不動産の生前贈与は手続きが煩雑!その流れや注意事項を徹底解説!

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不動産の生前贈与は手続きが煩雑とされています。その理由に挙げられるのは贈与税や不動産の名義変更です。たくさんの書類を揃えなければならず、税額の計算方法も複雑だからです。

今回は、複雑とされる不動産の生前贈与について詳細に解説します。この記事を読めば、不動産の生前贈与の手続きや税金についての知識を深めることができるでしょう。

 

不動産の生前贈与の手続きの流れ

不動産の生前贈与の手続きの流れ

不動産を所有する人の中で、生前贈与を考えられている人は多いのではないでしょうか。自宅を含めて複数の不動産を所有していれば、相続対策として生前贈与を視野に入れるのは当然のことです。

ここでは、複雑な不動産の生前贈与の手続きを説明する前に、生前贈与の大まかな流れを解説します。流れを掴んでいれば、不動産の生前贈与手続きについての理解を深めることができるでしょう。

 

生前贈与とは

生前贈与とは、文字通り財産を所有している人が存命の間に、その財産を贈与することです。単純に自分の財産を贈与するだけの人もいます。しかし、多くの人は、相続税の節税対策として活用したり、相続税の納税資金の確保のために有効活用したりしているのです。

特に、平成27年の相続税改正をきっかけに生前贈与に対する関心は高まっています。理由は、相続税の基礎控除が大幅に減額されたからです。相続税は、遺産総額が基礎控除を上回れば、遺産に課せられる税金です。

逆に言えば、基礎控除を下回れば、相続税の申告や納税の義務は生じません。生前贈与を活用することによって、所有者の遺産総額が、基礎控除以下になるようにすれば、相続税対策は成功となります。

単純に言えばこのようになりますが、贈与や相続には様々な制限がありますので、それらを把握して注意することも忘れないようにしましょう。

 

贈与契約書の作成

贈与は民法で契約と定められています。口頭でも契約は成立するのですが、贈与契約書を残しておくと、後々のトラブルを未然に防ぐことにつながるのです。贈与契約書を作成しなくても、法的なペナルティは発生しませんが、次に説明する不動産の名義変更で必要となるため、作成することをおすすめします。

 

不動産の名義変更

贈与が行われたら、不動産登記の名義変更を法務局で行います。不動産の贈与契約は、贈与者と受贈者の間で取り交わされるものであって、公の場では明らかになっていません。不動産の名義変更を行わなければ、受贈者は、第三者に対して所有権を主張できないのです。

 

贈与税の申告と納税

不動産に限らず、基礎控除を上回る価額の贈与を受けた場合は、翌年の3月15日までに贈与税を申告しなければなりません。また、贈与税の納付も期限も同じ日となっています。

相続時精算課税制度を利用する場合は、2,500万円まで贈与税は非課税になりますが、申告書と相続時精算課税選択届書を税務署に提出しなければなりません。

不動産贈与の流れは、贈与契約書の作成→不動産の名義変更→贈与税の申告及び納税となっています。次項からこの一つ一つについて詳細に解説します。

 

生前贈与による不動産の贈与契約書について

生前贈与による不動産の贈与契約書について

不動産の贈与が決まれば、不動産贈与契約書を贈与者と受贈者の間で取り交わすようにしましょう。

不動産の贈与契約書においては、贈与者や受贈者の住所・氏名を正確に記載しなければなりません。また、対象となる不動産の地番や家屋番号を正確に記載する必要があるので、登記事項証明書を確認しながら記載すると良いでしょう。

 

贈与契約書を作成するメリット

贈与契約書を作成すると、合意した内容が明確となって、後々のトラブルの予防にもなります。不動産贈与契約書においても同じことが言えるのです。

また、書面によらない贈与契約は、履行が終了していない限り、贈与者・受贈者のどちらでも撤回することができます。贈与契約書を書面で残していれば、撤回することはできなくなります。 税務調査時においても贈与契約書があれば、贈与があったことを証明する手段になります。

