介護した人は他の相続者に「寄与分」を請求できる!新しい制度を解説

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「介護をした人は遺産の相続はできるのか」「介護によって遺産相続の恩恵は変わるのか」気になる人もいるのではないでしょうか。

遺産相続はこれまで血縁関係にあるものほど遺産の恩恵が大きくなる傾向にありましたが、近年新しい制度ができたことで、そのような問題が解消されつつあります。

この新制度ができたことで義理の両親の介護などを懸命に行っていた場合、他の相続人よりも多く遺産を受け取れる可能性があります

この記事では介護した相続人が遺産を多く受け取る方法やその条件、手順について解説します。

介護に貢献した人が少しでも適切な相続を行う参考にしていただければ幸いです。

 

介護した相続人が遺産を多く受け取る方法

介護した相続人が遺産を多く受け取る方法

介護した相続人が遺産を多く受け取る方法としては大まかに2つの方法があります。

基本的には遺言書を作成してもらうことがおすすめですが、遺言書が作成できなかった場合でも、相続人が遺産を多く受け取る方法がないわけではありません。

ここでは介護した相続人が遺産を多く受け取るための方法を解説します。

 

被相続人(介護されている人)による遺言

介護されている人がまだ生きている場合には、その人に遺言書を作成してもらい、「介護した相続人に遺産を多く遺す」という趣旨の記載をしてもらう必要があります。

遺言書は相続の内容を決定する際に法定相続分よりも優先されるため、その人に対して遺産を増やすことができます。

遺言書を作成する際に注意するべき点はあるものの、遺言書があれば遺産相続の話をトラブルなく進めやすいため、可能であれば遺言書を準備してもらうのが最もスムーズに話が進むでしょう。

 

被相続人が死亡している場合は遺産分割協議を行う

ただし、すでに介護した人が死亡している場合には、遺産分割協議にて、自分の介護による貢献を相続に反映させるよう主張することができます。

このときには自分がその人にどのくらい寄与したのか、その寄与分を主張するのがポイントです。

寄与分とはなくなった人の事業や介護にどのくらい貢献したのかという主張できる制度のことです。

このときには具体的な証拠がないと主張が認められにくいため、日々の介護の記録や日記、写真などを残しておくとよいでしょう。

遺産分割協議での話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に遺産分割と寄与分に調停や審判を求めることになります。

 

「特別寄与分」の条件は3つ

「特別寄与分」の条件は3つ

2019年7月1日から施行された「特別の寄与の制度」によって相続人ではない人でも、介護に貢献していれば、相続の恩恵を受けられるようになりました。

これは直接遺産を相続するのではなく、相続人に対して介護での寄与に見合った割合を請求できるといったものです。

ただし、特別寄与分を請求するためにはいくつか条件があり、それを全て満たしていなければ、特別寄与分は請求できません

ここではその条件3つを次で詳しく解説します。

 

① 療養看護その他の労務を無償で提供した

特別寄与分を請求するには、療養介護やその他の労務などを無償で提供した事例があることです。

介護によって、仮に給料や報酬、金銭のやりとりが発生している場合には特別寄与分は認められなくなってしまいます。

介護をしたがそれに見合った対価を受け取ってはいないということが重要になります。

 

② ①により被相続人の財産が維持or増加した

特別寄与分を請求するためには、①によって、被相続人(介護を受けた人)の財産が維持された、または増加した事例があることが条件になります。

例えば、その人の介護のため、病院での治療費や移動にかかる費用を自分で負担し、それによって被相続人の財産が維持されているのであれば、特別寄与分を請求する対象になります。

 

③ 被相続人の親族であること

遺産相続について、相続や分割は親族であることが必要です。

法改正以前は相続人の対象にならない、義理の親の介護などであっても、相続の請求ができない状態でした。

例えば、妻が義理の父親の介護をしていた場合、これは相続人の対象になっていないため、介護でいくら貢献していても遺産相続に関わることはできません。

しかし、この法改正によって被相続人が死亡した場合の相続や遺産分割は依然として相続人のみで行うものの、相続した人に対して金銭請求することが可能となりました。

ただし、6親等以内の血族と3親等以内の姻族ではない場合は親族としてみなされないため、注意してください。

 

