあるケースです。

しかし、その後再婚し再び子をなした場合、親権のない子には自分の遺産を相続させたくない。現在一緒に生活をしている子に相続させたいと思われる人も、もしかしたらいるかもしれません。

ここでは、親権のない実子に遺産を相続させたくないと思われる人に、それが如何に難しいかを解説します。ちなみに父親と母親が入れ替わっても内容は同じです。

 

絶縁だけでは法的効力はない

今ではあまり聞かれませんが「絶縁状を叩きつけた」や「勘当だ」などというドラマや映画のセリフがあります。親権がない子に遺産を相続させたくない為にこのような行為をしても無意味です。絶縁など法的な効力は何もありません。

ただし、どうしても親権のない子に遺産を相続させたくないと思うのであれば意志は伝えておく必要があります。

また、他の親族にも伝えておくとよいでしょう。親権のない子であっても法的相続人ですが、遺産分割協議でその意志は反映される可能性はあります。

 

遺言書よりも効力がある遺留分

遺言書に親権のない子に遺産を相続させないと認めることは有効です。しかし、子には遺留分があるますので、遺留分を請求された他の相続人は遺留分を渡さざるを得ません。遺留分は相続人の最低限の権利ですので遺言書でも侵害できません。

しかし、何もしないよりは効果があります。そこまで、遺産相続させたくないと父が思っているなら相続放棄をする可能性もあるからです。

 

相続廃除は難易度が高い

残る手段は相続欠格と相続廃除です。相続欠格は被相続人に危害を加えたり、生命を脅かす行為をしたりした者に下されるものであり、被相続人の意志に関係なく成立するものです。親権のない子とそのような接触があることは通常考えにくいものです。

相続廃除は、被相続人に対して重大な侮辱行為があったり、被相続人への虐待行為を行ったりした者を相続人から排除するように家庭裁判所に申請します。

しかし、これも親権がない子とそこまで濃厚な接触があるとは考えにくく、裁判所が簡単に相続排除を認める可能性はかなり低いと認識されると良いでしょう。

要するに、被相続人への暴力や強要などの犯罪行為が認められないと相続人から排除できないのです。仮に相続廃除が認められても、孫がいれば代襲相続することになります。

逆に言えば、何も問題のない子を相続人から外そうとする行為自体が愚かな行為です。

離れていても、親権がなくても子は子であり、成人するまで責任を持つのが親の義務でもあります。ましてや、特別な事情がないのに遺産相続から排除させるのは非難に値する行為と取られる可能性が高いでしょう。離婚し、親権がなくてもコミュニケーションをとり、そのような感情にならない親子関係を築くことが望ましいです

 

離婚後の遺産相続は問題が山積

離婚後の遺産相続は問題が山積

離婚後の夫婦間の遺産相続にはトラブルがつきものです。離婚すれば夫婦は赤の他人となりますが子は直系卑属です。再婚してなした子も直系卑属ですので、血族絡みの遺産相続トラブルに心情的なものが絡んでくると遺産分割協議は紛糾します。

離婚歴があって、それぞれの元妻や元夫との間に子がいる人は、予め遺産相続についてプランを立てることをお奨めします。

遺産相続は民法や相続税法などで定められたルールがありますが、難解なものが多いです。そこに、遺産分割のトラブルが絡むと相続のプランさえもスムーズに立てられないかもしれません。

本サイト「相続対策のすゝめ」では遺産相続に関する記事を多く今後も掲載していきます。あなたの相続プランの手助けになることを願っております。

【記事監修】高野友樹

株式会社アーキバンク取締役COO/不動産コンサルティングマスター/宅地建物取引士

不動産会社にて2,000件以上の賃貸売買仲介に関わり、6,000戸の収益物件の管理業務を経験した後、年間で36.9万平米を超える賃貸契約面積を獲得している国内有数の不動産ファンドであるGLR(ジーエルアールインベストメント株式会社)にてAM事業部のマネージャーとして従事。

大規模物件の売買仲介を中心に、投資家へのコンサルティング業務を行い、100億円規模の物件の取引に携わる。2019年より株式会社アーキバンクに参画し、不動産事業部統括責任者として取締役に就任。

不動産投資家の所有物件の買い替えによる資産整理や遺産相続など、その経験と知識を生かしたコンサルティング業務を行っている。

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