遺産相続した家はどうする?相続の手続きや分割の方法を解説

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両親が亡くなった際に家や土地を相続することはよくあります

しかし実際に相続するとなると何をすれば良いのか、全くわからない人が大半です

かといって自分の両親の自宅や家だからと、手続きをしないままでいることは後のトラブルにも繋がります。

葬儀の手配やその他のことで忙しく心身ともに疲れた上に、家や土地の複雑な手続きに手を伸ばしたくないという気持ちもわかります。

しかし後のトラブルを回避するためにも、そして手続きがより煩雑にならないためにも、家や土地の手続きは先延ばしにせず、やっておきましょう。

今回は家や土地の相続手続きや必要な書類、そして分割の仕方や相続した家をどうすればよいのかをわかりやすく解説していきます

 

遺産相続の手続きは誰でも可能

遺産相続の手続きは誰でも可能

多くの方が誤解されていることの一つに「遺産相続の手続きは司法書士などの専門家でなければできない」ことがあげられます。

しかし実際は、国家資格がなくとも遺産相続の手続きや必要な書類集めはできます。

つまり相続手続きは誰もができることなのです。

では、なぜ司法書士や専門家に依頼するのでしょうか。

「葬儀や、亡くなった方の友人や知人への連絡などで忙しく相続まで手が回らない」

「手続きが煩雑で、必要な書類なども多そう」

「遺産に、自宅などの不動産も含まれており分け方がわからない」

上記の理由がほとんどでしょう。

実際に、一から書類集めをして相続の手続きをしていくには時間も手間もかかります

忙しくて手続きに時間を割けないという方は、はじめから専門家に依頼をするのがおすすめです。

 

実家の相続手続きの手順

実家の相続手続きの手順

両親とも亡くなり生前住んでいた実家が残された、というケースは少なくありません。

加えて、そのようなケースでは子どもはすでに独り立ちしていることが多く、特に実家から離れて暮らしている場合だと、思い入れはあるが使う予定のない実家をどうすればよいのか迷う方も多いでしょう。

そこで両親が実家を遺産として残した際の、手続きの手順について解説していきます。

 

遺言書の有無の確認

まずは遺言書の確認が必要です。

家などの不動産に関わらず、現金や車などの遺産も遺言書で相続が決められていた場合は、指示に従わなければなりません。

可能であれば、生前に被相続人とともに話し合って取り決めたことを遺言書として残しておくことがベストでしょう。

相続人同士が納得して、かつ書類として残してあれば後にトラブルになるリスクが減ります。

では遺言書が残されていない場合はどうすればよいのでしょうか。

基本的には「法定相続分」という相続人が遺産を受け取る順位や割合を取り決めたものを参考にして「遺産分割協議」で決めます。

法定相続分に必ずしも従う必要はありませんが、裁判に発展した際に基準にされることを覚えておきましょう。

また遺産分割協議とは、相続人全員が話し合って、受け取る遺産や割合を決めることです。

最終的には相続人全員の署名と捺印が必要であるため、相続人が多い場合はうまく時間を調整する必要があるでしょう。

遺産分割協議書がないと、不動産の名義変更や被相続人の口座の解約などもできません

遺産分割協議に関しては特に重要であるため、後の項目で詳しく解説していきます。

 

相続する家や土地などの不動産を調査する

遺言書の有無を確認した後にやるべきことは、相続する家や土地などの不動産についての調査です。なぜ不動産の調査が必要なのかというと、相続が難しいからです。

まず価値が高いものであるため、分ける際は他の遺産と合わせて公平に分配されなければトラブルに発展することも多いです。

現金や預貯金それに自動車であれば、価値が分かりやすいうえに、分け方も簡単です。

しかし不動産は「路線価方式」「倍率方式」といった計算方法にも違いがあり、かつ計算にはかなりの専門知識が必要となります。

相続の時点で売りに出すことを考慮しているのであれば、この時点で不動産会社や専門家に依頼をして正確な評価をもらっておくとよいでしょう。

遺産分割協議の際に必要な情報であり、売却するときに相場を知らなければ適切な価格で売ることが難しくなるからです。

 