贈与契約書は、当事者間で話し合って合意した内容を明記し作成しましょう。完成した贈与契約書は、贈与者・受贈者のそれぞれが一通ずつ保管することになっています。

 

生前贈与による不動産の名義変更手続きについて

生前贈与による不動産の名義変更手続きについて

贈与を受けた不動産の名義変更の手続きは、最寄りの法務局で行います。郵送やインターネットでも可能です。「贈与は当事者間のことなので名義変更など必要ない」と思われる人もいます。

しかし、不動産贈与においては、所有者が変わったことを明らかにしなければ、他の相続人予定の人や不動産の売買に関する第三者に対して、所有権を主張できません。不動産相続のトラブルなどで不利にならないように、不動産の贈与を受ければ、早めに名義変更の手続を済ませておくほうが良いでしょう。

不動産の名義変更は、自分で申請することもできれば、司法書士などに依頼することも可能です。しかし、司法書士などに依頼する場合は報酬などの費用が発生します。

不動産の名義変更は煩雑な手続きがありますのでここで流れを説明します。

  1. 対象不動産の調査・確認
  2. 税金の確認
  3. 必要書類の作成と添付書類の取得
  4. 法務局での申請と納税

となります。

 

対象不動産の確認と物件調査

不動産の名義変更では、対象物件の登記簿の状況を調べる必要があります。名義上の住所と現住所と異なる場合は、所有権移転登記を申請する前提として住所変更登記が必要になります。

登記申請書の作成にも不動産の詳細な情報が必要となりますので、名義変更の対象となる不動産は、登記事項証明書を取得し確認しましょう。その際に、土地と建物は別々に登記事項証明書を取得してください

登記事項証明書を取得する対象が土地であれば地番が必要となり、建物であれば家屋番号が必要です。地番や家屋番号を調べる方法は以下のようになります。

  • 登記済権利証
  • 固定資産税納税通知書の明細書
  • 法務局で住所から調べる

 

税金の確認

不動産は、資産価値の高いものが多いので贈与税に注意が必要です。不動産名義変更の手続きの際には登録免許税も課税されますし、不動産の贈与であれば不動産取得税の課税対象となっています。

また、不動産取得後は、固定資産税や都市計画税の課税対象にもなりますので、総額でどれくらいの税金を納める必要があるのかを確認しておくと良いでしょう。

 

必要書類

不動産の名義変更に関する書類は事案によって多少異なりますが、基本となる書類をここで説明します。

贈与者

  • 登記識別情報通知(登記済権利証)
  • 印鑑証明書(発行から3ヶ月以内のもの)

受贈者

  • 住民票(期限の定めなし)

その他

  • 固定資産評価証明書(名義変更する年度のもの)
  • 贈与契約書や贈与証書(贈与のあったことがわかる書類)

法務局へ申請し登録免許税の納付する

不動産の名義変更手続きに必要な書類が揃ったら、法務局へ所有者移転登記を申請することになります。名義変更の申請は、最寄りの法務局ではなく対象物件の所在地を管轄する法務局への申請が必要です。

また、申請時に登録免許税を納付することになります。登録免許税の税額は固定資産税評価額の2%です。固定資産税評価額は、申請時に提出する固定資産評価証明書に記載していますので確認しましょう。

 

生前贈与による贈与税の申告と納税手続きについて

生前贈与による贈与税の申告と納税手続きについて

生前贈与で、不増産を贈与する場合は、多くのケースで贈与税の課税対象となります。その理由は、贈与税の基礎控除である暦年課税制度での基礎控除が、年間110万円以下と定められているからです。110万円未満の不動産は極稀にしかありません。

ここでは、不動産贈与における贈与税の手続きなどや必要となる書類関係について解説をすすめます。

 

贈与税とは

不動産贈与における贈与税を解説する前に、そもそも贈与税とは何かを説明します。贈与税は、個人が1年間に贈与を受けた場合に課税される制度です。現預金に限らず、美術品や骨董品なども贈与税の課税対象となります。

