賃貸物件は相続税対策になる!申告までに知っておくべきこと

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賃貸物件を相続する場合、通常の土地家屋よりも節税になる場合があります。さらに、現預金よりも大幅に減額される仕組みにもなっているのです。

しかも、賃貸物件を相続し賃貸経営すると、毎月安定した家賃収入を得ることも可能です。

今回は、通常の相続税対策の基本から、賃貸物件を相続するケースや賃貸物件への不動産投資及び経営の注意事項などを解説します。

賃貸物件の相続や投資でお悩みの方は、ぜひ御一読ください。

 

相続税対策の基本を知ろう

相続税対策の基本を知ろう

 

賃貸物件と相続税対策との関連を知る前にまずは、相続税対策がどのようなもので何をするのかという基本を知る必要があります。

相続税とは、被相続人がなくなった時点での財産の価額に応じて、相続人が納める仕組みです。その価額が大きいほど、相続税の額も大きくなります。

ですので、生前に財産を分配したり、生命保険を掛けたりして相続財産を小さくしておくことが相続税対策の基本となるのです。相続財産を小さくすることの中に、賃貸物件に関することも含まれています。

 

相続税は現金一括払いが原則

相続税を納める人は相続人です。その多くは、相続財産から相続税を納めています。そこで問題なのが、相続税の納付の仕方です。原則として現金一括払いなので、相続人は納付分の現預金を用意しなければならないのです。

現金は、相続税対策に不向きな遺産ですので、相続税対策を積極的に進めている場合は現金が少なくなることもあります。結果的に、不動産などを手放さなくてはならなくなるような相続税対策にならないように注意しましょう。

被相続人は、相続税納付分の現金を残すことも、相続税対策であると認識してください。

 

具体的に行う相続税対策

相続対策として重要なのが、遺産分割がスムーズに行われるかです。相続人が複数いる場合は、遺産分割協議を行い遺産分割協議書がなければ、預金の引き出しや登記を変えることもできません。

遺産分割協議で揉めるとスムーズな遺産分割は難しくなります。ですので、被相続人は予め遺言書を認めておくと良いでしょう。遺言書は、法定相続よりも優先されますので、被相続人が自由に遺産の分配を決めることができます。

ただし、あまりにも偏った分配だと、相続人が遺留分を請求するかも知れませんので、相続人達も納得できる遺言書が望ましいでしょう。

次に、相続財産の評価を小さくし、相続税を安くする対策を練ることです。相続人が相続税を納付できる現金を残すことも忘れないでください。

 

タイプ別相続税対策

遺産のタイプによっても相続税対策が異なってきます。タイプに応じた相続対策も確認しておきましょう。

  • 地主タイプの相続税対策
    地主や不動産投資家など不動産を多く所有している人は、不動産に関する各種の特例措置を活用しましょう。また、不動産は現金化しにくい特徴がありますから、現預金とのバランスをとることが重要です。生命保険の活用も視野に入れて多角的な対策を練ると良いでしょう。
  • 経営者タイプの相続税対策
    自営業者や企業オーナーなどは、非上場の株式を多く保有しているのが特徴です。非上場の株式は現金化しにくいので、自社株対策なども手段に入れておきましょう。また、事業継承させたいと考えているなら後継者の確保はもちろんですが、授業継承についての相続税対策も必要です。
  • サラリーマンタイプの相続税対策
    企業で雇用されていた人は、現金収入の比率が多く、金融資産も多いのが特徴です。金融資産は、評価が高い遺産になりますので、相続税額も高くなりがちです。評価を下げるような相続税対策が望ましいでしょう。ただし、現預金とのバランスに注意が必要です。

 

賃貸物件が相続税対策になる理由

賃貸物件が相続税対策になる理由

相続税対策の中で、大きなウェイトを締めているのが節税です。大きな節税効果をもたらす可能性がある方法の代表的なものが賃貸物件とされています。

賃貸物件は不動産なので換金性は良くありません。しかし、しっかりと計画を立てて実行すれば、節税はもちろんですが、安定した家賃収入を得ることもできるでしょう。

 