不動産の名義変更や税金の支払い

次に必要となる手順は、不動産の名義変更や税金の支払いです。

名義変更に関しては重要な手続きであるため、後の項目で詳しく解説していきます。

相続税について金額が大きいのではと不安がる方もいるが、多くの方はそこまで心配する必要はありません。

相続税は基礎控除額が大きいため、相続税の課税対象になる人は例年10%にも満ちません

しかし、なかには被相続人が貯金や不動産を沢山持っていたという方もいるでしょう。

そこで相続税の支払いについて解説していきます。

相続税は、死亡日から10か月以内に申告して納めなければなりません。

理由なく支払いを遅延すると、追加して税金を支払うこともあり得るためしっかりと納めておきましょう。

基礎控除額の計算は簡単であり、以下の計算式で相続税を支払うのか支払わなくてもよいのかがわかります。

基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人の人数

遺産を受け取る方に親や兄弟姉妹、それに親戚がいない場合でも、最低3600万円の基礎控除を受けられます。

ちなみに遺産の合計が最低の3600万円を下回った場合、申告も必要ありません。

ただし先ほども書いきましたが、不動産などは価値が専門家でない限り、正しく査定することは難しいです。

正しく査定できていないと、税務署から調査を受けて納税することになる場合もあります。

相続税についても不安であれば税理士や専門家に依頼することがおすすめです。

ちなみに相続税は基本的に、被相続人が亡くなってから10か月以内に現金で支払わなければなりません。

しかし事情があって、お金を準備できない場合は「延納」という“分割払い”も認められます。延納は以下の4つの条件に当てはまる場合のみで、延納期間の最長は20年です。

  1. 相続税額が10万を超える。
  2. 金額的に納めることが難しい理由がある。
  3. 延納税や利子税と同じ額の担保を提供する(延納税額が100万円以下かつ延納期間)が3年以内の場合は担保が必要ない。
  4. 延納申請期限までに申請書と担保提供関係書類を税務署に提出する。

延納の制度は支払いができない金額を超えた場合に利用でき、かつ利子税を払うことも必要です。よほどの事情がない限りは、通常通り支払うのがよいでしょう。

 

遺産分割協議書に必要な書類

遺産分割協議書に必要な書類

では遺産を誰が、何を、どの割合で受け取るのかを決める、遺産相続の中でも重要な手続きである遺産分割協議について説明します。

調べた方はおわかりかと思いますが、遺産分割協議書には多くの書類が必要となります。

また役所で入手する書類も多いため、仕事を休む必要があったり、代理人を立てて代わりに取ってきてもらったりなどの必要があります。

遺産分割協議書に必要な書類は以下の4つです。

  1. 被相続人が生まれてから死亡するまでのすべての戸籍謄本
  2. 被相続人の住民票の除票と戸籍の附票
  3. 相続人全員の戸籍謄本
  4. 相続人全員の印鑑証明書と実印

相続人の戸籍謄本は現在のものだけでよいですが、故人の戸籍謄本は生まれてから死亡まですべてのものが必要となります。

これは役所が相続人の数を正確に把握するためです。

故人が何度も引っ越しをしている場合は、日本全国から取り寄せる、または取りに行かなければなりません。

個々の書類は取得するのにお金や時間がかかるものではありませんが、数が多いため全てが揃うのには時間がかかります。

戸籍謄本など本人が取りに行けない場合は、委任状を作成し、代理人に依頼しなければなりません。

 