贈与税は、贈与を受けた時の時価で評価されて、価額を算出する仕組みとなっていることも、知っておくとよいでしょう。

贈与税の算出方法の基本は暦年課税制度です、基礎控除が適用される制度で、年間に110万円以下贈与に対しては、申告や納税の義務は生じません。しかし、110万円を超える場合には、贈与額に応じて以下の税率と控除額が適用されます。

贈与税速算表(一般税率)

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1000万円以下 40% 125万円
1500万円以下 45% 175万円
3000万円以下 50% 250万円
3000万円超 55% 400万円

生前贈与などで、直系尊属から20歳以上の直系卑属への贈与は「特例贈与財産」として特別税率が課税せれることになっています。直系尊属とは、父母祖・父母など自分より前の世代で直通する継続の親族のことです。また、直系卑属とは子・孫など自分よりも後の世代で、直通する系統の親族のことをさします。

特別贈与財産は、一般税率に比べて課税ベースが緩やかになっていて、控除額も増えています。以下の表で確認してください。

贈与税速算表(特別税率)

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1000万円以下 30% 90万円
1500万円以下 40% 190万円
3000万円以下 45% 265万円
4500万円以下 50% 415万円
4500万円超 55% 640万円

贈与額は特別税率が適用されたとして、課税額ペースが低くなって控除額が高くなっても、相続税と比べると高い税率がかけられる傾向になっています。しかし、相続税対策や相続税を納めるための資金対策には有効な手段なのです。

国税庁:贈与税の計算と税率(暦年課税)

https://www.nta.go.jp/m/taxanswer/4408.htm

 

暦年課税と相続時精算課税制度

贈与税は、暦年課税制度と相続時精算課税制度の2種類があります。何もしなければ暦年贈与を選択したことになりますので、贈与税の手続きをする際には注意が必要です。

暦年課税制度とは、1年間に110万円の贈与税の基礎控除を利用した生前贈与の方法です。毎年1月1日から12月31日までに受けた贈与額から基礎控除額の110万円を控除できます。1回だけではなく毎年110万円の基礎控除があることがポイントです。

相続時精算課税制度は、2,500万円までの特別控除が認められている制度です。しかし、この制度は60歳以上の親や祖父母から20歳以上の子や孫への生前贈与以外には適用されません。また、2,500万円を超えた贈与額には一律20%の贈与税が課税されます。暦年課税のように毎年ではなく1度きりとなっています。

贈与を受けて、贈与税の手続きをする際には、暦年課税制度と相続時精算課税制度のどちらかを選択することになります。

 

贈与税と相続税の申告期限

贈与税の暦年課税制度の申告手続きには、申告期間と納付期限があります。今年の1月1日から12月31日までに贈与を受けた場合は、来年の2月1日から3月15日までが申告期間であり、贈与税の納付期限は3月15日までです。

相続税精算課税制度を選択した人も、暦年課税制度と同じの申告期間があります。2,500万円までの贈与なら、贈与税が非課税となっていますが、贈与を受けたことを申告する必要があるのです。

また、相続税の申告や納付期限についても注意が必要となります。相続税で精算する手続きをしなければならないので、相続税の申告が必要となります。相続税の申告手続き及び納付期限は相続開始から10ヶ月以内です。

 

不動産の生前贈与に課税される贈与税額

不動産の生前贈与に課税される贈与税でも、上記の速算表で計算できますが、その前に不動産の贈与税評価をしなければなりません。不動産は、現金のように単純な贈与税評価ではなく、土地と建物に分けて、それぞれについて定められた評価方法で評価し価額を算出することになります。

土地の贈与税評価方法は、路線価方式と倍率方式となっています。路線価方式は路線価が定められている土地に対して適用され、路線価の定まっていない土地に対しては倍率方式が適用されるのです。建物については、固定資産税評価額を基に評価します。

不動産については、現金に比べて贈与税の評価額が低くなる傾向となっているので、節税対策として使われることも珍しくありません。

 