相続税の算出方法

相続税を算出するには、まず財産目録を作成して遺産を全て把握しなければなりません。遺産にはプラスの財産とマイナスの財産があります。特に、債務の見逃しは相続後に大きなトラブルとなりやすいので注意しましょう。

次に、課税対象財産を定められた方法で評価します。課税財産は、現預金や不動産のほか骨董品や貴金属も対象です。また、無形ですが著作権や特許権なども課税対象に含まれます。

相続開始3年前までの生前贈与や遺贈などは、遺産として持ち戻しとなり、保険金や死亡退職金は、みなし相続財産として遺産に含まれるので注意が必要です。

こうして、算出した遺産総額から基礎控除を差し引いた額に対して相続税が課さられます。基礎控除の額を超えなかった場合は、申告も納税も必要ありません。

基礎控除=3000万円+600万円×相続人の数

国税庁:財産を相続したとき

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/05_4.htm

 

2-2:相続する土地の評価額

遺産の中で不動産を計算する場合は、土地と建物をそれぞれに評価し金額に換算します。その評価方法も税法で定められています。また、自用と賃貸用でも評価が違いますので、まず基本となる自用地から解説します。

土地の評価方法には、路線価方式と倍率方式があり、路線価と倍率は下記の国税庁のホームページで閲覧可能です。

https://www.rosenka.nta.go.jp/

路線価方式は、道路に面する標準的な宅地の1㎡当たりの路線価を基に計算した金額で評価する方法です。以下に計算方式を記します。

土地評価額=路線価×補正値×土地面積

倍率方式は、路線価の定められていない地域についての評価方式で、固定資産税評価額に一定の倍率をかけて計算した金額で評価します。計算式は以下のとおりです。

土地評価額=固定資産税評価額×評価倍率

相続税の土地の評価は、この自用地の評価方法が基本となっていて、用途に応じて評価が変わる仕組みとなっています。

 

相続する建物の評価額

建物にも自用と賃貸用等があり、土地と同様に自用の評価が基本となりますので、自用の評価方法を解説します。

自用家屋の評価は、固定資産税評価額に1.0を乗じて計算しますので、その評価額は固定資産税と評価額と同じです。

固定資産税評価額とは、固定資産税を決める基準の評価額です。不動産取得税や登録免許税などの計算にも使用されています。

 

賃貸物件で減額される場合の土地の評価額

自用の相続税評価が土地と建物に分かれているように、賃貸物件の評価も土地と建物に分かれています。まずは、賃貸用土地について説明します。

賃貸アパートや賃貸用戸建などが建っている土地を貸家建付地といいます。貸家建付地は被相続人の遺産ですが、他者に貸し出しているので自由に使うことができず、制限がかかっている状態とみなされるのです。したがって、自用地よりは減額措置を受けることができる仕組みとなっています。

貸家建付地の評価額の計算方式は下記のとおりです。

貸家建付地評価額=自用地評価額×(1-借地権割合×借地権割合×賃貸割合)自用地評価額とは、先程の説明した方式で計算します。借地権割合とは、地域ごとに定まっていて路線価と同じ国税庁のホームページで確認できます。住宅地は、60%~70%となっている場合が多いようです。

国税庁:路線価図 https://www.rosenka.nta.go.jp/

借地割合は、一律で30%となっていて、賃貸割合も乗じます。賃貸割合とは、相続税が課税される時点で、実際に貸し出されている貸家の割合をさします。

つまり、満室だと100%で計上されますが、空室が多いと賃貸割合は下がることになり、相続税の減額措置の効果も薄れるのです。

では、実際にどれくらい相続税が軽減されるかを計算してみましょう。

路線価による相続税額1億円の土地で、借地割合70%で賃貸割合100%の場合

10000×(1-70%×30%×100%)=7900(単位:万円)

上記のように土地の評価額は7900万円となり2100万円分評価が下がっていることがわかります。

 

