不動産の死因贈与で相続税はどのくらいかかる?遺贈との違いや注意点

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「不動産の贈与先をあらかじめ決めておきたい」

「自分の死後に相続でトラブルにならないようにしたい」

この記事に辿りついたあなたは、そうお考えではないでしょうか。

そのような場合に利用できるのが死因贈与です。

死因贈与を利用することで、生前に贈与の手続きが行える上、贈与の対象者に条件をつける等もできます。

しかし、相続税の課税率が変わるため、メリットばかりではありません。

この記事では不動産の死因贈与の相続税はどうなっているのか、遺贈との違いや注意点などについて解説します。

この記事を参考に、効率的な不動産の贈与をするための参考にしていただければ幸いです。

 

不動産の死因贈与にかかる相続税とは

不動産の死因贈与にかかる相続税とは

死因贈与とは贈与者が死亡したときに効力を発揮する贈与契約のことです。似たような方法には遺贈がありますが、それぞれ別の手続きのため分けて考える必要があります。

大きな特徴として不動産の死因贈与は課税方法が変わることがあるでしょう。ここでは死因贈与を行うことで、税金がどのように変わるのか解説します。

 

死因贈与は贈与税ではなく相続税が課税される

死因贈与を行う時は贈与税ではなく、相続税が課税されることが特徴です。

遺贈の場合であれば贈与税が課税されます。

「実際にどのような違いがあるかよくわからない」という人も多いでしょう。遺贈と死因贈与を比べると、死因贈与で法定相続人が不動産を受け取る場合、遺贈と比べて贈与税が高くなることがデメリットです(詳しい税率は後述します)。

ただし、デメリットばかりではなく、死因贈与は相手に不動産の贈与を約束するかわりに条件が付けられることがあります。

そのため老後の介護などに不安がある場合死因贈与を利用することで、将来的な安心を得られるでしょう。

 

法人の場合は法人税が課税される

死因贈与で受け取った財産は個人の場合であれば、相続税が課税されますが、法人の場合であれば、法人税が課税されます。

この場合は時価で譲渡されたとみなされ、譲渡所得としてみなされるでしょう。そのため確定申告が必要になります。

 

生前贈与の場合は贈与税が課税される

生前贈与の場合は贈与税が課税されます。生前贈与とはその人が死亡するより前に不動産などの財産を無償で贈与することです。

ただし、年間110万円までは控除の対象になり非課税となりますが、不動産の場合それは現実的ではありません。この場合は贈与税と不動産取得税が課税されます。

税率は1000万円以下であれば30%、1500万円以下であれば40%、3000万円以下であれば45%と徐々に相続税の課税額が大きくなります

 

死因贈与と遺贈の違いは?

死因贈与と遺贈の違いは?

死因贈与と似た方法として遺贈があります。死因贈与と遺贈は一見すると似たもののように感じられますが、実際の内容は細かい違いがあります。

自分の状況や将来の展望に合わせて最適な方法を選ぶことが大切です。ここでは死因贈与と遺贈の違いについて解説します。

 

条件をつけられるかどうか

死因贈与と遺贈の違いは条件が付けられるかどうかです。

死因贈与の場合は亡くなる前の約束であり、贈与者と受贈者の合意で成立します。例えば将来的な介護などです。これに対して遺贈の場合は一方的に遺言を残す方法のため、事前に相続の条件などをつけることはできません。

死因贈与はうまく利用することで、将来的な不安を解消することができるでしょう。

 

不動産登録免許税と不動産所得税の課税率が変わる

不動産について死因贈与と遺贈の違いは、不動産登録免許税と不動産所得税の課税率が変わることです。

死因贈与の場合は、有償であっても無償であっても固定資産評価額の4%が不動産取得税として課税されます。それに加えて登録免許税も2%かかるため、相続に関わる税率がかなり高くなってしまいます。

さらに死因贈与の場合、配偶者や1親等の血族以外の人が相続する場合に相続税額の2割加算が適用される点にも注意しましょう。そのため、最終的な税額は上記の税率で計算した後、1.2倍に増えることになります。

これに対して遺贈の場合、法定相続人以外であれば死因贈与と変わりません。しかし法定相続人の場合は不動産取得税が非課税となり、登録免許税は0.4%となります。

以上の点から考えると、死因贈与は相続人が法定相続人以外の場合、税制面で課税率が高くなり税負担が大きくなります。そのため、死因贈与は税制面ではおすすめできる選択肢とは言えません

何らかの事情で、不動産の贈与を確実に行いたい、将来の不安を解消したいなどの場合を除けば遺贈の方がおすすめできます。

 