特別寄与料の請求期限と請求方法

特別寄与料の請求期限と請求方法

特別寄与分を請求したい場合、請求期限があることに注意が必要です。

特別寄与分を請求する場合には、寄与者が相続の開始、または相続人を知った時から6ヶ月以内か、被相続人の死亡を知らない場合でも、被相続人の死亡を知ってから1年以内に手続きを行わなければなりません。

当事者間で協議する場合には特に期限はありませんが、裁判所での手続きは上記の期間でしかできません。

そのため、49日の法要が過ぎるくらい、急ぎ過ぎる必要はありませんが、できるだけ早い段階で協議をする必要があるでしょう。

また請求をする方法としては、家族間で特に決まりごとはないため、口頭でやりとりしても大きな問題はありません。

もしも、裁判所に審判を求めなければならない場合には、上記の期限内に行うだけでなく、自分だけでやりとりするのは難しい場合もあるため、必要に応じて弁護士に相談した方がよいでしょう。

特別寄与分の請求額は、通常の遺産相続とは異なり大まかではありますが、「療養介護した日数×日当」で計算されます。

また特別寄与分を受け取る人が相続人である場合は、寄与分とプラスして相続分を受け取ることが可能です。

そのため、相続人の場合でも特別寄与分の請求は押さえておきましょう。

 

兄弟・姉妹間でのトラブル回避の為にも遺言書の作成を

兄弟・姉妹間でのトラブル回避の為にも遺言書の作成を

寄与分は遺言書が作成されていない場合は相続人全員の話し合いで決めることになります。

その場合は、先ほどのように寄与分を請求することができるとはいえ、トラブルになってしまう可能性も少なくありません。

後からトラブルになるのを回避するためには遺言書の作成がかなり重要です。

ただし、適切な配分や記載内容でない場合は、例え遺言書を作成していても効力が発揮されない場合もあります。

そのため、遺言書を書く場合には、適切な書き方を守って記載することが大切です。

遺産相続に関わる遺言書について詳しく知りたい場合には、以下の記事をご覧ください。

【遺産遺言書の効力や書き方・必要書類・遺留分などを解説!】

http://sozoku-susume.com/2020/03/17/the-effect-of-the-will/

相続人が遺言書を作成できる状態であるならば、早めの段階で遺言書の作成をしてもらいましょう。

 

相談できる専門家を見つけておくと安心

相談できる専門家を見つけておくと安心

この記事では介護した人の遺産相続について、その方法や、条件、請求期限や手続きの仕方について解説しました。

2019年7月1日に施行された法改正により、介護した人が相続の対象でない場合でも、特別寄与として、貢献した分の費用を請求できるようになりました。

介護した分の特別寄与分を請求するためには、遺言書を作成してもらうことが最も効果的ですが、それ以外にも介護の記録や、かかった費用の領収書などを管理することがポイントです。

この記事を参考に介護した人が適切に特別寄与分を請求し、トラブルなく手続きするためのお役に立てれば幸いです。

遺留分減殺請求は必ず行使されるものではなく、遺留分を侵害された相続人が権利を行使すると効力を発生するものです。したがって、遺産の全てを特定の相続人に残すことは不可能ではありません。

【記事監修】高野友樹

株式会社アーキバンク取締役COO/不動産コンサルティングマスター/宅地建物取引士

不動産会社にて2,000件以上の賃貸売買仲介に関わり、6,000戸の収益物件の管理業務を経験した後、年間で36.9万平米を超える賃貸契約面積を獲得している国内有数の不動産ファンドであるGLR(ジーエルアールインベストメント株式会社)にてAM事業部のマネージャーとして従事。

大規模物件の売買仲介を中心に、投資家へのコンサルティング業務を行い、100億円規模の物件の取引に携わる。2019年より株式会社アーキバンクに参画し、不動産事業部統括責任者として取締役に就任。

不動産投資家の所有物件の買い替えによる資産整理や遺産相続など、その経験と知識を生かしたコンサルティング業務を行っている。

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