遺産分割協議書の書き方の注意点

ちなみに遺産分割協議書には、公的に定められている書類がありません

そこでインターネットに掲載されている雛形をダウンロードして使用すると手間がなくおすすめです。

中には手書きで一から書類を作ろうとする方もいますが、おすすめはできません。

理由は二つあり、一つ目が「長期間保管しておくもの」、二つ目が「インターネットにある雛形にはあらかじめ記入すべき事項を書く項目がある」です。

相続の手続きはすぐに終わるものではないため、遺産分割協議書は長期間保管しておくものです。紙では紛失する可能性が大きくなります。

また記入すべき項目に「被相続人・相続人の名前」「各相続人が何を、どれくらいの割合で受け取ったのか」「協議を行った日付」「相続人全員の署名と捺印」が必要です。

インターネットの雛形にはこれらの項目があるため、必要事項の漏れがありません。

 

持ち家や土地の名義変更は必要なのか

持ち家や土地の名義変更は必要なのか

名義変更も不動産を相続する際にしておきたい手続きの一つですが、実は名義変更は義務ではなく、また期間もありません他の手続きで忙しいうえ、義務でなく期限もないため放置しておく方も多いかもしれません。

しかし名義変更をしないでおくと、いくつかデメリットがあります。

名義変更をしないデメリットを解説しましょう。

 

名義変更をしないデメリット

名義変更をしなかったときのデメリットは以下の3つです。

  1. 不動産を売却できない。
  2. 不動産を担保にお金を借りられない。
  3. 時間が経つと必要な書類が揃いにくい、相続人が亡くなり新たな相続人が発生するなど名義変更がしづらくなる。

故人の名義のままのでは、誰がその不動産の所有者なのか不明であるため、実家や土地を売却できません

同様の理由で、不動産を担保にしてお金を借りることもできません

また名義変更をしないまま時間が経つと、戸籍謄本や証明書の保管期限が過ぎるなどして、必要な書類を集められないこともあります。

そうなれば通常とは違う手続きが必要となり、時間やお金がより必要となってしまいます。

また相続人が亡くなった場合、その故人の配偶者や子どもが新たな相続人となります。

そうなれば再度、遺産分割協議を行わなければならないなどの手間が増えるのです。

そのため名義変更は義務でなくとも、また期限がなくとも、他の相続の手続きと並行して行っておくのがよいでしょう。

 

名義変更の手続き

名義変更には、遺産分割協議書固定資産評価証明書が必要です。

固定資産評価証明書は、不動産を所有していた故人が住んでいた自治体ではなく、不動産のある自治体に取りに行かなければなりません。

最後に登記申請書を法務局のホームページからダウンロードして必要な項目を記入します。そして遺産分割協議書と固定資産評価証明書と合わせて法務局に提出をします。

このとき登録免許税の支払いもしなければなりません。

登録免許税は以下の計算式でわかります。

登録免許税=固定資産評価額×0.4%(税率)

書類に不備があるときは、何度も法務局に足を運ばなければなりません。

不備の内容によっては、相続人全員の実印が必要となることもあります。

こういった手間を避けたい方は専門家に依頼するのがよいでしょう。

 

相続した家や土地はどうすればいいのか

相続した家や土地はどうすればいいのか

では相続した家や土地の名義変更まで完了したもののどうすればよいのか、迷う方も多いことでしょう。

そこで主に3つの方法「売却する」「住む」「処分する」があるため、それぞれ解説していきます。

 

売却する

相続した家に住む気がない、また管理もできない場合は売却することが一番です。

相続した家を売却するメリットは主に2つです。

一つ目が「管理する必要がなくなること」、二つ目が「遺産を平等に分けやすくなること」です。

両親が他界して、相続した家が子どもの頃に住んでいた家の場合は残したくなる気持ちもわかります。

しかし実際に住んでいなくても所有しているだけで、固定資産税や保険料(加入しなくても問題ありませんが、万が一火事に遭った場合は何の補償も受けられません)が必要です。

