土地相続に必要な書類とは?相続や登記で何を揃えるべきか解説

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相続は突然に起こり、心の準備ができていないことが多いのではないでしょうか。また、相続を経験したことがない人も少なくありません。

相続の中で大きな比重を占めているものに現金と不動産があります。不動産の中でも土地は、高額な遺産であり、被相続人が購入した価格よりも高くなっている場合もありうるのです。また、相続税申告に限らず相続登記などにおいて手続きが複雑で、たくさんの書類を揃える必要があります。

今回は、土地相続の必要な書類について詳細に解説します。この記事を読めば、土地相続に関する書類を網羅することが可能となるでしょう。

 

土地相続の書類は大きく分けて二つ

土地相続の書類は大きく分けて二つ

土地相続に関する書類は、現金などの金融遺産に比べて複雑で、多種多様の書類を揃える必要があります。

また、土地相続に関する書類は大きく分けて2つに分類されます。1つは相続税申告に必要な書類であり、もう1つは相続登記に必要な書類です。ここでは、土地相続に関する書類の入り口として、土地相続に関する書類を羅列します。

 

相続税申告に必要な書類

土地などの遺産を相続して、基礎控除を超えた遺産総額であれば相続税を申告する必要があります。相続税申告に必要な書類は以下の通りです。

・相続人の身分証明書類

  • マイナンバーカードの裏面の写し・通知カードの写し・住民票でマイナンバーの記載があるものの写しなどのどれか1点
  • マイナンバー身元確認書類として、マイナンバーカードの表面の写し・運転免許証の写し・パスポートの写しなどどれか1点

・被相続人の出生時から死亡時までの全ての戸籍情報がわかる書類(相続開始から10日以後に作成されたもの)

  • 戸籍全部事項証明書
  • 除籍全部事項証明書
  • 改製原戸籍謄本
  • 戸籍の附票の写し
  • 住民票の除票(本籍の記載のあるもの)

・相続人関係の書類

  • 相続人全員の戸籍全部事項証明書
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 相続人全員の住民票

・不動産相続で必要な書類

  • 土地の登記事項証明書
  • 土地の固定資産評価証明書
  • 住宅地図
  • 固定資産課税台帳
  • 賃貸借契約書(貸地、借地がある場合)

・遺産分割のケースによって生じる書類

  • 遺言書による遺産分割の場合は遺言書
  • 遺産分割協議による遺産分割の場合は遺産分割協議書

 

相続登記に必要な書類

土地を相続した相続人は、相続登記を行う必要があります。相続登記に必要な書類の以下のようになっています。

・登記申請書

・被相続人の戸籍関係の書類

  • 戸籍全部事項証明書
  • 除籍全部事項証明書
  • 改製原戸籍謄本
  • 戸籍の附票の写し
  • 住民票の除票(本籍の記載のあるもの)

・土地を相続する相続人の書類

  • 相続人全員の戸籍全部事項証明書
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 相続人全員の住民票

・土地に関する書類

  • 固定資産評価証明書

・遺産分割のケースによって生じる書類

  • 遺言書による遺産分割の場合は遺言書
  • 遺産分割協議による遺産分割の場合は遺産分割協議書

 

土地相続申告に必要な戸籍や身分関係の書類

土地相続申告に必要な戸籍や身分関係の書類

土地の相続税申告には、戸籍や身分関係の書類をたくさん揃えなければいけないことがわかりました。特に、被相続人の戸籍に関わる書類は、生まれてから死亡するまでの全てが分からなければなりません。

ここでは、なぜたくさんの戸籍や身分関係の書類が必要となるのかを解説していきます。

 

被相続人の戸籍関係

被相続人の戸籍は、出生から死亡までのすべてがわかるものが必要となります。これは、被相続人の子が法定相続順位第1位となるからであり、被相続人の子全員を調査し確定するために必要だからです。

被相続人の子には、実子以外に養子や認知した子も含まれます。これを調べずに遺産分割協議を行って遺産分割しても、後で他に子が存在することが判明した場合には遺産分割協議が無効となります。土地だけではなく遺産相続全てにおいて、トラブルの種となる可能性がありますので、被相続人の全ての子を確定する必要があるのです。