賃貸物件で減額される場合の建物の評価

建物も土地と同様で、賃貸物件の場合は自用家屋に比べて、減額措置を受けることが可能です。賃貸用建物の場合の計算式は以下のようになります。

賃貸建物の評価額=固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)

この計算式の内で借家権割合は、土地のケースと同じく30%です。賃貸割合は、賃貸物件の総戸数に対して入居戸数の割合で算出します。仮に、総戸数20戸のアパートで16戸入居中だと賃貸割合は80%となるのです。

では、実際に賃貸用建物だと自用家屋に比べてどれくらい節税になるのかを計算してみます。

固定資産税評価額1億円のアパートで賃貸割合100%の場合

10000×(1-30%×100%)=7000(単位:万円)

上記のように賃貸用建物だと自用家屋に比べて、最大で30%の相続税軽減措置を受けることが可能だとわかります。

このケースの場合、土地と建物を合わせると、最大で5100万円分の評価を下げることが可能であるということになりました。

相続は千差万別ですが、使われていない土地があったり、相続税納付分を超える金融資産があったりする場合は、賃貸物件に投資することも一考の価値があるのではないでしょうか。

「賃貸物件が相続税対策になる理由」の参照

国税庁:No.4602 土地家屋の評価

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4602.htm

 

相続税対策として賃貸経営する理由

2019年7月に相続法の改正が施行されて以来、相続税対策として賃貸経営に乗り出す人が増えています。相続税は2015年に大きな増税が行われたのですが、2019年の改正でも増税となりました。

そこで、相続税対策はもちろんですが、資産運用として有効な賃貸経営が人気を集めるようになったのです。

ここでは、相続税対策として賃貸経営を始める理由を、賃貸経営の面から見て説明します。

 

長期的に安定した収入

賃貸経営の最大のメリットは家賃収入です。

家賃収入は、働かずに得ることが可能な収入なので不労所得ともいわれています。賃貸経営者が病気や事故で働けなくても、収入が途絶えることはないでしょう。

家賃収入の特徴は、賃貸物件があって入居者がいる限り、収入を得続けることができる点です。長期的な安定収入になりますので、私的年金と位置づけする人もいます。

 

融資が受けやすい

賃貸経営で所有している不動産は担保になり、融資が受けやすくなります。また、黒字が続いているようなら、所有している不動産の価値は高く評価されるでしょう。

そうなれば、金融機関との信頼関係も構築できて、新たな投資へのバックアップを受けることも可能です。家賃収入を更に増やすための投資や、新たな事業を起こし資産を増やすことも難しいことではないかもしれません。

 

節税対策として有効

賃貸物件が、相続税対策になることはすでに説明しました。賃貸経営を始めるとさらに所得税や住民税、そして、固定資産税が軽減される可能性があります。

所得税や住民税が軽減されるのは、損益通算や繰越控除が認められていて、建築費や住宅設備などを減価償却費として経費計上できるからです。

損益通算は、賃貸経営で赤字になった場合、他の所得から赤字分を差し引くことができる仕組みです。また、繰越控除は、本年の赤字分を3年間繰り越して控除できる制度です。

減価償却費は、すでに支払い済みの費用を耐用年数に応じて経費として計上します。つまり、キャッシュフロー上で現金は動いていませんが、経費として計上するので、利益を圧縮し税を軽減する作用となるのです。

固定資産税については、多くの場合で小規模住宅用地の特例を受けることが可能です。賃貸用の土地は、賃貸建物の戸数×200㎡以下であれば、この制度が適用されます。適用されると固定資産税の評価額が1/6となり、都市計画税は1/3となるのです。

 

賃貸経営に失敗しないための注意点とは

賃貸経営に失敗しないための注意点とは

相続税対策で賃貸物件に投資しても、肝心の賃貸経営で失敗したら赤字の垂れ流しとなり、相続税対策も無意味なものになります。ここでは、賃貸経営でつまずかないように経営の注意点を説明します。

 