ちなみに固定資産税の計算式は、固定資産税=固定資産評価額×1.4%(税率)です。

他にも建物や家の老朽化で修繕費も必要になるでしょう。

しかし売却すれば、これらの経費は必要ありません。

また売却して現金化することで、遺産としても分けやすくなります。

不動産は価値が大きい分、一人が受け取ると他の相続人との相続分に差が出やすいです。

そこで現金化すれば、平等に分けやすくなるのです。

一方、デメリットも同様に2つあります。

一つは「税金などお金がかかること」、もう一つは「売るための経費も必要になること」です。

売却するときには印紙税や譲渡所得課税も必要となります。

これら税金は売却した金額や、売却して得た利益、それに不動産を保有していた期間に比例します。

一方で特例もあり、例えば売却する不動産に一定期間居住していた場合などは3000万円の基礎控除を受けられるのです。

もう一つのデメリットに関しては、立地や不動産の年数によっては売るためにリフォームや仲介会社への売却手数料がかかることです。

または売れない場合には、固定資産税がかかり続けることも念頭に置いた方がよいでしょう。

 

住む

住む場合は、基本的に名義変更のみが必要であり、相続税や登録免許税の支払いを行えば問題ありません。手続きを考えると、最も簡単な方法と言えるでしょう。

必要に応じて修繕やリフォームだけはしておく必要があります。

 

処分する

家が必要ない、もしくは立地や家の老朽化で売却もできないとなれば、処分するしかありません。家を解体することを相続人全員で合意して、相続後すぐに解体する場合は名義変更の必要はありません

解体することを決める際には、同時に解体費を誰が負担するのかも決めておくのがよいでしょう。

解体費用の負担する際のケースとしては「受け取る遺産の割合に応じて決める」「解体後の土地を受け取る人が負担する」のが一般的です。

解体の合意、そして解体費用の負担を決めて、家を解体したら滅失登記を忘れてはいけません。滅失登記とは、土地に家がなくなったことを証明する手続きです。

親名義のまま滅失登記をする際は、名義変更のときと同じく、遺産分割協議書や戸籍謄本が必要になります。

ただし更地にしてしまった場合は、家があるときよりも固定資産税が最大6倍になります。

家がある土地には税金の優遇措置がとられますが、土地の場合は優遇措置がなくなるので注意が必要です。

また家を相続せず、かつ売れない場合の他の手段に相続放棄もあげられます。

相続放棄とは、親名義の借金やローンが多い際に使われる手段ですが、相続放棄をした場合にはあらゆる遺産を相続できません。

また相続放棄は相続することがわかってから3か月以内に申請しなければなりません。

家の相続放棄も視野に入れる場合は、早めに相続人同士で話し合いをすることが求められます。

 

専門家に相談することがおすすめ

専門家に相談することがおすすめ

このように家を遺産相続する際には、必要な手続きや書類は多岐にわたります。

さらに、税金や法律の専門的な知識が必要になることも多いです。

手続きをする時間が十分にある、もしくは相続の手続きをわかっている方は専門家に依頼する必要はないでしょう。

しかし時間がそこまで取れない方や、手続きを行う自信がない方は専門家に依頼することをおすすめします。

「相続対策のすゝめ」では、遺産相続に関する様々なお悩みの参考になる記事を掲載しています。皆さんのお悩みが解決に向かうことを願っています。

【記事監修】高野友樹

株式会社アーキバンク取締役COO/不動産コンサルティングマスター/宅地建物取引士

不動産会社にて2,000件以上の賃貸売買仲介に関わり、6,000戸の収益物件の管理業務を経験した後、年間で36.9万平米を超える賃貸契約面積を獲得している国内有数の不動産ファンドであるGLR(ジーエルアールインベストメント株式会社)にてAM事業部のマネージャーとして従事。

大規模物件の売買仲介を中心に、投資家へのコンサルティング業務を行い、100億円規模の物件の取引に携わる。2019年より株式会社アーキバンクに参画し、不動産事業部統括責任者として取締役に就任。

不動産投資家の所有物件の買い替えによる資産整理や遺産相続など、その経験と知識を生かしたコンサルティング業務を行っている。

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