出生から死亡までの戸籍を見れば、実子・養子を問わず戸籍のどこかに必ず名前があり、分かるようになっています。相続税申告が必要ない場合でも、土地を相続すれば相続登記で必要となりますので、被相続人の戸籍関係の書類は、取得しておくほうがよいでしょう。

 

相続人全員の戸籍全部事項証明書

相続人全員の戸籍全部事項証明書が必要である理由は、相続人と相続権を確定する必要があるからです。被相続人の出生から死亡までの戸籍によって、被相続人の子であり法定相続人だと判明しても、存命であるかどうかは分かりません。

すでに亡くなっている場合は、相続人ではありませんので、生きているかどうかを確認しなければ相続人を確定できないのです。その確認のために、相続人全員の戸籍全部事項証明書が必要となります。

 

相続人全員の印鑑証明書

印鑑証明書は、遺産分割協議で遺産分割した時に必要となる書類です。遺産分割協議書に最後に相続人全員が署名し押印することになっています。この時に使用する印鑑は実印と定められています。印鑑証明書は、遺産分割協議書に押印された印鑑が、実印であるかどうかを確認するために必要となります。

 

相続人全員のマイナンバーカードと関係書類

平成28年1月1日以降に発生した相続に対して、相続税を申告する際には相続人のマイナンバーの記載が必要となっています。

自分で相続税の申告を行う場合は、 マイナンバーカードを持っていればマイナンバーカードの両面のコピーが必要です。マイナンバーカードを持っていない場合は、マイナンバー通知カードのコピーと、免許証など本人確認が可能な書類のコピーが必要となります。

相続税の申告を税理士に依頼している場合は、マイナンバーカードの番号確認ができる書類と身元確認ができる書類の両方が必要となり、さらに委任状と税理士証票の写しが必要です。

 

土地相続申告には遺言書か遺産分割協議書が必要

土地相続申告には遺言書か遺産分割協議書が必要

土地を相続し相続税を申告する場合は、遺言書か遺産分割協議書を添付しなければなりません。これは遺産分割方法によって異なります。遺言書によって遺産分割すれば遺言書を税務署に提出し、遺産分割協議によって遺産分割すれば遺産分割協議書を税務署に提出することになるのです。

 

遺言書が必要な場合

被相続人の遺言書の通りに遺産分割をすれば、税務署に遺産分割の根拠が遺言書であることを証明するために遺言書を相続税申告書に添付します。税務署側からみると、遺言書の内容と遺産分割の内容が合致しているかを確認するために必要だからです。

 

遺産分割協議書が必要な場合

遺産分割協議を行い、相続人全員が合意して遺産分割した場合は、相続税申告時に遺産分割協議書を添付します。遺産分割の根拠が遺産分割協議であることを証明し、その内容通りに遺産分割し相続したことを税務署が分かるようにするためです。

 

土地相続申告でケースに応じて必要な書類

土地相続申告でケースに応じて必要な書類

相続税にはさまざまな特例や軽減措置が設けられています。それらの措置を受けるためには、通常の相続税申告書類の他に軽減措置のための書類も必要となるのです。ここでは、土地に関する相続税の特例や軽減措置の代表的なものに関する書類について解説します。

 

相続時精算課税適用者がいる場合の書類

相続税精算課税制度とは、受遺者が2,500万まで贈与税を納めずに贈与を受けることができる制度です。

贈与者が亡くなり、受遺者が相続人となった時に、その分の価額と相続財産の価額とを合計した金額から相続税額を計算し一括して相続税として納税する制度です。相続時精算課税適用者がいる場合に必要な書類は、以下のようになります。

  1. 被相続人の全ての相続人を明らかにする戸籍の謄本(相続開始の日から10日を経過した日以後のもの)又は、図形式の法定相続情報一覧図の写し
  2. 遺言書の写し又は、遺産分割協議書の写し
  3. 相続人全員の印鑑証明書(遺産分割協議書の場合)
  4. 被相続人の戸籍の附票の写し(相続開始日後に作成されたもの)
  5. 相続時精算課税適用者の戸籍の附票の写し

 

配偶者税額軽減の適用を受ける場合の書類

配偶者税額軽減は、配偶者だけが利用できる制度です。配偶者が遺産分割や遺贈により取得した遺産額から、下記のどちらかを大きい方の金額を差し引いて残った金額に課税する制度です。