立地や環境に応じた賃貸経営を

賃貸経営で重要なポイントは立地と環境です。山奥にアパートを建てても需要は見込めないでしょうし、駅前で太陽光発電なんて無意味です。

使用していない土地を活用する場合は、環境と需要を見定めてから投資しましょう。賃貸物件は、マンションやアパートがメインですが、商業ビルや立体駐車場も貸し出せば賃貸物件となります。

また、山地を太陽光発電業者に貸し出すことも可能ですし、貸倉庫にできる場合もあります。要するに需要があるかないかを確かめてから投資して賃貸経営を始めることが肝要なのです。

 

下調べは徹底的に

賃貸経営は事業です。事業を始めるにあたって、競合する賃貸物件の数や家賃、空室状況などつぶさに調べて分析する必要があります。

マンションやアパートなら最新の住宅設備が整っているものに人気が集中したり、個性的なデザインや内装のものが支持されたりする場合もあります。しっかりとリサーチして常に収益が上がるように心がけましょう。

 

古い物件への不動産投資は要注意

築年数の古い中古マンションやアパートに投資する場合は注意が必要です。まず、古い物件は、よほど住環境やアクセスが良くなければ、空室率が高くなりがちです。

そうなれば、家賃を下げたり、リノベーションしたりして満室へと近づける経営努力が必要となります。

また、思った以上に修繕費がかかる場合もあるかもしれませんので、中古物件の扱いには新築以上に注意するようにしましょう。

 

計画のない投資は失敗の原因

賃貸経営に乗り出す前に必ず事業計画と資金計画を立てておきましょう。不動産会社が作ってくれる場合がありますが、見通しの甘いものになっていないかしっかりチェックする必要があります。

具体的には、建築や改築の費用やランニングコスト、返済計画などは重要ポイントになります。住宅設備や家電などの耐用年数も確認しましょう。

事業計画は、想像の域を出ない部分がありますが、できるだけ現実的な数字を用いて作ることが肝要です。そうして完成した事業計画を精査すると、今回の賃貸経営が現実的に利益を生み続けることができるのかを判断できます。もし、無謀となれば断念して新しい計画に着手すればよいのです。

賃貸経営で、事業計画と資金計画を立てないのであれば、事業失敗の原因になるかもしれません。また、融資が必要でも銀行が相手をしてくれないでしょう。

 

相続税対策にこだわり過ぎた賃貸経営なら見直しを

相続税対策にこだわり過ぎた賃貸経営なら見直しを

ここまで、相続税対策の基本から、賃貸物件が相続対策になることを説明し、賃貸経営のメリットや注意事項を解説してきました。

税制改正もあって、相続税対策として賃貸経営は人気を集めています。しかし、賃貸経営は事業なのです。土地があって、資金があるからというだけで安易に始めてしまえば、その土地や資金も赤字経営で消え去る可能性もあります。

賃貸経営は、相続税対策として有効な手段なので、こだわりは相続税対策ではなく、賃貸経営に向けるようにしましょう。そうすれば、安定した家賃収入を得て、資産を増やすことも難しくありません。

そして、迷ったときには、この「相続対策のすゝめ」をご利用ください。遺産相続のプロフェッショナル軍団がきっと役に立つでしょう。

 

【記事監修】高野友樹

株式会社アーキバンク取締役COO/不動産コンサルティングマスター/宅地建物取引士

不動産会社にて2,000件以上の賃貸売買仲介に関わり、6,000戸の収益物件の管理業務を経験した後、年間で36.9万平米を超える賃貸契約面積を獲得している国内有数の不動産ファンドであるGLR(ジーエルアールインベストメント株式会社)にてAM事業部のマネージャーとして従事。

大規模物件の売買仲介を中心に、投資家へのコンサルティング業務を行い、100億円規模の物件の取引に携わる。2019年より株式会社アーキバンクに参画し、不動産事業部統括責任者として取締役に就任。

不動産投資家の所有物件の買い替えによる資産整理や遺産相続など、その経験と知識を生かしたコンサルティング業務を行っている。

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