不動産の贈与税申告の流れと必要書類

不動産贈与の贈与税の申告の流れは以下のようになります。

  1. 贈与時の不動産を評価し価額を算出
  2. 価額に税率をかけて、控除額を差し引いて税額を算出
  3. 贈与税の申告書を記入
  4. 資料を添付
  5. 税務署にて申告

不動産の贈与税手続きの申告書は、申告の内容によって異なります。必要な贈与税申告書を以下の表でご確認ください。

申告の内容 使用する申告書
暦年課税の実の申告する人 第一表
相続時精算課税の実を申告する人 第一表と第二表
暦年課税と相続時精算課税の両方を申告する人 第一表と第二表
住宅取得等資金の非課税と暦年課税を申告する人 第一表と第一表の二
住宅資金等資金の非課税と相続時精算課税を申告する人 第一表と第一表の二と第2表

贈与税の申告では、使用する申告書が申告内容によって異なりますが、添付する書類も申告内容によって異なってきますので注意が必要となります。共通しているのはマイナンバーカードと不動産の登記事項証明書等です。

マイナンバーカードがなければ、マイナンバー通知カードと本人確認書類が必要です。この場合の本人確認書類とは、運転免許証やパスポートなどとなります。

国税庁:贈与税の申告等

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/qa/09.htm

 

不動産の生前贈与に関わるその他税金の手続き

不動産の生前贈与に関わるその他税金の手続き

登録免許税

登録免許税の手続きは不要です。不動産の名義変更時に課税されますので、登録免許税に対して特別な手続きはありません。課税標準額に2%かけ合わせた税額を原則として印紙で納税しましょう。

 

不動産取得税

不動産取得税は、都道府県が課税する地方税です。不動産の名義変更をすれば自動的に6ヶ月から18ヶ月程度に納税通知書が届きますので、特別な手続きはありません。届いた納税通知書を使用して、金融機関で納税してください。

税額は、課税標準額の4%ですが、4%という数字はあくまでも標準税率ですので、都道府県によって異なる場合もあります。

 

固定資産税・都市計画税

固定資産税や都市計画税も不動産の名義変更をすれば自動的に届きますので特別な手続きはありません。毎年1月1日現在の所有者に対して課税されるので、1年の途中で不動産の生前贈与があっても、贈与者に対して課税されることを認識しておきましょう。

また、不動産贈与契約時にどちらが納税するかを決めたり、納税の割合などを決めたりして、契約書に記しておけばトラブルを未然に防ぐことができます。ちなみに、固定資産税の税額は、課税標準額の1.4%です。

 

不動産の生前贈与の手続きは煩雑なので計画的に

不動産の生前贈与の手続きは煩雑なので計画的に

ここまで、生前贈与手続きについて、生前贈与の流れを基に、不動産贈与契約書や名義変更についてなど説明しました。重要なポイントである贈与税について、掘り下げて解説しています。

不動産の生前贈与の手続きは複雑です。中でも、名義変更や贈与税の手続きは、プロフェッショナルに相談したり依頼したりしなければ、自分で行うのは難しいかもしれません。

不動産の生前贈与で悩まれたらこの「相続対策のすゝめ」も活用ください。生前贈与だけでなく、相続についても詳細に解説している記事がたくさんあります。不動産の生前贈与も相続対策の意味合いが強いので、きっとお役にたてるはずです。

【記事監修】高野友樹

株式会社アーキバンク取締役COO/不動産コンサルティングマスター/宅地建物取引士

不動産会社にて2,000件以上の賃貸売買仲介に関わり、6,000戸の収益物件の管理業務を経験した後、年間で36.9万平米を超える賃貸契約面積を獲得している国内有数の不動産ファンドであるGLR(ジーエルアールインベストメント株式会社)にてAM事業部のマネージャーとして従事。

大規模物件の売買仲介を中心に、投資家へのコンサルティング業務を行い、100億円規模の物件の取引に携わる。2019年より株式会社アーキバンクに参画し、不動産事業部統括責任者として取締役に就任。

不動産投資家の所有物件の買い替えによる資産整理や遺産相続など、その経験と知識を生かしたコンサルティング業務を行っている。

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