  • 配偶者の法定相続税相当額
  • 1億6,000万円

配偶者税額軽減の適用を受ける場合に必要な書類は以下のようになります。

1~3は相続時精算課税適用者がいる場合の書類と同じ

4. 申告期限後3年以内の分割見込書(申告期限内に分割ができない場合に提出)

小規模宅地等の特例とは、被相続人が住んでいた土地や事業をしていた土地について、一定の要件を満たす場合に税額が軽減される制度です。被相続人が残したそれらの土地に、相続税が満額課税されることで、相続人の居住用の土地や事業用の土地を失わないために設けられています。

小規模宅地等の特例の適用を受ける場合の書類については、4つのケースに分かれています。

  • 特定居住用宅地等に該当する宅地等
  • 特定事業用宅地等に該当する宅地等
  • 特定同族会社事業用宅地等に該当する宅地等
  • 貸付事業用宅地等に該当する宅地等

小規模宅地等の特例の適用を受ける場合に必要な書類は、上記4つのケースからさらに細分化されているのです。ここでは、被相続人が居住用として使っていた「特定居住用宅地等に該当する宅地等」の書類について解説します。

小規模宅地等の特例の中で特定居住用宅地等に該当する宅地等の特例を受ける場合の書類は以下のようになります。

1~4は、配偶者税額軽減の適用を受ける場合の書類と同じです。配偶者が宅地を取得した場合は追加の書類はありません。

5.宅地を取得したのが同居の親族だった場合は住民票の写し(相続開始日以降に作成されたもの・マイナンバーを持っている場合は不要)

小規模宅地等の特例に関する書類の詳細は、下記の国税庁ホームページで確認できます。

国税庁:相続税の申告の際に提出していただく主な書類

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku/shikata-sozoku2018/pdf/10.pdf

 

特定計画山林の特例の適用を受ける場合の書類

特定計画山林の特例とは、 相続や遺贈によって取得した特定森林経営計画対象山林の相続税課税価格を5%減額する措置です。特定計画山林の特例の適用を受ける場合に必要な書類は以下のようになります。

・1~4は、配偶者税額軽減の適用を受ける場合の書類と同じです。

5. 市町村長等の認定を受けた森林経営計画書の写し

6. その他特例の適用要件を確認する書類

 

農地等で納税猶予及び免除等の適用を受ける場合の書類

農地等で納税猶予及び免除等の適用とは、農業の後継者が贈与を受けた農地の贈与税が、贈与者の死亡の日まで猶予される制度です。この場合、一定の要件に適用する必要があります。納税が免除されるは、下記の3条件に当てはまる場合のみです。

  • 特例の適用を受けた農業相続人が死亡した場合
  • 特例の適用を受けた農業相続人が、特例農地等の全部を租税特別措置法第70条の4の規定に基づき後継者に生前一括贈与した場合
  • 特例の適用を受けた農業相続人が相続税の申告書の提出期限から農業を20年間継続した場合

農地等で納税猶予及び免除等の適用を受ける場合の書類は以下のようになります。

1~3は、相続時精算課税適用者がいる場合の書類と同じです。

4. 相続税の納税猶予に関する適格者証明書

5. 都市農地貸借法の施行日前に、相続または遺贈により特例農地等を取得した場合。

5-1. 特定農地等のうち平成3年1月1日において三大都市圏の特定市の区域内に所在する農地や牧草地は、それに該当する旨の市区長の証明書

5-2. 農業相続人が有する特定農地等のうち市街化区域内に所在する特例対象となる農地は、それに該当する旨の市町村長の証明書

6. 都市農地貸借法の施行日以後に相続または遺贈により特例農地等を取得した場合

6-1. 特例農地等のうち年上の農地等がある場合には、それに該当する旨の市区長の証明書

6-2. 特例農地等のうち市街化区域内に農地等がある場合は、その旨を証する市町村長の書類

7. 特定農地のうち準農地がある場合、それに該当する旨の市町村長の証明書

8. 農業経営基盤強化促進法等の1部を改正する法律の施行日以後に特殊農地等を取得した場合は、その旨の農業委員会の証明書

9. その他特例の適用要件を確認する書類

10. 担保提供書及び担保関係書類(担保が特殊農地等の場合)

ここは全てのケースを解説しますと膨大な文字数になりますので居住用のみとしました。

 