契約書の必要性の有無

死因贈与と遺贈の違いは契約書の必要性の有無です。遺贈の場合は遺言のため、相手の同意を求めることはありません。そのため、契約は不要です。

死因贈与は相手との合意が必要で、契約書なしでも成立します。口約束であっても、効力を発揮します。ただし、契約書がない場合言った・言わないでトラブルになる可能性が高いため、死因贈与の場合は契約書を用意しておくことで、手続きがスムーズに進みます。

どちらも契約書が必要なわけではありませんが、死因贈与の場合は用意することでトラブルを防止できます

 

双方の合意の必要性

死因贈与と遺贈の違いは双方の合意の必要性です。遺贈の場合は相手に合意を求める必要はありません。ただし、その反面財産の相続を拒否される可能性があります。

死因贈与の場合は、双方の合意が必要です。口約束であっても相手からの合意がなければ成り立ちません。

こうした点で死因贈与は手続きを成立させるのに手間がかかる点に注意しましょう。

 

取り消しの可否

死因贈与と遺贈の違いは取り消しの可否です。死因贈与の場合は契約となっており、合意の成立から3ヶ月が経過すると、受け取りが拒否できなくなります。

遺贈の場合は相手との約束を前提としておらず、不動産の相続が不要だと判断される場合は、相続を拒否可能です。

そのため、死因贈与は合意を得られれば、財産贈与を確実に行えることが贈与する人とされる人、双方にとってのメリットでしょう。

 

生前の登記が可能かどうか

死因贈与は生前の仮登記が可能です。一方遺贈の場合は死後に譲られるため、生前の登記はできません

死因贈与も正式な登記は後ほどにはなりますが、その人が贈与されるという正当性がより高まります。

死因贈与を利用することで遺贈よりも相続の正当性が上がるでしょう。

 

不動産の死因贈与を行う際の注意点

不動産の死因贈与を行う際の注意点

これまでの解説でもお伝えしましたが、不動産の死因贈与を行う場合は注意する点がいくつかあります。

具体的には相続人全員の承諾が必要な点、書面がないとトラブルになる可能性があること、遺贈と比べると相続税が高くなることが挙げられます。ここではそれぞれの注意点について具体的に解説します。

 

相続人全員の承諾が必要

不動産の死因贈与は贈与する人と贈与される人の合意だけではなく、相続人全員の合意が必要です。そのため、相続人の合意がないまま手続きを進めると、いざ相続が行われる段階で大きなトラブルにもなりかねません。

特に死因贈与の結果、法定相続分の遺留分が侵害されていると別の相続人から不満が出る可能性もあるでしょう。そのため、死因贈与を行う場合はあらかじめ相続人全員とやりとりし、合意を得ることが重要です。

 

書面がないとトラブルの可能性がある

不動産の死因贈与は書面がなくても成立しますが、書面がないとトラブルの元となります。上記でも触れたように死因贈与が行われるためには相続人の承認が必要です。

口約束で交わしていると言っても、そのことを証明することは難しいでしょう。そのため、不動産の死因贈与をスムーズに行うためには書面できちんとやりとりすることが重要です。

 

遺贈と比べて相続税が高くなる

死因贈与の注意点は遺贈と比べて相続税が高くなることです。

死因贈与の場合は、固定資産評価額の4%が不動産取得税、2%が登録免許税として課税されます。配偶者や1親等の血族以外の人が相続する場合に相続税額の2割加算が適用されます。

遺贈の場合であれば、法定相続人であれば不動産取得税は非課税、登録免許税も0.4%と大きな違いがあります。

数百万円単位で相続税の額が変わる可能性もあるため、死因贈与を行う明確なメリットがない限りは死因贈与をおすすめできません。

 

まとめ

まとめ

この記事では不動産を死因贈与で贈与する場合に贈与税がどうなるのか、具体的に解説しました。

不動産の死因贈与は遺贈と比べると相続税が非常に高くなるため、節税という観点ではおすすめできません

ただし、遺産の贈与に条件をつけられるなど、遺贈にはないメリットがあります。

それぞれのメリットとデメリットを把握し、自分に合った方法で手続きを進める参考にしてください。

【記事監修】高野友樹

株式会社アーキバンク取締役COO/不動産コンサルティングマスター/宅地建物取引士

不動産会社にて2,000件以上の賃貸売買仲介に関わり、6,000戸の収益物件の管理業務を経験した後、年間で36.9万平米を超える賃貸契約面積を獲得している国内有数の不動産ファンドであるGLR(ジーエルアールインベストメント株式会社)にてAM事業部のマネージャーとして従事。

大規模物件の売買仲介を中心に、投資家へのコンサルティング業務を行い、100億円規模の物件の取引に携わる。2019年より株式会社アーキバンクに参画し、不動産事業部統括責任者として取締役に就任。

不動産投資家の所有物件の買い替えによる資産整理や遺産相続など、その経験と知識を生かしたコンサルティング業務を行っている。

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