相続登記に必要な書類は遺産分割よって異なる

相続登記に必要な書類は遺産分割よって異なる

土地の相続登記とは、相続によって取得した土地が、自分の所有物であることを確定するために行う手続きです。相続登記は、前途したように多種多様な書類が必要となります。

また、遺産分割の方法によっても必要となる書類が異なるのです。ここでは、遺産相続のケースによって異なる書類について説明します

 

遺言書に従って遺産分割した場合

遺言書に従って遺産分割した場合には、被相続人の出生から死亡までの戸籍関係の書類は必要ありません。遺言で指名された相続人と被相続人の関係さえ証明できれば問題がないからです。遺言書通りに遺産分割した場合の相続登記の書類は以下のようになります。

  • 登記申請書
  • 遺言書
  • 被相続人の戸籍全部事項証明書
  • 被相続人の住民票の除票
  • 相続人全員の戸籍全部事項証明書
  • 相続人全員の住民票
  • 固定資産評価証明書

 

法定相続分通りに遺産分割した場合

法定相続分通りに遺産分割した場合の相続登記は、被相続人の出生から死亡までが明らかになる戸籍関係の書類が必要となります。

  • 登記申請書
  • 被相続人の戸籍全部事項証明書
  • 被相続人の業績事項全部証明書
  • 被相続人の改製原戸籍謄本
  • 被相続人の住民票除票
  • 相続人全員の戸籍全部事項証明書
  • 相続人全員の住民票
  • 固定資産評価証明書

 

遺産分割協議により遺産分割した場合

遺産分割協議により遺産分割した場合の相続登記は、被相続人の出生から死亡までが明らかになる戸籍関係の書類のほかに、遺産分割協議書と遺産分割協議書に押印した実印の印鑑証明書が必要となります。

  • 登記申請書
  • 遺産分割協議書
  • 被相続人の戸籍全部事項証明書
  • 被相続人の業績事項全部証明書
  • 被相続人の改製原戸籍謄本
  • 被相続人の住民票除票
  • 相続人全員の戸籍全部事項証明書
  • 相続人全員の住民票
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 固定資産評価証明書

土地相続の書類については、相続税申告関係の書類と相続登記関係の書類を揃えればほぼ完了です。

この2つの手続きについての書類の多くは重複していますが、一通だけ取得するようにしましょう。理由は、相続登記が済めば添付した書類が全て返却可能となっているからです。

 

相続税申告と重なる書類は一通で

土地相続の書類については、相続税申告関係の書類と相続登記関係の書類を揃えればほぼ完了です。

この2つの手続きについての書類の多くは重複していますが、一通だけ取得するようにしましょう。理由は、相続登記が済めば添付した書類が全て返却可能となっているからです。

 

土地相続についてはプロフェッショナルの活用を

土地相続についてはプロフェッショナルの活用を

ここまで、土地相続について必要な書類を詳細に解説してきました。書類の簡素化が進められている時代ですが、相続における書類は、被相続人との族柄を証明したり、身分を証明したりする必要があるため、まだまだ多くの書類が必要となっています。

相続は、人生の中で1度か2度程度の事柄ですので、プロフェッショナル並みの知識を得る必要はないでしょう。土地相続で困ったことがあれば、相続のプロフェッショナルに相談、依頼すれば良いのです。

また、当サイト「相続対策のすすめ」を活用する手段もあります。当サイトは相続に特化していますので、きっとお役にたつことができるでしょう。

【記事監修】高野友樹

株式会社アーキバンク取締役COO/不動産コンサルティングマスター/宅地建物取引士

不動産会社にて2,000件以上の賃貸売買仲介に関わり、6,000戸の収益物件の管理業務を経験した後、年間で36.9万平米を超える賃貸契約面積を獲得している国内有数の不動産ファンドであるGLR(ジーエルアールインベストメント株式会社)にてAM事業部のマネージャーとして従事。

大規模物件の売買仲介を中心に、投資家へのコンサルティング業務を行い、100億円規模の物件の取引に携わる。2019年より株式会社アーキバンクに参画し、不動産事業部統括責任者として取締役に就任。

不動産投資家の所有物件の買い替えによる資産整理や遺産相続など、その経験と知識を生かしたコンサルティング業務を行っている。

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